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なんてったってリーダー - MBAリーダーシップ⑤

キョンキョン(小泉今日子)の代表作の一つに『なんてったってアイドル』という楽曲がある。リリース当時のことはわからないが時代を超えた名曲である。アイドルとしてキャリアをスタートし、女優としても活躍、本を出版したりもしている。どの時代を切り取ってもキョンキョンはチャーミングでクールだと思う。個性的だけど自然体で、話すときっと面白い人なんだと思っている。

うんと前の日経の記事でキョンキョンのインタビューが載っていた。

例えば、みなさんがよく私の代表曲に挙げてくださる「なんてったってアイドル」なんて本当に歌うのがイヤでしたから。「またオトナが悪ふざけしてるよ」って。
ただ、客観的に見て「この曲を歌えるのは私だけだろう」っていう自信はあったし、そういう周囲の期待を感じてはいた。だから歌う。なんかいつもそういう感じなんです。自分が主観と客観の2つに分裂していて、同時にまるで違うことを考えている。

日本経済新聞 NIKKEI STYLE 2012年4月2日

やっぱりキョンキョンは面白い人だと思う。
2022年3月にキョンキョンが『なんてったってアイドル』をライブで歌う動画を見たが、心の底から楽しそうで最高にかわいかった。

男性でも女性でも「アイドルになってほしい」と懇願されたら、ほんのり頬を赤らめながらも、大人のあなたは「私には絶対ムリだよ」「歌上手くないし踊れないよ」「売れないよ」「笑い者になっちゃうよ」と思うかもしれない。

もちろん諦めないでほしい。懇願されるということはデビューに値するということかもしれない。

では、リーダーはどうだろう。

例えば、ある会社で新規プロジェクトが立ち上がり、リーダーになってほしいとお願いされたらどうか。認められたと思って嬉しい気持ちになるかもしれない。あるいは、面倒な仕事に巻き込まれそうだと躊躇するかもしれない。荷が重いと感じる人もいるだろう。私がリーダーだなんて気恥ずかしいと思う人もいるかもしれない。
私が通うオハイオ州立大学MBAのリーダーシップのクラスでは、リーダーになりたくない人のその理由を考えた。
以下のとおり。

<リーダーになるのを躊躇う理由>
■何をすればいいかわからない。(内)
■チームをリードする忍耐やエネルギーを持ち合わせてるだろうか。(内)
■必要なリソース(人、技術、予算、時間)がなさそうだ。(外)
■他の人のほうが適任だと思う。(外)
〇楽しくなさそうな仕事だな。(内)
〇違うことに時間を使いたい。(内)
〇これから待ち受ける困難に見合うほどの十分な報酬ではない。(外)
〇他の人が私をリーダーとして認めないかもと不安になる。(外)

教授は■と〇のグループに意図的に分類し、それぞれの性質を問う。
〇は「モチベーション」、■は「能力(ability)」に係わるという。
納得感はある。
私が思うに人には様々な感情があるので、この2つにパキッと分けると現実の世界では失敗しそうだけど、他者の考え方に寄り添うときにこの考え方を軸として活用すれば便利だろうと思う。
これを軸に考えればつまり、リーダーになるのを躊躇するのは「自分にできる気がしない(能力)」のか「やる気になれない(モチベーション)」か、もしくはその両方だという。そう言われるとそりゃそうか、とも思う。

リーダーの役割を担う以外にも、新たな仕事を頼まれると身構える人は多い。自分がやるべきことなのか、自分にできるのか、と。人を動かすのは難しい。

翻すと人を動かすにはフォロワーの「モチベーション」と「能力(ability)」に働きかければいいということだ。また、この二つがどこから来ているのかという観点でもう一段階分解すると、それぞれについて、人の内側から出てきたもの(あるもの)と、外部環境によってもたらされたものがある。上述の<リーダーになるのを躊躇う理由>の各項目に「(外)」と「(内)」と記載したが、この分類を意図したものだ。
特に人の内的モチベーションに働きかけることができれば、期待以上の活躍を自動的に引き出せてリーダーの仕事が減る。
つまり、リーダーの最終目標は内的モチベーションに上手く作用するということだが言うは易しである。

ここまで来るとリーダーシップ理論の輪郭が見えてきて、過去のリーダーシップ経験とも往来できるようになった。
オハ大MBAのリーダーシップのクラスは、この4つ(上表)を軸に議論が展開する。影響力を行使するためのテクニックを学ぶ。

キョンキョンが『なんてったってアイドル』を歌ったとき、「歌えるのは私だけ」(能力(内))と思ったわけで、「歌うのは嫌だった」けど「周囲の期待を感じてはいた」(モチベーション(外))と言う。
時代を経て2022年のキョンキョンは『なんてったってアイドル』を歌うことについての内的モチベーションが上がっていたように感じた。

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