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娘に真珠を贈る日。

母から真珠をプレゼントされた日の気持ちを、今でも鮮明に覚えています。「そろそろ本物を持っておいたほうがよいから」と立派なケースに入った真珠のネックレスとピアスのセットを渡されたとき、大人の女性の世界に歓迎されたような気がしました。娘が生まれたとき、私もいつか彼女に真珠を贈ろう!と、楽しみにしていたのですが・・・。その日は予想外に早くやってきた、という話。

母から私へ。

社会人になったばかりのある日。「知り合いの知り合いに、真珠を卸している人がいてね。安かったのよ」と、母から真珠のアクセサリーをプレゼントされました。立派なケースをそっと開けると、そこには白く輝く真珠のネックレスと、シンプルなデザインのピアスが。証明書と掃除用のクロスもあり、ビンビンに漂う“ホンモノ”感。

「真珠は、冠婚葬祭、いつでも使えるから。結婚式のときも、お葬式のときも使っていいのよ」というのは、当時の私にとっては新知識。「そろそろ自分で本物を持っていたほうがよいからね」。

なるほど、そうか。これから自分は自分のパールを着けて、大切な人生の節目を迎えていくのか。そんな年齢になったのか。と、急に大人の女性になったような気がしたのを、今でも覚えています。

女の子を女性にする。

これぞ、パールの力。

私も娘が生まれたら、いつの日か真珠のアクセサリーをプレゼントしよう。大人の女性になったね、という意味を込めて。

そう思っていたのですが・・・。

私から娘へ。

真珠プレゼント大計画の雲行きが怪しくなったのは、彼女が3歳になって半年が経った頃。世間のお子さんがアンパンマンに興味を持つ年頃に、我が家の娘が興味を示したのは、真珠でした。

それも、真珠の養殖への関心が、半端ない。

きっかけは絵本でした。海賊団が大きな貝を拾い、真珠のお宝が入っているかも?と喜ぶという1シーンから、彼女の真珠養殖に関する貪欲な知識習得が始まります。

真珠はアコヤガイの中にカクを入れてできるんだよ、1年から2年海で育てるんだよ、たまに貝についた貝をおそうじしないとエイヨウが逃げるんだよ、真珠を取り出したらカイバシラは食べれるんだよ、ミキモトコウキチさんが真珠の王様なんだよ・・・と、日増しに増えていく真珠の知識。

折しも、時は2020年。通っていたプリスクールはしばらくお休みとなり、お友達と会えない状況下で、彼女のガラパゴス進化は加速します。

紙皿とピンポン玉で阿古屋貝らしきものを作ってあげると、真珠の核入れ施術ごっこ、収穫ごっこなどで遊ぶように。

海に行けば貝を拾いまくり。YouTubeはあまり見せていないのですが、限られたYouTube Timeでは「真珠 養殖」で検索した動画を、片っ端から鑑賞。

4歳になっても、真珠熱は治らず。そんなに好きならばと、真珠取り出し体験ができるお店に連れていくことにしたのです。

家から車で1時間。カリフォルニアのレドンドビーチにある真珠店で、貝の選定から真珠の取り出し、査定、ネックレスを選び、作るところまで、一気通貫で体験させたのですが・・・。

娘の意外な反応。

飛んで、跳ねて、キャッキャッと大喜びすると思っていたのですが、彼女のリアクションは予想に反していました。終始静かで、真顔だったのです。

あとで聞いたら、「まさか本当に貝の中から宝物が出てくるなんて。きっとウソなんだと思ってた。本当に真珠が目の前で出てきたから驚いた」と言うではありませんか!

彼女の中で、貝から真珠が出てくることは、ユニコーンに会ったり、レインボーに乗ったりすることと、同列だった。

信じたい、けど、現実ではないかもしれないと、うっすら気づき始めている。そんなフシギでワクワクする夢の世界の出来事が、目の前で現実になった瞬間だったのでした。

私の想定より、ざっと20年ほど早く訪れてしまった「娘に真珠を贈る日」。
でも、ファンタジーとリアリティがふんわり同居する4歳の彼女に真珠を贈ることができて、本当に良かったな。

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