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つかの間の晴天を連れて来たのは。

朝から、雷鳴と共に大粒の雨が降っている音が窓の外から聞こえていた。
まるで、少し前に連日続いていた豪雨を思い起こさせるような。

———この間みたいに、家の前が川みたいになるようなことが無いといいな。
そんなことを考えながら、わたしは自室で過ごしていた。

そして、時計の針が12時を指した頃。
「凛ちゃん(仮名)来たよー!下に降りておいで!」
1階から、母がわたしを呼ぶ声が聞こえた。

どうやら、わたしの家に用事があった知り合いのご家族が来たようだった。
慌てて降りて行くと、玄関には、そのご家族のおばあちゃんと、4歳の女の子、凛ちゃんがいた。

凛ちゃんは、わたしの顔を見るなりにっこにこの笑顔で迎えてくれる。
以前、お宅にお邪魔した時に何気なくおもちゃのピアノを弾いたら、隣でぴょんぴょん飛び跳ねて踊り始め、しまいに「今度は凛が弾くからひだまりちゃん踊って!」と無邪気に言われたことがあった。
……踊る?25歳の女が、4歳の可愛らしい女の子と同じように……?
わたし困惑、母大爆笑。
後で話を聞いた父(62歳)からは、「そういう時は踊ってあげなきゃ!(笑)」と言われたっけ。

そんな凛ちゃんは、時折わたしとおしゃべりしながら、大人たちが話す様子を駄々をこねることもなくにこにこと見守り、用事を終えたおばあちゃんに手を引かれておうちに帰ることに。
お見送りをしようと外に出ると、朝から降っていた大雨が嘘みたいに晴れていた。

照りつける日差しが暑さを加速させていて、凛ちゃんが着ていたノースリーブのワンピースがまさにピッタリな、そんな天気になっている。

このまま晴れが続けばいいのになぁ。
そんな呑気なことを考えながら、凛ちゃんたちを見送った後に昼食を食べ、猛烈な眠気に襲われてお昼寝をした。

——その後、目が覚めると、朝よりも酷く大きく雨の音が響いていた。
階下に降りると、母が「降水量、80ミリらしいから気をつけてた方がいいかも」と言う。

さっきの晴天を連れて来たのは、もしかして凛ちゃんなんじゃないか。
思わずそんなことを考えてしまうほど、雨は今も降り続いている。

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