物語 『喫茶 星屑』
物語 『喫茶 星屑』
「この珈琲カップは特別なのさ。
なにせ天の河で洗ったものだからね」
マスターの言葉は本当だろうか。
棚に飾られている、美しく深い青に 星の様な紋様で 光がキラキラと光る 珈琲カップ。
ぼくは信じる。
なぜなら、マスターの淹れる珈琲は美味しい。
それにこの喫茶店の雰囲気は、どことなく宇宙に居るようだ。
美しく孤独で永遠で果ての見えない、珈琲の香り。
寡黙なマスターと美しすぎる星の珈琲カップ。
平凡なぼくと非日常の時空に浮かぶ珈琲時間。
……わかるかな。
つまり、
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『喫茶 星屑』
=(マスター×珈琲カップ)+(ぼく×珈琲時間)
=(宇宙の星屑)+(宇宙の時空)
=宇宙
∴『喫茶 星屑』= 宇宙
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ということ。
スプーンに光る琥珀色は本日の珈琲時空の欠片であるし。
カップの底に残った珈琲や砂糖は星々の一生を表す模様であるし。
角砂糖には宇宙構造の一部をスクラップしてある。
ミルクという星のモトをそっと珈琲に入れる瞬間には、僕は宇宙を創造しているんだ。
珈琲の香り。こいつはいわゆる宇宙の法則に例えられるだろう。
この香りをかぐと、宇宙法則により宇宙が宇宙でありうる様に、珈琲の香により喫茶店が喫茶店でありうることがわかる。
……つまり、何が言いたいかっていうと。
『喫茶 星屑』は宇宙だってこと。
そうですよね、マスター?
「ふふ」
マスターは深く微笑みを浮かべて、何処か宇宙の謎を湛えているのだった。
僕がますます困惑したのは、この『喫茶 星屑』の宇宙で迷子になってしまったことに気がついたからだった。
『喫茶 星屑』へ。
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