物語 月、満ち欠け 10月24日(第十七話-すれ違い)
前回までのあらすじ
王子さまとそうじ屋の娘。湖で出会い恋におちた二人。しかし、お互いの身分はあかせぬまま。上弦の月の翌日、二人は湖で再会、家出。帰ると娘は捕らえられ、満月の夜に来る国の守り神「ヨル」に、二人は裁かれました。『愛が濁っている二人は永遠に逢うことはないであろう』と。長老は、新月の夜に「コスモ」に願いを叶えてもらえばまた会えるかもしれないと言いました。王子さまは長老のもとで修行をすることになり、娘はそうじの仕事を再開しました。二人は今までについて反省しながらもがんばっています。
第十七話-すれ違い
夜明け前。
星の並び冬のダイヤモンドのそばに月があります。冷たい手先でつたいます。お月さまお星さま、おはようございます。
そうつぶやいてそうじ屋の娘は今朝も日の昇る前から働きはじめました。今日もがんばっているようです。
夜明けの頃。
西の果てはまだ夜の色で月も光っているのに、東の果ては燃えるような朝焼けのオレンジ色です。光が広がってきます。
王子さまも今朝は早起きです。さあ、長老のもとで修行です。
今日の修行は人々の暮らしについてです。そうじ洗濯炊事。王子さまにとっては初めての洗濯や炊事でした。王子さまもがんばっています。
午後。
娘はやとい主の奥さまとともにお城へ呼び出されました。ついに、王子さまと家出をした時の罰が下るのでしょう。緊張して、お城へ向かいました。
お城には、王さまがいました。そばには王女さま、つまり王子さまのお姉さまもひかえていました。王子さまはいません。長老のもとで修行中だからです。
王さまはおっしゃいました。
体調はどうじゃ。
はい。お陰さまで元気になりました。そうじの仕事も再びさせていただいております。ありがとうございます。
ふむそれは良かった。ところで実は女主から手紙と贈り物が届いた。大変心のこもったものであった。それで今回のことであるが、罰は下さず様子を見守ることにした。日々の仕事に励むように。
ありがとうございます。
ありがとうございます。
王さまのそばに控えていた王女さまは、娘を一目見て気に入られました。
さてその頃。屋敷にはこっそり王子さまが娘を訪ねてきました。娘はお城に呼び出されたとのことです。すれ違いでした。王子さまは龍ヨルの裁きの絶対を知りました。
夕方、王子さまは長老から、龍についての伝説を教えてくれました。願いを叶えてくれる龍コスモは普段は宇宙に住んでいて、新月の夜にあの湖へ水をのみにくる。裁きを下す龍ヨルも同じところに住んでいて、満月の夜に湖へ水をのみにくる。宇宙へは隣の国の山から行けるそうです。そういう伝説だそうです。
王子さまは、隣の国から宇宙へ行き、龍コスモに会いにいきたいと言いました。長老は少し考えてから、言いました。
わかりました。明日の夜明け前にたちなされ。ただし人に見つからぬように。隣の国では女主さまを訪ねなされませ。王さまの方は、私がなんとかしておきましょう。
ありがとうございます。
今宵は星が綺麗です。月は夜中に昇ることでしょう。
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『物語 月、満ち欠け』
第十八話はこちらです。
第一話はこちらです。
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