物語 月、満ち欠け 11月7日(第三十一話最終話-三日月の舟に)
※ テーマ絵:こよみさま
前回までのあらすじ
王子さまとそうじ屋の娘。湖で出会い恋におちた二人。二人は湖で再会、家出。帰ると娘は捕らえられ、満月の夜に来る国の守り神「ヨル」に、二人は裁かれました。『愛が濁っている二人は永遠に逢うことはないであろう』と。長老は、新月の夜に「コスモ」に願いを叶えてもらえばまた会えるかもしれないと言いました。
王子さまは修行の途中で隣の国へ旅へ行き、娘はそうじの仕事を再開しました。王子さまは宇宙で「コスモ」を見つけました。娘は湖畔で宇宙を見つめました。愛しい人が幸せであるなら、特別な願いごとはないと思いました。そしてそれぞれお城と屋敷へ帰りました。二人ともそれぞれの場所で心機一転がんばります。それでも本当は愛しい人に会いたいようです。
第三十一話最終話-三日月の舟に
若き王子さまがいらっしゃいました。ここのところ、王子としてがんばっていました。お休みの今日は少し遅めに目覚めました。
そうじ屋の娘がいました。ここのところ、そうじ屋としてがんばっていました。お休みの今日は少し遅めに目覚めました。
王子さまはお城を一人出て、町や村の姿を眺めて歩きました。
夢中で歩いている間に、湖のほとりにたどり着きました。
あっという間に日が傾きました。
王子さまがぼんやりとして歩いていると、藍色と赤色の美しい湖に、美しく光る三日月の舟が浮かんでいるのを見つけました。
近くへ寄ろうとそっと近づきます。
三日月の舟の近くにはだれもいませんでした。
王子さまは、ポケットから小さなオルゴールを取り出して鳴らしてみました。
ポロロン……。
美しい不思議な音が、湖に響きます。
近くの木から、ひょこんと誰かが顔を出しました。
見ると、ずっと恋しかった彼女でした。
二人はふと目が合うと、一瞬、時が止まったようでした。ふと愛しい思いにあふれてしまったのでしょう。
二人は三日月の舟に乗り、夕焼けの美しい世界を眺めました。
王子さまは、自分が王子とは気にすることはもうありませんでした。彼女とずっとそばにいることが出来るような気がしました。
娘は、自分がそうじ屋とは気にすることはもうありませんでした。彼とずっとそばにいることが出来るような気がしました。
二人は、他愛のないことをひとことふたこと話しては、美しい三日月の舟に乗り、夕焼けの世界に浮かんでいました。
そろそろと星も一つ光りはじめる頃。
暗くなる前に、帰らないと。二人がいないことを皆が心配してしまう。
そう思って、それぞれの家へ帰ることにしました。
別れ際に、約束を交わしました。
きれいな月に誓い、また会いましょう。
と。
二人のお話は、これでおしまいです。
え? 二人の未来はどうなるですかって?
きっと大丈夫ですよ。
なぜってほら。
見てください。二人の凛々しく優しい姿を。
二人は自分たちの意志で未来を切り開いてゆけます。思いやりを持つことも大切にするでしょう。
ほら、月と宇宙は二人を見守るようですよ。
こんなにも優しく輝いているのですから。
ね。
おしまい。
物語のテーマ曲
(PJ様)
物語のテーマ絵
(こよみ様)
。*。*。*。*。*。*。
『物語 月、満ち欠け』
物語はこれで最終話となります。
どうも、ありがとうございました。
素敵なテーマ曲を作ってくださいました、PJ様はこちらです。
PJ様、素敵な曲をどうもありがとうございました。
素敵なテーマ絵を作ってくださいました、こよみ様はこちらです。
こよみ様、素敵な絵をどうもありがとうございました。
第一話はこちらです。
お読みいただきまして、本当に嬉しかったです。
どうも、ありがとうございました。
いただいたサポートは、本を買うことに使っていました。もっとよい作品を創りたいです。 ありがとうございます。