物語 月、満ち欠け 10月25日(第十八話-明日の約束)

前回までのあらすじ

王子さまとそうじ屋の娘。湖で出会い恋におちた二人。二人は湖で再会、家出。帰ると娘は捕らえられ、満月の夜に来る国の守り神「ヨル」に、二人は裁かれました。『愛が濁っている二人は永遠に逢うことはないであろう』と。長老は、新月の夜に「コスモ」に願いを叶えてもらえばまた会えるかもしれないと言いました。王子さまは長老のもとで修行、娘はそうじの仕事を再開。隣の国を通って「コスモ」に会えると聞き、王子さまはコスモに会いに行くことにしました。


第十八話-明日の約束

夜明け前。月は雲からうっすらとしています。

王子さまは願いを叶えてくれる龍コスモに会いに、隣の国へ出発します。まだ暗い夜明け前です。目立たないように長老の見送りもありません。

王子さまの足なら夕方頃には着くことでしょう。長老は王子さまの無事を祈りました。



今朝も娘はよく働いています。やとい主の奥さまがあわてた様子で声をかけました。

なんと王女さまから連絡があったと言います。王女さまが娘を気に入られたので、王女さまのいる別邸へあいさつにくるように、とおっしゃられたのだといいます。

娘はあわててきちんとした服装に着替えました。そして、やとい主の奥さまとともに、王女さまのいる別邸へあいさつにいきました。


王女さまは娘に対してとても優しいまなざしでした。

あなたがそうじ屋の娘さんですね。

はい。ルナと申します。

ルナさん。かわいらしい良い名前ですね。ところで明日ここでランチをするので、ルナさんもいらっしゃいな。

はい。ありがとうございます。

ふふふ。

王女さまがほほえむ雰囲気は、弟である王子リヒトと少しそっくりに思われました。娘は王女さまにおじぎをして、部屋をあとにしました。


廊下を歩いていくと、貴族の女性数人とおともの方々が前方からやってきました。娘とやとい主の奥さまはあわてて頭を下げて、道を譲ります。貴族の女性の一人が通りすがりに言いました。

あら汚ならしい。そうじ屋などと一緒に食事なんて嫌ですわね。オホホホ。

そう言って笑ったのは、王女さまに敵対心をもつ貴族の女性でした。

娘とやとい主の奥さまは頭を下げて、その貴族の女性たちが通りすぎるのを待ちました。

娘とやとい主の奥さまは少しモヤモヤとしながら、屋敷へと帰りました。



夕方。王子さまは隣の国に到着しました。曇り空からは今にも雨が降ってきそうです。

オルゴール工場が見つかりました。行ってみると、男性がそこでそうじをしていました。男性に、女主についてたずねてみました。

すみません。女主さまは、こちらにいらっしゃいますか?

そうじをしていた男性は、面倒そうな目で、若い王子さまをにらみつけました。

なんだ若造。女主がどうした。

はい。少し旅をしてきました。女主さまにお会いしたいのですが。

知らねーよ。

と言ってそうじを続けようとした男性は、ふと何かを考えついた様子でニヤリと笑いました。

おいお前そうじぐらいできるよな?

そうじですか……?

明日ここでそうじをしろ。女主のことは明日教えてやってもいい。

……。わかりました。

ったく。三日前からそうじ屋の女が休みやがって。ふざけんなってんだ。

と、男性は立ち去ろうとしました。王子さまは少しためらいましたが男性に聞いてみました。

あのどこか泊まれる場所はありますか。

図々しい奴だな! そこの隅にでも休んでろ!

そう言い放つと、そうじをしていた男性は怒った様子でどこかへ行ってしまいました。


王子さまは仕方なく、工場の隅で休むことにしました。



外では雨が降ってきました。冷たい冷たい雨でした。



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『物語 月、満ち欠け』

第十九話はこちらです。


第一話はこちらです。



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