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【音楽×小説】花人局(はなもたせ)

目が覚めると、隣には誰もいなかった。
まるで、昨日の夜まで彼女がそこにいたことそのものが嘘だったかのようだ。

二日酔いで痛む頭を押さえつつフラフラと立ち上がると、水を飲もうとキッチンへ向かう。

洗って干したままのグラスを取り、ふと顔を上げると、ラベンダーが一輪、小瓶に挿してあるのが目に留まった。

………彼女の好きだった花だ。

グラスに水を注ぎ、ソファに腰掛ければ、そこには編みかけのマフラー。

完成するよりも先に冬は峠を越えて、これが使えるのは次の冬だね、なんて呟くように言った彼女の表情かおは、笑っているようで泣きそうでもあった。

———飲み過ぎたせいで何も覚えていないんだ、
よくわからないけど、君は一時出て行っただけで、夕方になれば帰って来るよね。

ごめんね、遅くなったって、いつもみたいに僕のところに、

………そう言えたらどれほど楽だろうか。

覚えていない、なんて言うには、
この部屋は君で溢れ返りすぎているんだ。


———ラベンダーの、花言葉。

伝えたかったのは、僕か君か、もうどちらかわからない。

これだけは、もう永遠にわからないんだ。


***

ヨルシカさんの「花人局はなもたせ」という曲を基に小説を書いてみました!

最後に小説を書いたのがいつだったか分からないくらい久々に小説を書いたのですが、果たしてストーリーになっているでしょうか……😂

「美人局」という言葉は知っているけど、花人局ってどういうことだろうと思って聴いたこの曲。
主人公が、一緒に暮らしていた恋人のことをひたすら忘れようとしているのがひしひしと伝わってきて、とっても切ない一曲です。

最後までお読み頂き、ありがとうございました✨



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