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『saltburn』シナリオ、演出の技術をもう少し頑張れば大仕掛けの効果は倍増していた、理由を具体的に。

音楽はオーケストラ、
画角はスタンダード、
文字はフラクトゥール、
と、
大風呂敷を拡げるだけひろげる。

オックスフォードの新入生の主人公は親がドラッグの売人。

【持たざる者】が、
【持つ者】ばかりの、
オックスフォードのキャンパスでさまようのを繊細風に雰囲気だけで描いていく。
ここ、雰囲気だけで、
細かく描写できないのは、
前作同様。
オリバー目線でカットを構築できていない、
オンサイド、オフサイド、
フィリックス目線、父、母、混同していく。

サッカーやラグビーでいう【オフサイド】
観客の意識を【オンサイド】に入れ続ける。
そのためには、
カメラはオリバー向けか、フィリックス向けか、
同じセリフでも話してる人向けか、
聞いている人向けか・・・
どう編集するか・・・
(これが気にならない、
または、
意識して調律しながら、
演出できないというのは、
プロの監督、脚本家でも少なくはない。
そういう意味では、読み手をオンサイドに入れ続ける1人称語りが多い小説より実は難易度が高い。
音楽でいうと和音、コード進行、
漫才でいうとボケとツッコミの、
ツッコミをオンサイドに入れる、のが近いか。

ボールのオフサイドラインを観客に意識させる、
または、
物語を司る理(ことわり)で軸をつくる事を、
無意識的に、意識的に仕組んで、
観客が(の)息を飲んだり、心臓をわしづかみしたりしていく・・・)

ロザムンド・パイクに象徴させているようだが、
登場人物、シナリオ全体にも血が通っていない。
事は色々と起きるが、気持ちの描写をオリバーでつなげる演出になっていないのが残念。
(そういう作品ではない、、、ではなく、そういう作品だからこそ!)

風呂水を啜るようなおもしろい文脈で土とからむ、
タバコの煙を吹きかける、
裸踊りonベクスターまで【オフサイド】で繋がっている・・・
バリー・コーガンのすばらしい雰囲気に頼り過ぎずに各キャラとの関係を構築していれば・・・更に残念。

【持たざる者】の物語。

『テオレマ』『しとやかな獣』『パラサイト』等、
持たざる異物が、
持つ者の意識、プライド、秩序を崩壊させていく類似作品は多数あるが、
傑作の手前まで来ていて、
サスペンス的には高評価は多いだろう・・・少し残念。

【蛇足】
映画や小説で伏線を張っているだけで、
作品が過大評価されている。

伏線、英語でforeshadowingって言われたりするが、
要するにヒントの事。

伏線はヒント。

無駄なヒント、わかりやす過ぎるヒント、
ヒント無しで裏でこんなんやってましたー等々、
ダメなヒントはたくさんある。

本作の場合はヒントの出し方がうまくない。

うまいという人も一定数はいるだろう。

絶妙なヒントこそが、
いい伏線。

【蛇足の蛇足】
フィリックスの父、
日本語吹替が、
『リック・アンド・モーティ』のマッドサイエンティスト、リックじいちゃんと同じ。

素晴らし過ぎるだけに、オエ、ってなる。

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