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祖母と母の死を、「夢」で察知した?

私は霊感は一切無く、むしろ鈍感な方。怖い話や不思議な話は大好きでも、幽霊も占いも宇宙人も信じないタイプ。

そんな私だけど、2回ほど夢に家族が出てきて亡くなった不思議な話。これは単なる偶然?それとも「虫の知らせ」というやつ?

ちょっと長いので、お時間がある方は読んで下さいね。


あれは私がまだ小学4、5年生の時。

母方の祖母が意識不明だと父から聞かされた。両親は離婚していて、私は父の方にいたので、母や祖母に会うのは年1、2回。おばあちゃんはいつからか、呼吸器をつけた生活を送っていた。酸素ボンベを引いて歩く以外は、元気だったのに。

病室では親戚と母がおばあちゃんの寝ているベッドを囲んでいる。部屋は薄暗い。みんな項垂れて、言葉を交わさずにおばあちゃんを見下ろしている。ただならぬ雰囲気に怖くなり、久々に会えた母に抱きついた。眠っているおばあちゃんの顔を親戚たちの間から覗き見る。彼女の胸が上下するのを見て、安心したことを覚えている。

その夜は母の家に泊まった。そこで「おばあちゃん、もうすぐ亡くなるの」と聞かされた。幼かった私はこの前ようやく、親の離婚がどういうことか分かったのに、「死」がどういうものなのかなんて理解できなかった。

 死ぬって何なんやろう。死んだらどうなるんやろう。

ふと気がつくと私は雲の上にいた。綿飴のようなピンク色のモヤがあって、遠くはハッキリ見渡せない。でも青とピンクの空はどこまでも続いていることが分かった。雲はふわふわしているし、モヤも何だか心地よかった。遠くには誰かがぽつんと立っている。気になってそちらに向かう。といっても、風船みたいに体が軽やかに浮かんでいく。

手を伸ばせばその人に届く距離まで近づくと、それ以上行けなかった。目の前に透明な壁があるような感じだった。そこに立っていたのは、呼吸器をつけていないおばあちゃん。

 「おばあちゃん元気やん!死ぬなんて嘘や。」

微笑みを浮かべたおばあちゃんは、何も言わずに私の顔を見つめている。おばあちゃんの後ろには、どこまで続いているのか分からない7色の大きな虹がかかっている。思わず見惚れてしまう。「おばあちゃん、私もそっちに行くね!ちょっと待ってて。」そう言って、足を踏み出そうとした。

 「だめ。戻りなさい」

ずっと続いていたはずの雲が、私とおばあちゃんの間にだけ切れ目がある。おばあちゃんからは微笑みが消えて、強い拒絶を感じた。そこでテレビのスイッチを切ったみたいにして、目の前が真っ暗になった。

次に見たのは、母の家の天井。枕元の電子時計の明かりしか見えない。時間は、夜中2時半。「何、あの夢」と寝返りを打つ。

目をつむった瞬間に家の電話がけたたましく鳴った。心臓がバクバクする。母が眠そうに起き上がり、電話を取りに行く。ギュッと目を閉じて、頭までふとんをかぶる。数分で戻ってきた母は、私を優しく揺り起こす。その声は穏やかだった。

 「まいちゃん…おばあちゃんが亡くなった。病院行くから支度して」
 「…うん。」

夢のエピソードはハッキリ覚えているのに、そこからお葬式をして父と帰った記憶がない。おばあちゃんが死んだのは、夢なのかなと今でも思うことがある。


その次に夢に現れたのは、実母だった。2013年、母は珍しい脳の病気になった。余命1年と宣告。離れて暮らす私は、母の世話を兄たちに任せていた。

弱っていく母を目にするのも怖かったし、バッタモン家族は崩壊寸前でボロボロ。母のこと、バッタモン家族、2つの掛け持ち仕事で、私の頭は正常な判断ができていなかった。ほとんどお見舞いに行けなかったけど、私が行くと、母は子供みたいに笑顔を輝かせる。それが罪悪感を刺激する。

母は闘病10ヶ月目あたりだったかな。その日も私は2つの仕事をこなして、日付が変わる頃に帰宅。父や継母の小言を聞き流しながら、自室のベッドに倒れ込むようにして眠りについた。

母の病室の入り口を背に立っていた。彼女はいない。買いたてのシャツみたいな真っ白の病室、窓からは爽やかな風が入ってきて、カーテンが揺れている。心地良い。

「まいちゃん、来てくれたんやね」と、車椅子に乗った母が部屋に入ってくる。前会った時よりも痩せて、笑顔も、心なしか弱々しい。

直視できなかったから今思い出したかのように、母の好きなハーゲンダッツアイスクリームを机に出した。一緒に食べて、楽しい話をした。どのくらいそこで過ごしたかは分からないけど、私は腕時計を見た。そろそろ行かないといけない。帰り支度を始める。私は惜しむように病室を出ようとしたら、背中に声がかかる。

「今度はいつ来てくれる?」
「…わからへん」
母の顔をチラっと見た。
「そっか。じゃあ、待ってるね。」

また胸がチクッと痛んだ。逃げるように病室を後にしてしまった。その時のママの笑顔は、誰よりもキレイだった。

アラームの音で、現実に引き戻される。

「多分、ママはもうすぐや…。明後日の休み、会いに行こう」。

仕事中は、母へのお土産の品を考えていた。お昼の休憩の声がかかる。休憩室に行き、お弁当を開いてホッと一息つく。携帯を見ると、兄たちからの電話が数十件。

用件は分かっていても、兄たちに掛け直す。心臓がバクバクしている。数コールで兄が出た。もしもし、を言う隙もなく兄が一言発する。

 「おかん、亡くなった…」

母の夢の鮮明さはおばあちゃんよりも薄いけど、お葬式をして帰ったところまでの記憶はある。だけど母の死に顔は思い出せないし、家に帰ってきてから数日間の記憶がない。

そして今もハーゲンダッツを見ると、胸が痛む。


祖母と母と結びつきが強かったわけじゃない。でもなぜか2人とも夢に現れて、その後すぐに訃報を聞いた。

この出来事で、小さな直感も信じることにした。

目に見えない「直感」も、幽霊やスピリチュアルと同じくらいあやふやなもの。

「直感」を言葉にするとしたら、初めて行く場所で「なんか怖い。不気味」と体が勝手に拒絶する感覚と似ているかな。自分が危機にさらされた無意識の中にある記憶に基づいて、心が反応するんやと思っている。

それからは何となく心が強く反応することには、正直になって行動するようにしている。

※普段は夢に現れない人が登場したら怖くなるけど、父方の祖母が亡くなった時は夢を見なかったから、不思議な夢は偶然なのかも。


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