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炎上の本当の恐ろしさ
 例えば、あのいじめ動画の加害者たちがしっかり反省したとします。ちゃんと頭も下げて、心も入れ替えて、勉強も運動も頑張ったとします。その結果、なんと数年後、私立高校の推薦合格を取ることが出来ました。それくらい頑張ったんですよ。そして晴れて合格通知をもらえたその日に……取り消されました。私立高校にこんな電話がかかってきたからです。

「オマエら間抜けな学校だな。あの子、昔ナニやったか知ってる?そんな人間に推薦合格出しちゃうなんて、オマエらいい笑い者だよ……じゃあな」

 そんな電話が1本だけ高校に入り、学校側は慌てて事実確認、間に合うタイミングだったので、推薦合格を取り消したんです。実はコレ、日本の全都道府県で起きているんですよ。
 こういうの、地元の新聞にも絶対載らないですからね。私は実際に日本の全都道府県を訪問しながら、先生方に直接聞きました。コレが起きていない都道府県はなかったんです。もちろん、この●●県でも起きています。

 慌てて別の高校の入試を受け、何とか進学。そして数年後、学校を卒業し、社会に出るタイミングが近づきます。就職活動です。この子たちの仕事探し、就職活動は壮絶ですよ。
 何回面接を受けても、いくら書類を出しても就職できない、内定が出ても取り消される。これのくり返し。アタリマエですね。企業の採用担当者の中には、ネットで起きている炎上の一覧表を「自分で」「個人的に」「手作り」で持っている人がいます。特に地元で起きた炎上事案は、間違って雇っちゃわないようにチェックしているんです。だから採用されないんですよ。彼らは相当な苦労を経て、ようやく仕事を見つけました。

無題

 社会人に出て、恋人ができます。恋人とお付き合いが進み、結婚しようというコトになったので、相手のご両親にご挨拶に伺ったところ、こう言われました。「あなた昔、ネットで炎上させたんですってね。そんな人と結婚させるワケないでしょう」。結婚話が消えてなくなりました。これも実話です。私が知っているのは、ある都市部に住む20代の女性の話。自分の炎上のせいで結婚できなかったんです。芸能界でも、表沙汰になっていませんがタレントさんが1人、自分の炎上のせいで結婚話を失っています。

 コレ、すべて実際に起きたことを、ただ並べてみただけなんですよ。あのいじめ動画の加害者たちは、最悪コレをぜんぶ背負って生きていかなければいけないんです。助ける方法はありません。歯を食いしばって生きるだけです。

世の中はすぐ忘れる
 「……さ、さすがに何年も経てば大丈夫でしょ? ネット炎上なんて、世の中すぐに忘れちゃうんじゃない?」そう言われる方もいます。実はその通り。私もそう思います、忘れちゃいますよ、炎上なんて。ホントです。どんなに派手な炎上も、2~3か月もすれば世の中すっかり忘れちゃいます。そんなもんです。やらかした本人だって忘れちゃうでしょう、でも……
 人間って「進学」「就職」「結婚」などの、人生の大事な場面だけ、その鍵を握る重要人物に、必ずバッチリ、注目されるんです。考えてみてください。自分の親友・家族・親戚、近しい人、昔好きだった人、自分の娘・息子が結婚するとしたら……相手が誰だか気になりませんか?私、自分が誰かを採用するとしたら、絶対にその人のフルネームを、普通にネットで検索しますよ。人間は誰でも、全員、人生の大事な場面だけ、バッチリ注目されてしまうんです。そして、過去に炎上をやらかしていると、そんな炎上、世の中はとっくに忘れているのに、その大事な場面だけ、ネットで過去の炎上が見つけられて、自分の人生が邪魔されるんです。過去の炎上が、自分の人生の足をグッて引っ張ってくるんです。しかもコレ、解決方法もなければ、終わりもないですからね。人生の「大事な場面」に終わりはないですから。

 これですよ、これが炎上の本当の恐ろしさです。ネットを使う人は、みんなコレを知ったうえでネットを使わなければいけないんです。

続く→⑨「ネットで絶対に失敗しない方法とは

筑摩書房「大人を黙らせるインターネットの歩き方」より抜粋
 ①「私のことは忘れてください
 ②「ツイッターでヘリが来た
 ③「アイスケース炎上
 ④「なぜ身元がバレるのか
 ⑤「個人情報は載せていなかったけど
 ⑥「こんな投稿もヤバい
 ⑦「すぐに消すから大丈夫?
 ⑧「炎上の本当の恐ろしさ
 ⑨「ネットで絶対に失敗しない方法とは

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