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JINSの決算内容を3分で解説!

今回はJINSの決算内容について見ていきましょう。メガネを使っている人であれば知らない人はいないこの企業、決算内容はどうでしょうか?

1.PLの状況

まずはPLの状況について見ていきましょう。
売上高は前年比+4.7%の669億円となりました。営業利益は前年比△34.3%の33億円、当期純利益は△77.2%の8億円となり増収減益という結果です。

出所:決算説明資料

売上高は増加しましたが、売上高総利益率は前年の78.9%から1ポイント下げて77.9%となりました。これはセール品が増えたことと円安によるコスト増が要因と考えられます。

販管費に関しては前年比+34億円と大幅な増加となりました。
内容としては「人件費」と「賃借料」で大きく増加が見られました。人件費と賃借料ともに国内店舗拡大に伴ってコストが増加したものと考えられます。

では店舗状況について見てみると、この1年間で国内海外含め46店舗増加し、その結果店舗数は700店舗となりました。
国内464店舗、中国174店舗、台湾49店舗とその他という状況です。

出所:決算説明資料

店舗状況からわかるように、海外では中国がダントツで出店数が多いです。ただこの1年間の店舗数の増減で見ると中国より台湾の方が多く増加しており、今後の海外展開に関して変化の兆しが垣間見えます。

商品価格の観点からも内容を見てみましょう。
商品の価格帯は大きく3つに分かれており、中間価格帯の8,000円が全体の59%を占めています。ただこれからは新価格帯として主に9,000円の価格帯での販売に力を入れていき、全体の27%を占めるよう計画しています。

出所:決算説明資料

ではこの新価格帯のねらいは何か?と考えると、恐らく利益率の改善ではないかと推測します。実際に次年度の売上総利益率を0.4%改善することを計画しているので、その計画達成のための施策一つがこの新価格帯の設定だと考えることができると思います。

出所:決算説明資料


また今回は特別損失で16億円と多額の損失が計上されています。なかでも通常発生しない金額の大きな項目が2点ありました。それは「事務所移転費用引当金繰入額 」と「事業構造改革費用引当金繰入額 」です。

出所:決算短信

「事務所移転費用引当金繰入額 」に関しては2億円の損失計上となりました。JINは前橋本社と東京本社があり、今回は東京本社の移転に関する費用です。2023年2月移転完了予定ですが、そのための費用は今回の決算期間で既に発生しているので、その分の費用を引当金として計上したということになります。ちなみに登記上の本社は前橋本社のままなので定款などへの影響は内容です。

出所:HPのニュースリリース

「事業構造改革費用引当金繰入額 」に関しては5億円の損失計上となりました。これは米国での事業をEC事業を中心とした事業規模の拡大を目指した事業構造改革を推し進めるための引当金です。
米国小売市場におけるEC販売額が飛躍的に増加している中、EC基盤の強化が喫緊の課題となったため今回の損失計上に至りました。

出所: HPのニュースリリース

今回の決算で読み取れるPL上の課題は以下と考えられます。
 ①販売単価下落による利益率の低下
 ②海外拠点の中国集中からの脱却

①の販売価格に対しては2023年決算で改善できるように、新たな価格帯をもうけて対策を打っています。
また②の海外拠点に関しては、台湾店舗の増加・米国EC販売の強化により対策を考えている状況です。

これらの対策が想定通り進めば楽しみな展開が見られそうです。

2.BSの状況

次はBSの状況について見ていきましょう。
総資産全体としては前年末から+17億円増加しています。

出所:決算説明資料

流動資産では現預金が△17億円減少したものの、商品在庫が+8億円増加しました。「現預金が減少して商品在庫が増加」するという流れはCF上は好ましくありません。このあたりは後のCFの状況で見ていきます。

固定資産に関しては、新規出店に伴って建物・器具備品などの有形固定資産や敷金・保証金などが増加しました。

負債に関しては、社債を含む有利子負債全体で△3億円減少しました。短期・長期の区分で見ると、償還期限が一年以内になった新株予約権付社債が長期から短期へ振り替わったものが10億円あります。
また商品仕入れの増加などがあり、買掛金が+10億円増加しています。

あと毎年発生しない項目としては、PLの状況で触れた「事務所移転費用引当金 」と「事業構造改革費用引当金」が発生しています。この2項目で+8億円の計上となっております。

出所:決算短信

純資産の動きとしては、配当金支払いで△8億円、当期純利益で+7億円、あとはその他有価証券評価差額金などのその他包括利益に関する増減で+3億円の動きがあり合計で+2億円の増加となりました。特別な動きはなく定常運転といった感じです。

出所:決算短信

安全性の指標についても見ていくと、流動比率(流動資産÷流動負債)は146%と目安の200%を下回っています。今回の決算で、長期新株予約権付社債で償還期限が一年以内に該当するものが10億円ありそれが流動負債に振り替わりました。その影響で比率が低下したと考えられます。
ただこの200%を下回ったから支払い能力に問題があるわけではなく、現状では特に問題はないと考えられます。

あと固定比率(固定資産÷自己資本)は107%と目安の100%を上回っています。
これは出店した店舗に関する保証金が49億円ありそれが固定資産の区分に計上されている影響があります。
営業活動に関する固定資産であれば、それが利益を生んで純資産を増加させるというようにBSの中を循環していきますが、この保証金の類は利益を生み出すわけでもなく、店舗を解約するまで固定資産に居続けます。
その為、この保証金が大きくなると固定比率を低下させる要因になります。
ただこれも100%を超えたからとってすぐに問題がある様な状況ではないので、現時点では特段気にするレベルではありません。

3.CFの状況

最後にCFの状況について見ていきましょう。
CF全体としては△17億円の減少となりました。内訳としては営業CFで+43億円、投資CFで△38億円、財務CFで△27億円といった内容です。

出所:決算説明資料

全体としてはマイナスですが、営業CFでしっかりと稼ぎ、それを投資資金として注入するというサイクルを回した結果なので問題ないかと思います。
また営業CFを大きくするためにも、しっかりと投資をしないと先細りしてしまうので今後も営業CFと投資CFのバランスを図っていく必要はありそうです。

また不測の事態への備えとして取引銀行と当座貸越契約を結んでいます。この契約内容の通貨が円建てだけではなく、海外拠点別の通貨でも契約しています。つまりは中国元・香港ドル・台湾ドルの外貨での契約です。

出所:有価証券報告書

この点は、不測の事態が発生した際は速やかに対応できる備えとしては申し分ないのではないかと思います。

今回の決算内容3分解説は以上となります。
次はどの会社の決算を見ようかな?

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