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まどろみの奈良、そして土佐

上の子が録画のテレビドラマ、

下の子が私のiPhoneで期間限定のプリキュア映画のYouTube、

という3月の日曜日の午後、

私も久しぶりに自分の好きな映像を見ようと

DVDを取り出しました。

「死者の書」2005年

川本喜八郎監督作品。

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これを知ってる人は、かなりの通(ツウ)でしょう。

しかしなんの通か、実は私自身、分類がよくわからないのですが。(わかってないんかい)

人形アニメーション通?

日本映画通?

岩波友の会通?

川本喜八郎通?

原作者の折口信夫通?


私はどれの通(ツウ)でもありません。

それなのになんで、

この作品を知って、DVDまで持っているか?


まだ私が勤め人として東京都心に毎日通っていたころ、

神田神保町という古書街で有名な町の駅の近くに

岩波ホールという岩波書店が運営する独立シネマがありまして、

そこの会員(岩波ホール友の会)になって、

1年くらいそこの企画が新しくなる度に

彼氏(現夫)と映画を観に行っていたのです。 


取り立てて映画好きな2人ではないんですが、

最初に観に行った

イタリア映画字幕6時間ぶっ通し鑑賞が終わった後、

全然縁のないイタリア語がわかるような気がする

脳の勘違いを体験したことに衝撃を受けて、

ここのセレクションする映画観てたら

なんか2人とも頭良くなりそうな気がして

通っていたのかもしれません。

現に良作ばかりでした。

(私らの頭が良くなったかは知らんけど。)


そのピンポイント1年のうちでたまったまやっていたのがコレ。

「死者の書」

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ヒロインの奈良の貴族のお姫様

(藤原南家の郎女、中将姫)の声が

宮沢りえさんなんですよ。

ピッタリ。

深窓の貴族のお姫様ってこんな感じだろうな、っていう

優しい声です。

全体的に静かだったり厳かな雰囲気で、

ストーリーに起伏もないので、

覗きにきたうちの子どもたちは

「つまんなそう」と一瞥。

一応人形アニメーションですが、

プリキュア とか恋にキュンキュンするドラマとか好きな世代が

楽しい場面もワクワクする音楽もありません。


なんでそんなつまんなそうなものを

お母さん眠そうに首横にがくっとなって半目で

わざわざ見てるの?って

思ったに違いありません。

声優陣の語り口が全員α波でてるのか、

観たくて観てるのにめちゃめちゃ眠気を発動します。

(夫に見せたら確実に5分で眠りに落ちます。岩波ホール上映中も寝てました。)


しかし、とにかく、美しい。

私は歴史好きのいわゆる歴女ですが、

奈良時代が好きなんです。

奈良時代の装束とか髪型とか、好きです。

高貴な女性の頭がウサギの耳みたいに2つの輪になっていたり、

長いストールみたいなのをまとっていたり、

ふんわりしたスカート調のものを履いていたり。

ゆるやかに静かに流れる映像の中で眺めているのが、

とても楽しいのです。

原作はとても難解みたいですが

映画もはっきりいって、

話は簡単にはよくわからん、です。

なんでタイトルが「死者の書」なのかも私にはさっぱりです。

でも、いい。

感性に触れる、というやつでしょうか。


DVDで買うほど好きなの?って話ですが、

いや、TSUTAYAにないんですよ。

玄人好みすぎて。

一応探したんですよ、メルカリとかも。

なかったんで、定価で買いました。


でも、今日見て改めてこれは買って良かったやつだ、と感じました。

(家族では私にしか響かないけど。)


15年前の映画をもう一度みたい、と思ったのは、

高知に来てからでした。


高知には、

土佐大津という場所があります。

大津というのは、もともと滋賀県の地名で琵琶湖のほとりですが、

土佐大津は高知市内にある今は住宅と田畑が広がる場所で、かつて本当の海際であり、

平安時代に書かれた土佐日記の作者、

紀貫之もここから船で旅立っています。


その土佐大津が高知で生活する中で身近になってから

「死者の書」に出てくる大津皇子(おおつのみこ)を

思い出したのと、

高知のあちこちに残る地名や古代の人のくらしの跡が、

なぜか私が昔から無性に憧れている

飛鳥、葛城、大和や奈良に近いものを思わせて、

もう一度「死者の書」を観たくなってしまったのです。

土佐大津と大津皇子は

直接は全く関係ないし、何かの役に立つこともないのですが、

私には連想ゲームで不思議な豊かさを運んでくれました。

ちなみに土佐国を守る

土佐一ノ宮である土佐神社の神さまは、

アジスキタカヒコネノカミと

ヒトコトヌシノカミという

2柱の奈良県出身の神様です。

海が近い土佐に来て、海のない大和地方を思う。

古代遠流の地とよばれた場所で、かつての都を思い出す。

私としては、大変不思議な感覚でした。

このことは、また記事にできたらと思っています。

















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