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約束の、やってみるマン

保育士おへそのごま の保育エッセイ(16)

「約束の、やってみるマン」

 仕事を終えての帰り道、2年前担当したKくんのご両親とばったりお会いしました。
 Kくんは失敗することが嫌で、自信のないことや初めてのことには尻込みする子でした。日常の中で成功体験を積み重ねて、「大丈夫、やってみればできる」ということをひとつひとつ一緒に確認する日々でした。
 卒園を前に、保育園での成長を振り返りながら「Kくんはさ、できないかも…って思っちゃうんだよな。でもさ、いつもごまちゃんと『やってみたら、できた』ってやってきたじゃん。これから小学校行ってもさ、初めてのこといっぱいあるけど、なんでもやってみる、って大切だよ」
なんてことを2人っきりでじっくり話し合ったことも。
 卒園するにあたって僕と彼とで約束をひとつしました。「なんでもやってみる」ってこと。できないかもしれないけど、失敗したっていいじゃない。失敗するから次はどうしよう?って考えられるんだよ。それに、何回もやってみれば、いつかできるようになるかもしれないじゃない。

 これからKくんは、「なんでもやってみるマン」になろう。って。

 夕暮れの道すがら、Kくんのご両親は「今でもよく言ってるんですよ」と教えてくれました。
「オレはね、なんでもやってみるマンになったから。ごまちゃんと約束したから。だからやってみる!」って言っていると。
「なんかもう、心の支えになってるみたいです」と。

 嬉しかった。Kくんがまだまだ「できるかな」と不安に思いつつも、僕との約束や保育園で積み重ねてきた「できた!」の自信を糧に、葛藤を乗り越えているということが、本当に嬉しく思えました。
 子ども達の育ちの根っこに関わることができる喜びって、コレなんだな。

 やっぱ、保育士、辞められません。

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