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[映画感想文]|『ゴジラxコング 新たなる帝国』主役はコング!ゴジラはゲスト!!モスラもな!!!

病み上がりの不快感を抜け、ただ持て余したエネルギーを発散できずにバーニングゴジラへと変貌しそうな上の子。連休最終日の外出は極力避けたいが、そうも言っていられない雰囲気である。

我が子のメルトダウンを阻止すべく、兼ねてより行きたがっていた映画館へと出掛けることになった。妻は高熱の続く下の子と留守番である。

我々は近所で軽く昼食を済ませ、新宿バルト9へと向かった。

久々に吸う娑婆の空気で、我が子のテンションはうなぎ登り。スキップだか何だかよくわからないステップで駅へと急ぐ。そうして辿り着いた新宿(三丁目)。

空は若干曇りがちだが、新宿の空なんていつもこんなもんだ。連休にしては人出が少ないように見えたが、それでもマルイアネックスのエレベーターはギュウギュウである。

発券を済ませポップコーンを買い込むと、すぐに入場の時間となった。いつもと同じく、我が子は予告の時点で既に真剣な表情を見せており、無言でスクリーンに集中し始めた。

さて肝心の映画であるが、結論から言えば子供は大満足だったし、私には向いていないと思った。

前作『ゴジラvsコング』は確か今年に入ってから観たくらいだったと思うが、あちらもまた私が求めるゴジラ映画ではなかった。それでも劇場で観ればもしかしたら…と期待していたが、どうしても眠たくなってしまう映画だった。その理由は忙しすぎるカメラワークとカット割りに因るところが大きい。とにかく全編通してせわしなく、特に中盤以降は緩急が全くない。画面が慌ただしい割に受ける印象は平坦なのだ。地底の遺跡で不意討ちされるホラーみたいな演出以降は、本当にノッペリしていた。たまに緩の部分が来たかと思えば、何だかよくわからない作戦や設定の説明をされて「…ん?」となってしまう。しかもモスラはサラっと復活するし、飛び回って糸を吐くだけの虫だ。それも『スターシップトゥルーパーズ』に出て来るような虫だ。

やたら長いコングの日常パートは、虫歯に苦しんで人間に抜歯してもらい、代わりに埋めた義歯は特に活躍しないという肩透かし感。謎のサルとのロードムービーは予告で観せられた『猿の惑星』にしか思えず、生き残っていた同胞達は意味もなく石を運んでいる。とにかく全体的に意味がよくわからなかった。

対するゴジラは人間にとって都合の良い存在となっており、怪獣を倒しに現れる用心棒的な怪獣。昭和シリーズに通ずるところがあるような気もしないではないが、決定的な何かが違う。コロッセオでの眠りから醒めると各地でエネルギーを吸収し始める。バーニングゴジラにでもならんばかりである。

そんなコングとゴジラが共闘しなければならない程の敵は一体どれだけ強大なのかと思えば、何とも小物くさいテナガザルwith氷ブレスを吐くトカゲであった。そのムチどうやって繋いでんの?

昨日観直した『ゴジラvsメカゴジラ(1993)』と同じようにタッグバトルの構図を作ろうとしたのだろうけど、熱くなる場面がどこなのか見付けられなかった。特にゴジラとコングが揃って走り出すシーンは笑いを通り越して「頼むやめてくれ…」という気持ちになってしまった。

そもそも地底世界の存在は一体どういうものなのか。重力が反転する理由は何なのか。あれだけの地底世界が広がっていれば地表はペラペラなのではないか。太陽が届かないのに何故あれだけ明るいのか。人間を食べる木は何だったのか。重要そうなパイロットが食べられたのに何故皆平気でいられるのか。獣医が万能すぎやしないか。遺跡を流れる水は何だったのか。テレパシーでコミュニケーションを取れ、思考を読めるのに何故襲い掛かったのか。モスラの封印は何故そんなに面倒なシステムなのか。復活させるための祭壇は何故水晶で作ってしまったのか。水晶であんなに急な階段を作ったら危険だと気付かなかったのか。岩を落とす作戦を一度失敗させる必要はあったのか。そして何故あのピラミッドに氷ブレスを吐かせたのか。テナガザルはあの場所へ初めて訪れたのではないのか。コングの装甲は一体何で作られているのか。凍傷治療注射なんていう都合の良いガジェットが何故用意されていたのか。あそこまでコングの装甲を取りに行って戻って来る時間的余裕はどうやって捻出したのか。前作から大事に引き継いだ斧は何故格下狩りでしか活躍できないのか。

重量感や生活感が感じられないために、地底でも地上でも戦闘シーンに大きな差はなく、建物は派手に破壊されるものの、人の姿が無いのでリアリティがない。そういった意味でも全体的に重みが無いのだ。

…が!そういう細かいことはどうでも良いのだ。そんな野暮を言う人間が観るべき映画ではないのだ。何しろ本作の主役はコング。つまり本作は「ゴジラ映画」ですらないのだ。キングコングの映画にゴジラとかモスラがゲスト出演しているに過ぎず、ゴジラを観たいオジサンが楽しめる筈もないではないか!

コングをビョンビョン暴れさせたい!ゴジラにビームを吐かせたい!そんな2体を共闘させたい!対戦相手は丁度良くプロレスできるサイズにしたい!穴を埋めるモンスターも必要だ!だから人間はその状況を作るための装置である!…と気持ちの良いくらい振り切っていると考えることもできるではないか。

しかし何はともあれゴジラの熱線は毎回迫力満点でカッコ良く描かれていた。あれだけでも劇場で観た甲斐があると言えるかも知れない。暗い海中での戦闘では怪獣をゲーミングPCみたく光らせることで見やすくするような心配りには感心したし、ゴジラ式ブレーンバスターで怪獣プロレス感を強く印象付ける言葉無き説明も「アラ良いじゃない」と思えた。全体的に投げっ放し感が強い割には空飛ぶ電気ウナギだけは終盤で活躍させるという意外な伏線回収も「おや」と思えた。

思い返せば良い部分もそれなりにあって…というより好意的に解釈しようとするかどうかなのだが、「あぁコレはつまりアベンジャーズとかトランスフォーマー的な映画なんだな」と妙に納得できるところもあった。選曲もそれっぽい。残念なのはそれぞれの良くない部分が浮き出てきてしまう点と、「じゃそれゴジラでやんなくても良くね?」と思えてしまう点である。

何にしても子供が最後まで(エンドロールの終わりまでキッチリ)集中して楽しめたので良いじゃないか!少なくとも怪獣映画に対する情熱と、怪獣プロレスへの愛情は感じられる映画だった。ヘンな吹替も無かったと思う。ただ吹替版のテーマ曲は伊福部昭だけにするか、或いはもっと全然違うオリジナル曲の方が良かったんじゃないかな!!!

鑑賞後も色々と見て回る

映画鑑賞後はゴジラストアを物色し、我が子は何故か限定カラーの「メガロ」を選んだ。完全に私の趣味が影響してしまっている。限定カラーのゴジラは「こおってるみたいでカッコわるいからヤダ」そうだ。

折角の限定カラーは…

そしてお父さんは、いつか発売されるだろうと心待ちにしていた「スーパーメカゴジラ」を衝動買いした。欲しかったメガロは我が子に取られてしまったのだ…。

晩御飯はおすし

何だかんだ楽しんで来たし、我が子はベッドに入った途端に爆睡した。

戦利品

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