介護福祉施設での感染対策【とりあえずこれだけ!感染講座】
今回のポイント
施設において感染対策は3つの観点から重要である
入所型施設では、感染が一気に広がってしまう
通所型施設では、感染症が持ち込まれるリスクが非常に高い
小児の施設はより厳重な対策が必要
マニュアルを作り、広め、更新することが大切
感染対策の基本
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施設
「施設」と言ってもいろいろな施設があります。デイサービスなどの通所型、その中でも放課後等デイサービスなどの小児対応施設、特別用養護老人ホームなどの入所型などがそれにあたります。こういった施設では以下のような感染症に注意する必要があります。
なぜ感染対策が必要なのか
これらの施設ではどうして感染対策が必要なのでしょうか。なかなか見えづらい部分です。
まずは当たり前ではありますが、利用者の命を守ることです。これらの施設にいる利用者の多くが高齢であったり、基礎疾患があったりするなど感染するリスク・感染により状態悪化するリスクがともに高いです。
次に、感染拡大を防ぐことです。こういった施設は例えば結核のハイリスクグループであると言われています。また、狭い空間での共同生活であったり、自分で感染予防行動を取ることが難しかったり、慢性疾患の存在により感染の症状が顕在化しづらいなど、あらゆる感染症の感染のリスクが高い集団であるといえます。
そして、経営上の問題です。利用者が感染にかかると入院するなどして利用が停止になり収入減になります。そして職員に広がり働く人員が足りなくなり、その間にも利用者に広がりケア量が多くなっていく…おそらくどの施設も経験したことがあるぞっとする出来事かと思います。これも適切な感染予防によって防げる可能性が高くなります。
施設における感染管理の特徴
これらの施設での感染管理における特徴としては、「感染の発見が重要であるが難しいこと」と「設備的、物的、人的な資源が少ないこと」が挙げられます。
感染の発見に関しては、感染症の症状に気付きいち早く発見することが何よりも重要です。感冒症状や消化器症状を見逃さず、利用停止や適切な感染対策を取ることで感染の拡大を抑えることができます。しかし、病院のように血液検査やレントゲン検査のデータがあるわけではありません。こういった施設でこそ、フィジカルアセスメント能力が必要とされます。
資源不足に関しては、設備的・物品的な不足は単純に病院よりも検査設備であったり、PPEなどの感染を防ぐ物品が不足している、コスト管理などにより使用しづらいことが挙げられます。そして人的な資源不足というのは、そもそもの看護師の配置数が少ないこと、感染に詳しい看護師が少ないこと、知識のアップデートがされづらいこと、相談できる相手がいないことなどが挙げられます。
施設ごとの特徴「入所型施設」
入所型施設の特徴は居室と共用スペースが近いことです。なので感染が起こった場合に感染者と非感染者の距離がどうしても近くなってしまいます、また、入居されている方には認知症などにより自ら感染予防行動を取ることができない方も多くいます。つまり、感染が一度起こってしまうと広がるリスクが非常に高いという特徴があります。
よってこのような施設では何よりも「持ち込まないこと」が大切です。入居者の多くは施設外に出ることがないため、感染症は持ち込まれることが圧倒的に多くなります。なので出入りする人は必ず健康確認を行い、しっかりと手指衛生を行い、必要であればマスクを着用することが必要です。もちろん職員も同様です。
そしてもう一つ、「早期発見」も非常に大切になります。感染症を発症した状態で狭い共有空間にいればすぐに感染は広がってしまいます。なのでできるだけ早く感染症の兆候を発見し、対策を行うことが大切です。そのためには起こりやすいとされる感染症の知識と、アセスメント能力を常にアップデートしておくことが求められます。
施設ごとの特徴「通所型施設」
通所型施設の特徴は、とにかく人の出入りが多いことです。入れ代わり立ち代わりいろいろな人が訪れ、いろいろな病原性微生物をばらまき、施設内のいたるところにに付着させていきます。
ということはやはり大切なのは「持ち込まないこと」です。入所型施設と同様に健康管理、マスクの着用、手指消毒の対策が非常に有効です。とくに利用前の健康確認は入念に行い、症状があるのに利用している、ということのないようにしましょう。
そしてもう一点、環境清掃が大切になります。いたるところに付着した病原性微生物をできるだけこまめに消毒することで、伝播を防ぐことができます。「高頻度接触部位」とよばれる、机の上、ドアノブ、電気などのスイッチやリハビリおよびレクリエーションの器具などを、時間を決めてアルコールで清拭するとよいでしょう。
施設ごとの特徴「小児対応施設」
小児対応施設も基本的には上記の対応を行えばよいのですが、小児ならではの特徴もあります。小児は基本的に自ら感染予防行動を取ることができません。小さいお子さんだとマスクを付けることも困難でしょう。小児に対してはなかなか決まった対応というのを決めることが難しい場合があるので、その都度相談し、可能な対策を取っていくしかないでしょう。
小児特有の対策として、床の清掃が非常に大切になります。症には大人と違って床で過ごすことが多いです。しかし床というのは非常に多くの病原性微生物で汚染されています。唾液や吐物で汚染されたとき、利用児童の転換時、終業時には床面を清掃し、できれば次亜塩素酸ナトリウムなどで消毒することが好ましいです。
また、職員が気をつけるべきこともあります。まずは麻疹、風疹、水痘、流行性耳下腺炎などの流行性疾患に対して抗体を獲得しておくことです。できれば組織として抗体検査とワクチンの接種をサポートするような仕組みがあることが好ましいです。次に、業務中及び日頃の感染対策はより厳重に行う必要があります。小児対応施設の利用者は重篤な基礎疾患があることが多く、例えば大人が軽い風邪症状で済むRSウイルスなどに感染すると命に関わります。上記にも繰り返している持ち込まない対策をしっかり行いましょう。
まとめ
結構長くなってしまいました…
最後にもう1点お伝えしたいのはマニュアルの大切さです。
こういった施設では感染対策の考え方に慣れてない職員や、看護師ではない職員も多く存在します。
見れば誰でも同じ動きができる、何かあったときにどうすればいいかわかるそんなマニュアルを作成しておきましょう。そしてマニュアルの存在を全職員にアピールすること、定期的に更新することを徹底することで、施設の感染対策はより良いものになっていくでしょう。
もしマニュアル作成などの際に相談する先がなければ、ぜひご相談くださいね。
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