俺のブックカフェ

#1秒の恋


別テーマ:ブックカフェ

でお願いします。


俺のブックカフェ

昔の俺は本の虫だった。半日入り浸るのは図書館。ひとつの書店には申し訳ないから一時間ずついて、後は複数の書店をハシゴをする日々だった。
コーヒーもイイ。洒落たカタカナの甘いのは駄目だ。コーヒーって奴はブレンドがイイに決まっている。喫茶店なら、一時間を基本として、三、四時間は入り浸るもんだ。もちろん、本を読みながらな。

俺がまだ青臭い頃、そう思っていた。

仕事が忙しくなり、本とコーヒーでゆっくりする機会が減った。そうさ、俺らの時代はそれでもガムシャラに頑張るしかなかったんだ。

そのうち、ケータイだの、スマホだのが普及してきた。それから、何とかペイだ?? 電子マネイとかいう奴も出てきた。
皆が皆、下を向いて小っさい画面を一生懸命小突いているが。如何なものか。
全部が全部、機械やらAIやらに翻弄されている人間達は滑稽そのものだ。可笑しくて笑っちまう。
本当に可笑しくて可笑しくて、俺は俺の人生を棚上げして鼻で笑った。

最近、駅のビルん中にブックカフェっつーもんが出来たらしい。
ふむ、ブックカフェ。本とコーヒーか……。俺は、若干懐かしい記憶を辿り、そのビルのブックカフェとやらへ行くことにした。

小洒落た店が並ぶ中に、そいつはあった。

あったにはあったのだが、ちょいと俺にはシャレオツ過ぎたようだ。こいつは俺の記憶の本屋でもコーヒー屋でもなかったな。そのブックカフェを素通りして、俺はいつもの道を行くことにした。

ま、そんなもんさ。
人生なんてのは、巻き戻しなんて出来ないんだ。
あの日の本も、あのブレンドも、あの1秒の恋も。……ふん。おっさんが恋を語ったらイカンか。

ま、そう言う事だ。

缶コーヒーをブキャッと開け、グイと飲む。
本とコーヒーと1秒の恋。
俺の人生の1頁には、確かにあったんだ……。

自販機がヴーンと俺を笑った。



(おわり)


ありがとうございました(^_^)




追記、
私はブックカフェに行ったことがないので、想像で書きました。調査不足ですが、よろしくお願いいたします。

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