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彼の好きな癖と恋愛の恥ずかしさについて

付き合っている彼は、これから何か大切なことを言おうとすると口を開く直前に少しだけ呼吸が荒くなる癖がある。

この少し動物っぽい癖が、感情が読み取りづらくて不器用な彼らしくて私は好きなのだけど、本人には気づいてほしくないから教えていない。

この癖に初めて気づいたのは彼から交際を申し込まれる直前の時だった。

ベンチに並んで座っていると横から一瞬、鼻から息を強く吐く音が聞こえた。

「ん…?」と思った次の瞬間に名前を呼ばれ、そのまま告白された。

この前初めて手を繋ごうと言われた時もそうだった。

並んで歩いていると横から一瞬だけ荒い呼吸が聞こえて、「あ」と思ったらまた同じように名前を呼ばれ、十数秒後には彼と手を繋いで歩いていた。 

「これから会うときは手繋いでいい?」と訊かれたときも、「僕と付き合ってくれてありがとうね」と突然言われた時もそう。
口を開く直前に緊張した息遣いが隣から聞こえてきた。
(弁明:別に耳を澄ませてるとかではないけど、お互い会話をたくさんするタイプではないので聞こえてしまうのです…)

きっとこの呼吸の音は、奥手な彼が頑張って「えいっ」と私の世界に一歩踏み入れようとしてくれている音だと勝手に想像している。

シャイで口下手な彼だから、気持ちを言葉で伝えるためにはたくさん勇気がいるはずなのに、「キャラじゃないから」と言ってはぐらかしたり冗談めかしたりすることなく、いつも驚くほど真っ直ぐ伝えてきてくれるところにひとりこっそり感動している。

彼がそうやって恥ずかしさの殻を破って2人の関係の舵を切ろうとしてくれることが嬉しい一方で、
同じように奥手で口下手な自分がいつまでも恥ずかしさの陰に隠れてうじうじとしていることが対比されて、
いつも受け身がちになってしまっている自分が後ろめたいし、彼に申し訳ない気持ちを感じる。

常に男性の一歩後ろを行く"大和撫子"なんかに絶対なりたくなかったのに。

女性だからって守られたくない、対等でありたいと思ってるくせに、結果的に彼にいつもリードされてるし、私がそうさせてしまっている。もどかしい。悔しい。

恋愛って常に自己開示の連続で、自分の内側を人に見せるのが苦手な私は、恋愛がこんなにもたくさんの「恥ずかしい」を一つ一つ超えていかなくちゃいけないものだということに彼と付き合ってからずっと驚いてるし、戸惑っている。

特に私たちの場合、お互い初めての恋人同士なので、一つ一つの壁が大きくて壁の数もいちいち多い。

これから超えるべき壁を想像しただけで気絶しそうになるけど、彼任せにしないでちゃんとふたりで超えていきたい、と思う。

と思いながらも、彼の癖の音は聞こえるたびにどきどきするのでこれからも聞きたいなあと思うわがままな自分もいたりする。

これがあの、「恋なんて言わばエゴとエゴのシーソーゲーム」ってやつですか。

恋愛してから聴くミスチルにはほんとに脱帽しかないですね。

……なんの話?

つづく。

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