物語 月、満ち欠け 10月29日(第二十二話-下弦の月とオルゴール)

前回までのあらすじ

王子さまとそうじ屋の娘。湖で出会い恋におちた二人。二人は湖で再会、家出。帰ると娘は捕らえられ、満月の夜に来る国の守り神「ヨル」に、二人は裁かれました。『愛が濁っている二人は永遠に逢うことはないであろう』と。長老は、新月の夜に「コスモ」に願いを叶えてもらえばまた会えるかもしれないと言いました。王子さまは修行の途中で隣の国へ旅へ行き、娘はそうじの仕事を再開しました。女主と長老の過去は二人にそっくりと聞きました。


第二十二話-下弦の月とオルゴール

未明。王子さまとそうじ屋の娘はそれぞれの場所で思い悩んでいました。果たして自分の想いは合っているのか、これからどうすれば良いのかと。

そろそろ夜は明けるのでしょうか。空を見上げる癖がすっかりついてしまいました。半月と満天の星空、東に少しブルー。この沢山の星々に名前はあるのでしょうか……。遠く遠く瞬いている星々から、星を一粒ポケットに入れ、転がしてみます。

ん? しょんぼりしながら、ポケットに手を入れてみると、いつの日にか頂いた小さな美しい箱がありました。

その箱をそっとてのひらに乗せて眺めます。箱の上の面には丸い月が描かれています。長い横の面にはお城が、短い横の面には町と村が、もう一方の長い面には湖がありました。湖は半月の形をしています。それは二人が出会ったあの湖でした。グッと胸が締め付けられます。底の面を見ると、星空が描かれています。そして、金色の取っ手のような物がついています。

金色の取っ手に少しふれてみました。と。リン……と音が鳴りました。あ、と思い、取っ手をそっと回してみました。ポロロン……と、不思議な音が流れ出しました。それは小さなオルゴールでした。

オルゴールからは優しくて不思議な調が流れてきます。少しうっとりと、先ほどまでの悲しい気持ちも少し癒されたようにも思えました。

二人は、なにかが心にポッと灯されました、今朝は満天です。



王子さまは女主さまに山の方へ出発をしますと言いました。願いを叶えてくれる龍コスモに会いに行くためです。

女主さまは、わかりましたと言いました。

泊まるところに困らないように、手紙を渡してくれました。これを見せると泊まらせてくれることでしょう。

ありがとうございます。

こうして、王子さまは龍コスモに会いに出発をしたのでした。



娘は今日もそうじの仕事を丁寧に心を込めてがんばります。

やとい主の奥さまがやってきました。娘に

調子はどう? 

と聞かれました。娘は

はい、良いです。そうじの仕事をがんばりたいです。

と答えました。

それはよかったわ。ところでね。

やとい主の奥さまは、王女さまからお呼びだしがあったと伝えました。明日王女さまのいらっしゃる別邸へ行ってお会いするよう、伝えました。

わかりました。ありがとうございます。


青い空には遠く白い雲がぷかぷかと気持ち良さそうに浮かんでいました。







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『物語 月、満ち欠け』

第二十三話はこちらです。


第一話はこちらです。


次の話は、またご用意いたしますね。

どうも、ありがとうございました。

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