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シミックホールディングスの決算内容を3分で解説!

今回はシミックホールディングスの決算内容について見ていきましょう。
日本で最初にCRO(医薬品開発支援)というビジネスを開始したこの会社、今では医薬品開発に関わる全ての業務でサービスを提供するまでになりました。その決算内容はどうでしょうか?

1.PLの状況

まず最初にPLの状況について見ていきましょう。

売上高は前年比+26.4%の1,084億円となりました。営業利益は前年比+140.7%の118億円、当期純利益は+314.5%の83億円と大幅な増収増益という結果となりました。

出所:決算説明資料

営業利益から経常利益までに+16億円増加していますが、このうち為替差益で+17億円の計上がありこれが大きく影響しています。
円安のプラス効果ですね。

出所:決算説明資料

それではセグメント別に内容を見ていきましょう。

セグメントとしては2つ「製造ソリューション」「ヘルスケアソリューション」があります。
売上高の規模感としては、製造ソリューションが70%超を占めています。
一方営業利益の観点で見るとこれが逆転して、ヘルスケアソリューションが70%超を占める形となります。

出所:決算説明資料

◇製造ソリューション
売上高は前年比+14.3%の781億円、営業利益は+52%の47億円となり増収増益という結果となりました。

出所:決算説明資料

この中でさらに3つの事業「CRO事業」「CDMO事業」「Market Solutions事業」に分かれます。

出所:決算説明資料

CRO事業が全体の売上高の50%ほど占めており主力となっています。
事業内容は「疾患予防・治療の研究開発を総合的に支援する事業」となります。日本国内だけではなく米国やアジア地域からの研究受託もあります。

売上高も堅調に推移しており前年比+15%の402億円、また事業利益率も前年の12.5%から+1.3%増加して15.8%となりました。

出所:決算説明資料

次いで売上高の規模が大きい事業はCDMO事業で約30%を占めています。
事業内容は「治療の研究開発を総合的に支援する事業」となっており、米国へも事業展開しています。
今回の売上高は前年比+16%の248億円となりました。
事業利益率に関しては、前年の赤字から今回は利益率0.3%となんとか黒字化に成功しました。

出所:決算説明資料

最後はMarket Solutions事業ですが、事業内容は「医薬品等のメディカル・営業・マーケティング支援事業ならびにオーファンドラッグ等の開発・製造販売・流通事業」となります。

売上高は前年比+9%の135億円、事業利益率は前年の7.2%と同率で変化なしという結果です。
MR派遣業務などで新規案件と既存案件が順調に推移したことが好調の要因と考えられます。

出所:決算説明資料

◇ヘルスケアソリューション
売上高は前年比+72.7%の310億円、営業利益は+174.1%の86億円となり大幅な増収増益という結果となりました。

出所:決算説明資料

数値を見ていただくと分かりますが、この事業は利益率が非常に高いです。
営業利益率は27.9%とかなりの高水準です。

またこの中で事業は2つに分かれており「Healthcare Revolution事業」「Site Support Solutions事業」があります。
前年まではSite Support Solutions事業の方が売上高の半数以上を占めていましが、この1年間でHealthcare Revolution事業が逆転して59.4%を占めるまでになりました。

出所:決算説明資料

Healthcare Revolution事業はここ1年間で売上高が倍増の+107%の195億円となりました。
事業利益率も好調で、前年の23.7%から31.8%まで上昇しました。
好調の要因としては、新型コロナのワクチン接種支援事業から自治体支援事業が大幅に拡大したことが大きく影響しています。

◇2023年業績見通し
2023年の業績見通しとしては、売上高は前年比△12.4%の950億円、営業利益は△57.8%の50億円と大幅な減収減益を見込んでいます。

今回の好決算の要因がコロナ禍に起因している点を考えると、業績見通しは慎重にならざるをえません。

それでも一度築いた地盤のおかげで、コロナ禍前の2018年〜2019年と比較すれば増収増益の見通しとなります。

出所:決算説明資料

2.BSの状況

次はBSの状況について見ていきましょう。

総資産全体としては前年末から+163億円増加しました。

出所:決算説明資料

流動資産では+94億円増加しましたが、そのうち現預金で+24億円増加しています。この点に関しては後のCFの状況で触れていきます。

それ以外では売上債権が+65億円増加しています。これは売上高の増加に伴い増加したものと考えられます。

固定資産に関しては+69億円増加していますが、これはリース資産を含めた有形固定資産で+27億円増加しています。

あとは繰延税金資産で+30億円の増加が見られますが、これは賞与引当金が+11億円増加したことなどに起因するものです。
特定の項目で大きく増加したわけではありませんが、賞与引当金以外では減価償却費の超過額などの損金不算入項目で、満遍なく増加したことによって繰延税金資産が増加したものと考えられます。

出所:有価証券報告書

負債の部では+96億円増加しましたが、未払金・未払費用・未払法人税等の未払シリーズで+30億円増加しています。

あと先程の繰延税金資産の項目で触れた賞与引当金も+30億円増加していますが、これは大幅な増益だったことに伴う賞与の増加が影響していると考えられます。

また長期借入金で+10億円の増加が見られますが、これは返済期限が到来したので増額して新規借換えを実行したことによるものです。

それ以外ではリース債務で+10億円増加していますが、これはリース資産の増加に伴う動きとなっております。

出所:決算短信

3.CFの状況

最後にCFの状況について見ていきましょう。

CF全体としては前年末から+23億円増加しました。内訳としては営業CFで+112億円、投資CFで△80億円、財務CFで△12億円という内容です。

出所:決算説明資料

営業CFでは税前利益で+120億円をしっかりと稼げているのでここは問題なさそうです。

投資CFに関しては、有形固定資産への投資で△65億円の支出がありましたが、これは例年と同レベルの投資額です。

財務CFは借入金の返済スケジュールに沿って△36億円の支出がありましたが、長期借入金の借換えによる+47億円の借入が実行されました。
それ以外では剰余金の配当金は△6.1億円と大きな金額ではありません。
正直なところ、純利益ベースでまずまずの利益を出しているので、もう少し剰余金の配当で株主への還元があっても良いのかもしれません。

出所:決算短信

また緊急時の備えとして、取引銀行3行と総額50億円のコミットメントライン契約を締結しています。
今のCFの規模感から考えると、緊急時の備えとしては問題ないレベルかと考えられます。
ただこの契約には財務制限条項が付されていて、財務状況が悪くなるとすぐに返済を求められてしまうので、50億円あるからと言ってそれほど安心できるわけではなさそうです。

出所:有価証券報告書

今回の決算内容3分解説は以上となります。
次はどの会社の決算を見ようかな?

マサキタカオ


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