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河川が多い日本は、どのくらいのダム大国なのでしょうか?

「エネルギーよもやま話」では、エネルギーに関する情報をワンポイントでわかりやすくお伝えしたいと思います。
 
こんにちは。エネルギー・文化研究所の前田章雄です。
日本に多くある河川のほとんどに、ダムが設置されています。まさしくダム大国です。
では、ダムによる水力発電は、いったいどれほどの規模なのでしょうか? 詳しくみてみたいと思います。

1.日本の水力発電は、全部で2千基以上もある!


「箱根八里は馬でも越すが、越すに越されぬ大井川」
南アルプスの山々の水を集めて駿河湾に注ぐ大井川は、急勾配で流れてきます。
しかし、江戸時代の大井川は防衛上の理由から、橋を架けるのも渡船も禁じられていました。そのため、人々は危険を冒しながらも、人足による肩車で川を渡っていました。
 
逆説ですが、水量が多く急峻な大井川は、水力発電にむいた川とも言えます。
大井川には多くのダムと15の水力発電所がつくられました。なんと、水量の95パーセントが発電につかわれています。
 
雨水がダムで貯められると、隋道と呼ばれる大口径のパイプで発電所に送られます。発電で利用されたあとは次のダムへ流れていき、ふたたび隋道に送られて発電所で利用されます。

水力発電は、再生可能エネルギーに分類されています。
再エネには太陽を利用するものが多くありますが、太陽エネルギーはエネルギー密度が低いという特徴があります。その薄く広がった太陽エネルギーを集約する装置が、地球には備わっています。

海の水が太陽エネルギーで温められて蒸発し、山で雨となって降り、川となって流れてダムに貯められる。それを利用しているのが、水力発電なんですね。
そのため、水力発電は効率のよいシステムだといえるでしょう。
 

日本は山が多いため、川もたくさん存在しています。
たとえば、東海道新幹線で海沿いの平野部を横切っていくと、大井川をはじめ多くの河川を渡りますので、実感できるかと思います。
その河川のほとんどにダムが設置されています。
もちろん、ダムの水利用途には発電だけでなく、治水や農業用水等の取水目的もあります。
 
発電用途のダムに設置された水力発電は、日本全体で2,000基以上あります。その2,000基余りある水力発電の総発電量は年間900億kWh近くあり、再生可能エネルギーの主力となっています
日本はまさしく、ダム大国なんですね。

2.海外の水力発電事情と、日本を比べてみましょう

ちなみに、世界の再エネの主力は、水力発電となっています。
近年、日本も太陽光発電の設置が急増していますが、水力発電も再エネの大きな割合を占めています。


再エネ導入量が世界1位の中国と2位のアメリカでも、再エネの多くは水力(濃い青の部分)が占めています。
水資源が豊富な北欧諸国やヒマラヤ山脈水系のアジア諸国においても、電力需要の多くが水力発電でまかなわれています。
 
そして、世界のダム(水力発電)は日本のそれと比べても、規模がケタ違いに大きいのです。
世界最大の三峡ダム発電所(中国)においては、ここだけで日本の水力発電2,000基すべてを足したものより多くの実質発電量を有しているのです。その数値、なんと1,100億kWh以上になります。
 
三峡ダムのダム湖は、当然、人工的につくられていますが、琵琶湖のなんと1.7倍もの広さがあります。
中国全土では日本の約7倍もの水力発電をおこない、アメリカやブラジルも日本の2倍以上を発電しているのです。
 
そうはいっても、日本ではあらたなダムを建設することが容易ではないため、いろいろな方策が必要になってくるでしょう。
 だとえば、多目的ダムの水利用途を発電にも利用できるように変更したり、既存のダムをかさ上げして発電能力を上げたり、さまざまな工夫を考えていかなければなりません。
 
また、ダムのような巨大建造物に頼るだけではなく、水路に直接設置する小型の水力発電を増やすなど、日本の風土に合わせた日本ならではの創意工夫が求められますね。
 
 
このコラムでは、エネルギーに関するさまざまなトリビア情報を、シリーズでお伝えしたいと考えています。
次回をお楽しみに。


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