角を守る豚。
子供が生まれて、自分の知らない一面(あるいは十面くらい)を知りました。そのひとつが、「痛い想像が止まらない」というもの。
こんな高さからジャンプしたら、足が折れるな。
この角はちょうど目の高さにあるから、いつか刺さるだろう。
いま棚が倒れたら、ペチャンコになってしまうぞ。
・・・という具合に、最悪なパターンのケガを想像してしまう。
イタイのイタイのが、頭の中から飛んでいかないのです。
海外ドラマ『THIS IS US』に、こんなシーンがあります。
主人公のランダルとべスの夫婦は、何か心配なことがあると「起こりうる最悪なパターン」を想像し、お互いに発表し合います。
最悪の最悪、もうこれより悪いことは起こり得ない!というボトムラインを知ることで、落ち着きを取り戻す・・・というのが、狙いのようです。
私の場合、ひとりで「最悪パターン」を想像し、そのあまりに酷い想像にひとりで悶絶。「イタイのイタイの飛んでいけ!」と、想像した痛みを頭から振るい落とすのが、大変です。
角が怖い。
特に想像を駆り立てるのが、尖った角。
テーブルの角、椅子の角、テレビ台の角、角、角、角。
「子供に刺さるんじゃないか」と思って周りを見回すと、尖ったものばかりが目についてしまう。
現在の家では、ダイニングテーブルの角が一番のデンジャースポットだと捉えています。廊下から直角に曲がるカタチでダイニング・リビングエリアに入るのですが、なんとここに、絶妙な高さで、テーブルの角が待ち受けているのです。
この角に対する私の想いを知ってか、知らずか、廊下からリビングに向けてダッシュで遊ぶ子供たち。あろうことか、横を向いたまま走ったりするので、むしろ刺さりに行っているのではないかと、怪しむほど。
もちろん、刺さってほしくはないので、角に保護カバーをつけるのですが、そのたびに取られてしまう。
白のもの、透明のもの、ミッキーマウスの手の形をしたもの。どんな保護カバーをつけても、わりとすぐに取られてしまい、しばらくいたちごっことなっていました。
生贄(いけにえ)にされた豚。
どうにかして保護カバーを固定したい!
その一心で試行錯誤した結果、唯一成功した事例があります。それが、「小さなぬいぐるみを角にテープで固定する大作戦」です。
使わなくなったベッドメリーについていたピグレットのぬいぐるみに、白羽の矢が立ちました。
「この豚さんはね、ここにいなきゃいけないの。この角が豚さんのお家だから、取らないでね」なんて、適当なストーリーをつけて説明したところ、大成功!
過去に採用したどの保護カバーよりも長く、我が家でもっともデンジャラスな一角を守ってくれています。
イタイイタイは、突然に。
このおもちゃは尖っているからどかしておこう、椅子が倒れたら危ないから押さえておこう・・・と、つい先回りしてイタイイタイを回避してしまう私。「あー、こりゃ危険だわ」なんて、買ったばかりのおもちゃをクローゼットにササッと隠した経験も、少なくありません。
しかし子供たちは、予測を上回る方法でたんこぶや擦り傷をつくってくる。何もない床ですべってころび、壁に頭から突っ込み、よくわからない隙間に挟まっている。
きっと、どれだけ先回りしても、どれだけ守っても、守り切れないのでしょう。
それでも私は、子供たちのイタイイタイを1個でも多く回避したくて、「角を守る豚になりたい」と切に願うのです。
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