シェア
小椋 杏
2021年1月17日 22:05
志那子はかれこれ三十年以上、変わらず穏やかにほほえみ続けている。 りん、とちいさく風鈴の音がして、ああそう言えばしばらく軒先に吊るしたままだった、と思い出す。片付けなければ片付けなければとそのままに、つい日が経ってしまった。朝の日課を済ませて立ち上がると足許にイツコが擦り寄ってきた。やって来たときにはまだまだ溌剌としたお嬢さんだったイツコも、今やすっかりおばあさんといった風情だ。朝夕の食事時
2020年6月22日 20:01
わたしのお父さんは、とてもやさしいです。わたしは今まで、お父さんに怒られた記憶がありません。 お父さんについて作文を書く宿題が出たので、どうしてお父さんは、わたしを怒らないのか、お父さんに聞いてみました。お父さんは笑いながら言いました。「おまえは、お父さんが怒らなければならないような、大変なことはしないからね。」 でも、お母さんは毎日わたしを怒ります。お部屋が片付いていない、とか、宿題をほ
2015年3月2日 03:59
真夜中に目が覚める。 きみのことを考える。 ちゃんと眠ってるかな。 幸せな夢を見てるかな。 ━━あたしこのまま、きみに恋をしていてもいいのかな。 大好きで━━大好きで大好きで。 ひたすらなこの大好きが、きみにはきっと届かないのも、解ってる。 解ってるよ。 けど、大好きなんだ。 今夜もまた、目が覚めた。 どうかきみが、温かなお布団と、幸せな夢に包まれていますように。 き