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富士フィルムの決算内容を3分で解説!

今回は富士フィルムの決算内容について見ていきましょう。
写真フィルムから始まり医療機器まで事業を幅広く手掛けるこの会社、決算内容はどうでしょうか?

1.PLの状況

まず最初はPLの状況について見ていきましょう。

売上高は前年比+13.2%の2兆8,590億円と過去最高を更新しました。
営業利益は前年比+18.9%の2,731億円、当期純利益は+3.9%の2,194億円と利益面でも過去最高を更新しました。

出所:決算説明資料

売上高としては2008年3月期以来の最高更新、営業利益と当期純利益は千年に続いての最高更新と好調をキープしています。

ではその好調の理由について内容を見ていきましょう。
セグメントとしては4つ「ヘルスケア」「マテリアルズ」「ビジネスイノベーション」「イメージング」があります。

出所:決算説明資料

特徴としては4つのセグメントの規模感のバランスの良さです。
よくあるパターンでは「祖業の事業が全体の半分以上を占めている」ようなケースですが、富士フィルムでは一番規模が大きいヘルスケで全体の約30%です。リスク分散の観点から見るとバランスが良いのではないかと考えます。

◇ヘルスケア
売上高は前年比+14.5%の9,179億円、営業利益は増減ゼロの1,005億円となりました。
4つのセグメントの中で売上高・営業利益ともにトップをしめ亭いるのでこのヘルスケアです。
内視鏡、医療IT、超音波診断など分野を中心に販売が好調に推移したことに加え、円安の為替影響もあり売上高を押し上げました。
またバイオ医薬品の製造受注がデンマーク拠点で堅調に推移したことも増収に寄与しています。

出所:決算説明資料

またヘルスケアでは積極的に事業買収や子会社化を進めています。
2022年12月に米国でデジタル病理診断用ソフトウェアなどの開発・販売を行っている、Inspirata社のデジタル病理部門を買収しました。
(買収完了は2023年1月)
これによって富士フイルムは米国、欧州市場を中心にグローバルでデジタル病理事業を本格展開していくことになりました。
今後もこのような事業買収を積極的に行って事業拡大を図っていくのではないかと考えられます。

出所:HPのIRニュースより抜粋

◇ビジネスイノベーション
売上高は前年比+10.3%の8,381億円、営業利益は+20%の695億円と増収増益となりました。
この事業での主力ビジネスは複合機・プリンターなどのオフィス機器です。
中国ロックダウンの影響はありましたが、国内販売と欧米向け輸出が好調だったことに加え東南アジアの売上が回復したことにより増収となりました。
また場所をとらないコンパクトサイズの新商品もリリースしており、更なる売上拡大を図っています。

出所:決算説明資料

◇イメージング
売上高は前年比+23.1%の4,103億円、営業利益は+97.1%の729億円と大幅な増収増益となりました。
インスタントフォトシステムやドライプリント機器などの好調な販売や、デジタルカメラの新製品の好調な販売が増収を牽引しました。
またINSTAXチェキの最新エントリーモデルは2023年3月に販売開始となりましたので、次回の決算でこの影響は反映されると考えられます。

出所:決算説明資料

◇2024年3月期業績予想
売上高は+3.2%の29,500億円、営業利益は+6.2%の2,900億円と売上高・営業利益ともに2023年の過去最高をさらに更新する予想となりました。

出所:決算説明資料

セグメント別に見ると2023年の実績と同様の傾向で、売上高・営業利益ともにヘルスケアがトップで好調の牽引役となっています。
しばらくはこの傾向が続きそうですね。

出所:決算説明資料

2.BSの状況

次はBSの状況について見ていきましょう。
総資産全体としては前年末から+1,790億円増加しました。

出所:決算説明資料

流動資産のうち現預金で△2,177億円減少しましたが、これはバイオCDMO関連に3,000億円超の投資をしたことに伴う減少です。
その分有形固定資産で+2,393の増加が見られます。
バイオCDMOに関する投資内容は、デンマークに原薬製造設備の増設や製剤製造ラインの新設、また富士フィルムでは初となるバイオCDMO拠点の国内拠点の新設に対するものと考えられます。

出所:決算短信

ヘルケアのバイオ関連への投資は今後もさらに増額して続く予定で、今回の投資金額(有形固定資産)2,197億円に対して次年度は3,850億円と大幅に増額される予定です。
成長分野へ集中的に投資をする考えが表れている計画です。

出所:決算説明資料

また負債に関しては、社債や借入金の有利子負債に対する返済が進んだことにより△840億円減少しました。

純資産に関しは+2,630億円増加していますが、これは当期純利益2,194億円による影響によるものです。
あと増減には直接影響はしませんが、4,230億円の自己株式消去が行われています。資本剰余金を原資として自己株式を消去しているので、純資産で見ると金額の増減はありません。

出所:決算短信

3.CFの状況

最後のCFの状況について見ていきましょう。

CF全体としては前年末から△2,177億円減少しました。
内訳としては営業CFで+2,105億円、投資CFで△3,232億円、財務CFで△1,237億円という内容です。
あと営業CFと投資CFの合計のフリーCFは△1,127億円となりました。

出所:決算説明資料

基本的には営業CFでしっかりと稼いで、その稼いだキャッシュを投資に回しているのでフリーCFはプラスで推移していました。
ただこれまでの内容で触れてきたヘルスケア事業に関する投資が進んでいることで、今回は大型投資がありフリーCFはマイナスとなりました。
このマイナスは決してネガティブな内容ではなく、今後の事業拡大を図るための戦略投資なのでポジティブなマイナスと考えられます。

またCFの状況を見ながらしっかりち株主還元にも気を配っています。
配当としては14期連続増配を続けており、次年度もさらに増配する計画を立てています。

出所:決算説明資料

あと配当だけではなく、今回の決算では自己株式消去を実施するなど株価を意識した政策も実行しています。
今後のCFの状況によっては自己株式取得を実施することも考えられます。

積極的に事業拡大への投資も行いつつ株主還元もしっかりと実行している、このバランスの取れた政策は今後も継続されると考えられます。

今回の決算内容3分解説は以上となります。
次はどの会社の決算を見ようかな?

マサキタカオ


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