物語 月、満ち欠け 10月21日(第十四話-長老の研究と龍)
2021年10月22日、一部修正しました。
前回までのあらすじ
王子さまとそうじ屋の娘。湖で出会い恋におちた二人。しかし、お互いの身分はあかせぬまま。上弦の月の翌日、二人は湖で再会。そのまま家出をしてしまいます。帰ると娘は捕らえられ、満月の夜に来る国の守り神「ヨル」に、二人は裁かれました。『愛が濁っている二人は永遠に逢うことはないであろう』と。
10月21日(第十四話-長老の研究と龍)
ここはお城。
王子さまはお城でぼんやりと目覚めたようです。
『愛が濁っている二人は永遠に逢うことはないであろう』
昨晩の湖での龍ヨルの裁きがよみがえります。あれは夢だったのでしょうか。ぼんやりした意識の中で思いました。もしかしたら、自分が王子であることも夢であるのかもしれない。まさか愛しい人、娘ルナも夢だったなんてことは……それはいやです。そう、まだ夢の中にいるのかもしれない。きっと夢の中。そう思いました。
お城では、王子さまが目覚めたことで、王さまが大変安心しました。
ここは屋敷。
そうじ屋の娘はやとい主の奥さまの屋敷でぼんやりと目覚めたようです。
『愛が濁っている二人は永遠に逢うことはないであろう』
昨晩の湖での龍ヨルの裁きがよみがえります。あれは夢だったのでしょうか。ぼんやりした意識の中で思いました。もしかしたら、自分がそうじ屋の娘であることも夢であるのかもしれない。まさか愛しい人、王子リヒトも夢だったなんてことは……それはいやです。そう、まだ夢の中にいるのかもしれない。きっと夢の中。そう思いました。
屋敷では、娘が目覚めたことで、やとい主の奥さまが大変安心しました。
長老がお城へ、王子リヒトを訪ねてきました。
長老は王子さまの体調を確認して、心配はいらないでしょう、と言いました。
王子さまは、娘のルナさんは無事ですかと聞きました。
無事であると長老から聞くと、ひとつ安心しました。
王子さまは長老に龍ヨルとの出来事を話しました。
龍ヨルが言った言葉。
『愛が濁っている二人は永遠に逢うことはないであろう』
その言葉を語る王子さまは、大変悲しそうでした。
長老はなぐさめながら、次のことを伝えました。
満月にくる龍ヨルの裁きは絶対です。しかし、新月には龍コスモがくるでしょう。
長老は龍のヨルとコスモの研究をしています。
黒い龍ヨルは満月の夜に湖にきて人を裁きます。白い龍コスモは新月の夜に湖にきて人の願いを叶えます。
次の新月には龍コスモがくるでしょう。龍コスモは願いを叶えてくれます。上手に願い事を出来ればまた会える可能性があります。ただし、失敗すれば……。
永遠に会えない、ということですか?
おそらくはそうでしょう。
おそらく長老の言う通りなのでしょう。
王子さまは、希望を半分と、不安を半分、持ちました。
それでは。また明日も参ります。
と、長老は立ち上がり、礼をして帰ります。
あぁ。と、長老は振り返りました。
それから、小屋をきれいにしてくださって、ありがとうございました。
はい?
私がヨルとコスモを見張るぼろやのことです。
あ。
ふぁっはっはは。あのように美しくそうじできるお二人でしたら。きっと、いや、必ず、大丈夫です。この老いぼれめが保証いたします。
あ、ありがとうございます。
王子さまは、少しだけホッとしました。
長老が娘のいる屋敷へ、娘ルナを訪ねてきました。
長老は娘の体調を確認して、心配はいらないでしょう、と言いました。
娘は、王子のリヒトさまは無事ですかと聞きました。
無事であると長老から聞くと、ひとつ安心しました。
娘は長老に龍ヨルとの出来事を話しました。
龍ヨルが言った言葉。
『愛が濁っている二人は永遠に逢うことはないであろう』
その言葉を語る娘は、大変悲しそうでした。
長老はなぐさめながら、次のことを伝えました。
満月にくる龍ヨルの裁きは絶対です。しかし、新月には龍コスモがくるでしょう。
長老は龍のヨルとコスモの研究をしています。
黒い龍ヨルは満月の夜に湖にきて人を裁きます。白い龍コスモは新月の夜に湖にきて人の願いを叶えます。
次の新月には龍コスモがくるでしょう。龍コスモは願いを叶えてくれます。上手に願い事を出来ればまた会える可能性があります。ただし、失敗すれば……。
永遠に会えない、ということですか?
おそらくはそうでしょう。
おそらく長老の言う通りなのでしょう。
娘は、希望を半分と、不安を半分、持ちました。
それでは。また明日も参ります。
と、長老は立ち上がり、礼をして帰ります。
あぁ。と、長老は振り返りました。
それから、小屋をきれいにしてくださって、ありがとうございました。
はい?
私がヨルとコスモを見張るぼろやのことです。
あ。
ふぁっはっはは。あのように美しくそうじできるお二人でしたら。きっと、いや、必ず、大丈夫です。この老いぼれめが保証いたします。
あ、ありがとうございます。
娘は、少しだけホッとしました。
夕方。王子さまと娘はそれぞれの場所で考えていました。
新月の夜、龍コスモにどんな願い事をすれば愛しい人に再会できるのでしょうか。そうしなければ永遠に……。再会できる願い事を探して、愛しい人に必ずまた会いたい。
と思いました。
見上げた夕方の空は、美しい雲がたくさんの曇り空でした。今夜は月は見えないかもしれません。しかし、いつかはまた晴れるでしょう。二人は希望を信じて、夕方の空を眺めていました。
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『物語 月、満ち欠け』
第十五話はこちらです。
第一話はこちらです。
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