物語(D):思い出……3 息子編
こちらの続きです。
ハナウタナベさん曲
D 『【朗読花歌】盲目/作詞:Tome館長』
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https://youtu.be/2Jlqeu5dyMA
思い出……3 息子編
親父が死んだ。
いや、正確に言えば親父だが。はっきり言って、どうでもいい。
俺が五才の時、母は俺を連れて親父と住んでいた家から去った。原因は、親父の浮気だと知っている。母が俺を子守している時に浮気してたと言うのだから、本当に最低なダメ親父だ。
母がその後どれだけ苦労したかも知らないで、養育費も入れやしなかったらしい。
それで、母は継父と結婚して。俺も名字が変わって。学校で色々言われたこともあった。継父はとてもいい人だ。それはまあ良かったことだが。
いや、良くない。こんな思いをさせたダメ親父が死んで今さらなんなんだ。
それでも、母や継父は、親父の悪口を言うなと言う。なんなんだろう。まったく。
俺には彼女がいる。彼女に話すと、彼女のお父さんが亡くなった際に、お母さんは手続き色々大変そうだったよ、と言っていた。
それで、彼女に色々聞きながら。たんたんとこなす。
相続はもちろん放棄。
葬式なんて出さない。火葬。喪主は俺らしい。
片付けは業者に頼んだ。
業者の人は聞く。
「これはどうしますか?」
「いりません」
と言った。
一応、見に来たが。汚ないな。
これはどうしますか? と聞かれたものの中に、写真があった。
若い母が、赤ちゃんの頃の俺を抱いていた。
初めて見る写真だった。
母は家を出るときに、持っていかなかったのだろう。
「これは。いります」
思わずそう言っていた。
中を見てみると、若い母や親父や俺が、笑顔で写っていたり、はしゃいでいたりしてた。
もう一つ、古びたボロい段ボールがあったので、それも開けてみた。
それは、違う女性と楽しそうに写る親父の写真だった。
俺は激しくムカついた。
当たり前だろう。だからダメ親父なんだ!
じっくりと見ることはせず、処分を頼もうと思った時。ん? と思った。
見覚えがある女性に思えた。
段ボールの差出人を見る。
「山崎静子」
……。
彼女に、LINEをする。
(お母さんの旧姓って、山崎だったよね?)
……。
(そうだけど? 何で?)
ああ。こんな自分の人生がいやになった。
俺もダメ親父と同じか。
ありえない。親父の浮気相手が彼女のお母さんだ? いや。ありえない。
ありえない。
つづく
コメント:最後にハナウタナベさん曲です。初めから不穏な話で申し訳ないです。
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