第14回: デザインブリーフの作り方:プロジェクト成功の鍵を握る重要なステップ
「プロジェクトがうまく進まない…」「クライアントとのやりとりがスムーズにいかない…」
そんな悩み、デザイナーなら一度は経験したことがあるのではないでしょうか?プロジェクトが上手くいかない理由の一つは、初めの段階でしっかりとした「デザインブリーフ」が作られていないことにあります。
デザインブリーフは、プロジェクトの羅針盤のような存在であり、クライアントの期待に応えるため、そしてプロジェクトをスムーズに進行させるために欠かせないステップです。
この記事では、デザインブリーフの重要性と、その作り方について詳しく解説します。
適切なブリーフを作成することで、あなたのプロジェクトがより成功に近づくことは間違いありません。
1. デザインブリーフとは?
デザインブリーフとは、クライアントの要望を整理し、プロジェクトのゴールや目的、デザインの方向性を明確にするための文書です。
プロジェクトの基盤となる情報が詰まっているため、デザイナーとクライアントが同じ方向を向いて進むために不可欠なものです。
ブリーフの主な目的:
- クライアントのビジョンを具体的に理解する
- 期待する成果やデザインの方向性を共有する
- プロジェクトの範囲やスケジュールを明確にする
ブリーフがなければ、デザイナーとクライアントの間で誤解が生じ、結果的に手戻りが増えたり、最終成果物が期待に沿わないものになったりすることが多々あります。
したがって、デザインブリーフをしっかり作り込むことが、プロジェクト成功の鍵を握る第一歩です。
2. デザインブリーフ作成のステップ
デザインブリーフの作成は、情報の整理と計画のプロセスです。以下に、ブリーフを作る際に押さえておくべきステップを紹介します。
1. クライアントのビジョンと目標を明確にする
まず最初に、クライアントが何を求めているのか、何を達成したいのかを正確に把握することが重要です。クライアントの企業やサービスの背景、プロジェクトの目的、目指すべき成果物のビジョンを明確にします。
質問例:
- プロジェクトのゴールは何ですか?
- どのような印象を与えたいですか?
- ターゲットオーディエンスは誰ですか?
このような質問を通じて、クライアントの意図を深く理解しましょう。
2. ターゲットオーディエンスを特定する
クライアントの目標を理解したら、次に「誰に対してデザインを行うのか」を明確にします。ターゲットオーディエンスが誰かによって、デザインの方向性やトーン、使用する色やフォントが大きく変わります。ターゲットが明確でないと、全く異なる印象のデザインになってしまう可能性があります。
質問例:
- ターゲットはどの年代の人々ですか?
- どのようなライフスタイルを持つ人々に向けてデザインしますか?
- そのターゲットが興味を持つ内容は?
ターゲットの趣向や行動パターンを考慮し、具体的なペルソナを作り出すことで、デザインがターゲットにしっかりと響くものになります。
3. コンペティションを調査する
デザインブリーフの中で、競合他社や同業者のデザインについてのリサーチも欠かせません。クライアントが市場でどのように差別化を図りたいのかを理解し、競合の強みや弱点を把握することで、より独自性の高いデザインが生まれます。
リサーチのポイント:
- 競合のWebサイトや広告物、ロゴなどを確認し、どのようなデザインが使われているかを分析する
- クライアントが競合とどう違いたいのか、その点をデザインでどう表現するかを考える
4. スコープとスケジュールを明確にする
デザインブリーフには、プロジェクトの具体的な範囲(スコープ)とスケジュールも含める必要があります。
何をいつまでに完成させるのかを明確にすることで、プロジェクト全体の進行がスムーズに行われます。
ポイント:
- デザインの納品物は何か(ロゴ、Webデザイン、パンフレットなど)
- 各フェーズの納期はいつか(アイデア出し、初回デザイン提案、修正、最終納品)
スケジュールを明確にすることで、納期に追われることなく計画的に進行でき、クライアントも納品物に対する期待が明確になります。
5. デザインの方向性を明示する
クライアントのビジョンや競合調査が完了したら、デザインの方向性を明確にするフェーズに移ります。
ここでは、色、フォント、スタイル、イメージの方向性などを決めていきます。例えば、クライアントが「信頼感」を重視するならば、落ち着いた色やシンプルなデザインが適しています。
一方、「楽しさ」をアピールしたい場合は、明るい色や遊び心のある要素を取り入れるべきでしょう。
具体的な質問:
- 色やフォントに関する好みはありますか?
- どのような感情をデザインで伝えたいですか?
クライアントがイメージしやすいように、参考画像やスタイルガイドを示すと、デザインの方向性をより具体的に共有できます。
3. 成功するデザインブリーフの作り方
ここまで、デザインブリーフを作る際の基本ステップを解説しましたが、最終的には「クライアントとデザイナーが共通の目標を持つこと」が重要です。ここからは、成功するデザインブリーフを仕上げるために押さえておきたいポイントを紹介します。
6. 具体的なアウトプットと成功指標を設定する
デザインブリーフには、プロジェクトの最終的なアウトプットや、成功をどのように評価するかといった指標も含めるべきです。これは、クライアントとデザイナーの間で合意した「ゴール」となり、どんな成果物を提供すべきかが明確になります。
例:
- 成果物の具体的な内容:ロゴ、バナー、Webサイトのデザインなど
- 成功指標:例えば「ユーザーエンゲージメントの向上」や「ブランド認知度の向上」など、クライアントが満足する具体的な成果を設定しましょう。
これにより、プロジェクトが進む中で、デザインの成果を客観的に評価できる基準ができ、ゴールに向けて一貫した方向性で進めることができます。
4. デザインブリーフの具体例
それでは、デザインブリーフが実際にどのように作られるか、簡単なサンプルを紹介します。
クライアントの背景:
クライアントは、地元のオーガニック食品を扱うスーパーマーケットで、ターゲットは30代〜40代の健康志向のある消費者です。新しくロゴとWebデザインをリニューアルしたいとのこと。
プロジェクトの目標:
ロゴとWebサイトを通じて「健康」「自然」「信頼感」を伝えるデザインを求めています。また、競合との差別化を図り、地域で唯一のオーガニック食品専門店としての認知度を高めたい。
ターゲットオーディエンス:
30代〜40代の働く親世代、健康に関心のある消費者で、忙しい日常の中でも安心して食品を選べる店舗としての信頼を求めています。
コンペティション調査:
競合のデザインはシンプルかつ洗練されており、特に「ナチュラル」「エコ」を強調したビジュアルが多く見られますが、クライアントはもう少し「温かみ」や「親しみ」を感じさせる方向で差別化したいと考えています。
スコープとスケジュール:
- 1月中旬:ロゴデザインの初回提案
- 2月初旬:修正後のロゴ提出
- 3月末:Webサイトデザインの完成およびテスト公開
5. デザインブリーフが成功するためのコツ
最後に、デザインブリーフを作成するときに意識したいポイントをまとめます。
1. クライアントとのコミュニケーションを大切に
デザインブリーフを作成する際には、クライアントとの密なコミュニケーションが欠かせません。ブリーフの段階で情報が不足していると、デザインの方向性がブレる可能性があります。疑問があればすぐに質問し、常にクリアな情報の共有を心がけましょう。
2. 柔軟性を持つ
デザインプロジェクトは進行中に変更が発生することもあります。そのため、最初のブリーフに固執せず、プロジェクトの進行に合わせてブリーフを柔軟に調整することも重要です。
3. 視覚的な例を使う
デザインのイメージや方向性を説明する際には、テキストだけではなく、参考画像や具体例を提示することで、クライアントがイメージしやすくなります。これにより、デザイナーとクライアントの間でデザインのビジョンが一致しやすくなります。
まとめ|デザインブリーフでプロジェクトを成功に導こう
デザインブリーフは、プロジェクトの成功に向けた最初の重要なステップです。適切にブリーフを作成することで、クライアントとのコミュニケーションがスムーズになり、デザインの方向性が明確になります。
今回紹介したステップを参考に、次回のプロジェクトでぜひデザインブリーフを活用してみてください。プロフェッショナルなデザインワークを実現し、クライアントの期待に応えるための道筋が、デザインブリーフを通じて明確になるはずです。
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