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うまれてはじめての「絵本」の思い出
人生において一度だけ、絵本を作ったことがある。
幼稚園の頃だ。毎年秋恒例の「てんらん会」だったか「はっぴょう会」だったか、子どもたちが作ったものを園内に並べて、子どもの縁者が大挙して押し寄せる、そんな催しだったように思う。
私は、季節にまつわるストーリーにしようと思った。「春はぽかぽか、おひさまにこにこ」「夏はカミナリ、がらがらどっしゃん」的なやつ。クレヨンでごしごしと色をつけて、ほくほくと先生に持っていくと、その先生は言った。
「これじゃあ、「おてんきの話」じゃないの!!」
意気消沈って、あのことを言うんだなあって思う。ポイッと絵本を突き返された私は、すっかりテンションがしぼんでしまって、そのまま、絵本を提出せずに「てんらん会」当日を迎えた。
その日は、遠路はるばる、母方のおばあちゃんが来てくれていた。なんだか妙にうれしくて、彼女の手をひっぱって、先生のもとへつれていった。先生がにこにこと、おばあちゃんと挨拶している。まるで二人を自分が引き合わせたみたいな、偉業を成し遂げたみたいな気持ちになってると、先生が言った。
「しづちゃんの絵本は、どれだっけーー??」
瞬時に私は固まった。おばあちゃんが見ている前で、なんて返事していいのかまるでわからず、えへへ、えへへへと身をよじらせる。でもさあ、今思えばですよ、
先生、知ってたはずなんよね。私が絵本出してないこと。
怖ぇよう。大人って、超怖ぇ。
私がこの人生において、なるたけ「子ども」と関わらずに生きてきた理由はそのへんにあるように思う。自分の、小さな小さな、何の気なしのイジワルが、何十年にわたって子どもを刺し貫くことがある。じゃあどうやって子どもと関わったらいいのか、私にはさっぱりわからない。自分の胸に巣食う1ミリ大のイジワルさえ凶器に変わるなら、私たち大人は、どれだけ聖人でいなくてはいけないのか。
「子ども」と関わりながら生きている、すべての大人に敬意を表したい。そして子どもたちよ、彼らから受け取ったものを土台に、これからの世界を、どうぞよろしく。(2021/02/11)
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