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エレカシ宮本からプロポーズされ続けた朝
もやっとすることが起きたとき、文章にすると遠い彼方へ消えていってくれることがある。今日は、そんな効果をあてにしてのnoteである。
「コロナ禍だからさよなら」をした。
長い時間のつながりだった。お互い、まったく違った角度から世の中を見つめているので、ささやかな近況報告ひとつとっても新鮮だった。へえ、そんな考え方があるんだ!って目からウロコが落ちる。落ちたウロコを集めたら、どれくらいになっただろう。互いにあまりにもウロコが落ちるので、いちいち顔を合わせて語っては、またウロコを落としあった。
コロナが猛威を奮ってからは、さすがに会うことも少なくなった。たまにLINEで近況を報告し合ったが、気づけば言葉を投げるのはいつも私からで、ためしに投げるのをやめてみたら、パタリと、見事なまでに音信不通になった。
今この瞬間、目の前にある人やものに対応するだけで精一杯なのだとその人は言った。だから、今この瞬間、目の前にいない私に、興味や心を、注いだり砕いたりする余裕はまるでないのだと。
それぞれ忙しくて、いっぱいいっぱいになることは、これまでもたくさんあった。それでも長年続いてきたのは、そうか、ただ単に「定期的に会っていたから」だったのだ。コロナ禍で、相手の生活圏から私が消え、ついに私が「目の前の人」ではなくなった。それが、すべてだ。
その晩、不思議な夢を観た。エレカシ宮本浩次に延々とプロポーズされ続ける夢だ。あろうことか私はそれを断り続けていて、でも彼は一向にメゲる気配がない。そのあまりのポジティブさに、私はげらげら爆笑しながら、それでも断る理由を汗だくで並べる。いやちょっとマジでありえないです、お仕事もお忙しいでしょうし、もっとお近くのどなたかをお相手にされたほうがいいんじゃないですか? けれど私の言葉は1ミリグラムも彼に届かない。頭を掻きむしりながら、「うん、まあそれはそれとしてさ!」。いや、全然聞いてなかったでしょ今。
目が覚めて、ほんの一瞬で、そういえば私はひとつ、大きなさよならをしたばかりだったと思い出す。夢の中とはいえ、一時、忘れてたことに、まずびっくりする。そして急に心もとなさが胸を占める。……そうか。会ったこともないエレカシ宮本からプロポーズされながら、私の胸にあったのは「安心感」だったのだ。この人は、ずっと私の「目の前の人」であろうとしている。コロナ禍なんかで勝手に「目の前の人」から除外されたりしない。そうか、ケッコンって、「ずっと目の前の人でありつづける」という約束のことだったんだ。
ほう、とため息をつきながら、でもやっぱり私にはそんな約束ありえないなと我に返る。人は、こんなにもあっけなく「目の前」からいなくなる。こっちの意志などおかまいなしに。いなくなりたくなくたって、いなくならさせられちゃうのだ。良くも悪くも、あなたの前からいなくならないだなんて、誰にも誓えないと思う、そんなこと。
週明けから勤め人生活が始まる。だからここ数日は早起きの練習をしている。時計はあまりにもちょうど良すぎる時刻を示していた。よし、起きて、このことを書いておこう。そうして書いたのが、このnoteである。(2020/07/30)
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