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「ひとり人事はつらいよ…」ーー人事部門の適正人数とは?

採用、評価、報酬、労務管理…。ベンチャーやスタートアップの人事担当者は、驚くほど幅広い業務をひとりでこなすことが求められます。

「こんなに多くの仕事を、ひとりで回すなんて本当に無理!」

そう叫びたくなる瞬間、あなたにも心当たりがあるのではないでしょうか?

しかし、営業や開発とは違い、そう簡単に増員できないのが人事部門の現実です。

少ない人数で運営するのが当たり前と思われがちですが、果たして人事部門の「適正な人数」とは、一体どれくらいなのでしょうか?


「100人に1人理論」ーー人事部門の適正な人数割合


人事部門の適正な人数に関して、ひとつの説として「社員数100人に対して1人の人事担当者が必要」という考え方があります。これを個人的に「100人に1人理論」と呼んでいます。もちろん、この適正人数は、企業の事業内容や規模、そして人事業務の範囲や複雑さによって異なることが大前提です。

さて、この考え方は感覚的なものに聞こえるかもしれませんが、実はデータ的にもそれなりの信憑性があると考えられます。例えば、少し古いデータにはなりますが、リクルートワークス研究所の調査によると、全体の平均として人事部門の人数が正社員全体に占める割合は約1.9%*1。

また、世界最大のHR関連団体であるSHRM(Society for Human Resource Management)も、企業規模ごとに担当する社員数の目安が示されています。具体的には、50人未満の企業では1人の人事担当者が20~30人の社員を担当し、200人以上の企業では75~100人の社員を1人で見るとされています。これは、まさに「100人に1人理論」に近い考え方です*2。

もちろん、社員数が増えるにつれて、業務の標準化や効率化が進み、経済性が働くため、大規模な企業では人事部門の人員比率が低くなる傾向があります。ただ、この「100人に1人理論」を基準にして人事の人員計画を立てるのは、特にベンチャーやスタートアップで奮闘するひとり人事の皆さんにとって、人事組織を拡大するときの有効な目安となるでしょう。


「人事を通じていかに企業価値を創出するのか?」── 適正人数を論じるよりも大事なこと


さて、この「100人に1人理論」ですが、海外拠点では途端に無視されることが多いのも事実です。

海外拠点のマネジメントを任された方や、海外赴任を経験された方は思い当たる節はないでしょうか。日本では「人事は忙しい」「人員をもっと増やすべきだ」と主張していた人たちが、いざ海外拠点となると、「本当に人事担当者は必要?」と意見を変える光景です。

こうした事態が起きるのは、なぜなのでしょうか?

理由はさまざま考えられますが、ひとつ思い浮かぶ理由は、人事の仕事が給与計算や採用業務のオペレーション的な仕事だと見なされ、他の社員でも兼任できるという認識が広まっていることでしょう。そして、その背景には、(自戒も込めて)人事部門が自社内で十分な価値を発揮できていないことも、こうした状況に拍車をかけているのかもしれません。

結果、しばしば見られるのが、人事の仕事が「なんとなく適当に任せられるもの」として扱われ、適材が配置されず、価値が十分に発揮されないという悪循環です。たとえば、パフォーマンスを発揮できていない社員、配属先が見つからなかった新入社員が「とりあえず人事に異動させるか」という形で配置され、思うように活躍できずに、結果として「ほら、やっぱり人事は役に立たない」という評価を受ける。

本来、適性のある人材を配置できれば、社内に対するインパクトも与えられるにも関わらず、この負のサイクルが繰り返されることで、その会社での人事の重要性がますます軽視されてしまいます。

しかし、現代は経営戦略や製品・サービスだけで差別化を図るのが難しい時代であり、最後に差をつけるのは人と組織です。

「人事部門の適性人数は?」という議論を始めると、どうしても「人事は本当に必要かどうか」という論点にたどり着いてしまいますが、その議論はもはや結論は出ており、その先の「人事を通じていかに企業価値を創出するのか」という視点で議論を進めることが重要だと考えます。


(参考情報)
*1 リクルートワークス研究所「企業調査の担当者からみた、人事部のこれから」https://www.works-i.com/column/works/detail005.html(2024年9月30日アクセス)

*2 CHANGE JOB「企業における人事部の適正人数を考える」https://lmginternational.jp/humanresourcemanagement/(2024年9月30日アクセス)

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