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エッセイのご紹介419 わたしの処世訓(小黒恵子著)

 こんにちは。小黒恵子童謡記念館です。

 今までは、神奈川新聞のリレーエッセイをご紹介してきましたが、今回は、神奈川新聞のサンデーブレイクに掲載されたエッセイをご紹介いたします。

 記念館には、多くの自筆の原稿が残っているのですが、今回のエッセイは掲載文しか残っていないので、掲載文をご紹介します。
 詩人の書いたエッセイ、独特の言葉選び等を感じていただけると幸いです。

エッセイ タイトル一覧(小黒恵子自筆の原稿より)

「わたしの処世訓」
            神奈川新聞 平成6年8月7日 サンデーブレイク
                      詩人・童謡作家 小黒恵子

 遊び上手 口説き上手 飲み上手 聞き上手 断り上手 逃げ上手等と言う言葉を聞くことがある。
 若いころの遊び上手や口説き上手は、色と笑いがあって楽しいものだ。
 また飲み上手や聞き上手の人には、成功者が多いと言うのも肯(うなず)けることだ。断り上手や逃げ上手、これは苦い経験を通して得たものだ。社会生活を営んでいる以上は、断り上手や逃げ上手でないと自分を滅ぼしてしまう。
 例えば私の経験からある日突然、日ごろ交信もない遠来の客が訪ねて来た。昔話に花を咲かせていると、思いもかけない火の粉がふりかかってきた。訪ねてきたのは借金が目的だった。
 この類(たぐい)の話は意外と中高年に多いのも、バブル以降の年齢的な就職難の社会現象かもしれない。無計画による収入と浪費のアンバランスで破綻(はたん)を招き他人に迷惑をかけるのは、社会生活の失格者であると思う。
 「お金は生きるように、社会のためになる事に使うこと。そして保証人には決してならないことですよ」と、幼いころから母の教えであり遺言であった。
 思いもかけず火の粉が飛んできた時、私は母の言葉を思い出し、すぐにその場でふり払うことを処世訓としている。
 他人に迷惑をかけずに、自分をまもり、平和に生きるには、スマートな断り上手であり、逃げ上手でなくてはならないと思う。

1994(平成6)年8月7日 神奈川新聞サンデーブレイク掲載の掲載文

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 次回も、小黒恵子の神奈川新聞のサンデーブレイク原稿をご紹介します。(S)

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