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これからは人事も戦略的でないといけないという話。

どうも荻久保です。

今回はこれからの人事に必要な要素として戦略人事について考えてみました。

どんな企業であれ大なり小なり経営目標は掲げているでしょうが、企業は目標に向けてどのような施策を実施しているでしょうか?

結論から言えば、「人事の角度から経営戦略を打ち出してみる」ことで、企業の経営目標達成の可能性が高まるかもしれません。

そのために大切なのが、「戦略人事」というキーワード。


そもそも戦略人事とは?


戦略人事とは、「企業の経営戦略に則って人材の管理やオペレーションを行っていく」という考え方。

これまでのように労務管理や人材採用をただ行うのではなく、企業の経営戦略を理解したうえで、課題を人事部の業務に落とし込んでいくことが求められます。

戦略人事は元々1997年に発売した「MBA人材戦略」という本で提唱された考えですが、人手不足である昨今、人材の活用方法が見直されている中で注目を集めています。

今後景気が回復次第更に優秀な社員を確保するのはどんどん難しくなっていくことが予想されるので、守りの姿勢ではなく、積極的な採用・マネジメントを行う「人事戦略」が必要となってきているのです。

そんな戦略人事を実現させるためには、人事部に以下4つの役割が重要となってきます。

<ビジネスパートナー>
まず大切なのは、人事部が経営者や各部門に、「ビジネスパートナーとして寄り添う」という役割。

人事担当は企業の経営目標をしっかり落とし込み、各部門の担当者に問題点のヒアリング等を行ったうえで、人的マネジメントの施策を立案していくことが求められます。

戦略人事を実現させるためには、まずビジネスパートナーとして、経営者側と現場側の実態の両方を把握しておかなくてはいけません。

<組織開発&人材開発>
それぞれの部門の実態を把握した後は、経営目標を実現させるための組織作りと人材育成を行う役割が求められます。

組織開発:経営目標に則って組織の変革や目標の浸透を行う
人材開発:経営目標に則って人材の育成やマネジメントを行う

例としては、新たな部門を創設したり、社員の研修やマニュアルを充実させたり等が挙げられますが、企業の目標や強みによってやり方は変わってくるでしょう。

また、経営目標に則って組織・人材の開発を行っていく際には、経営者的な目線があるとより効果的な施策を打ち出せると思いますので、「CHRO(最高人事責任者)」などを置くのも手です。

<センターオブエクセレンス>
センターオブエクセレンスとは、人事部がビジネスパートナーとして、各部門の人的マネジメントをサポートするための、企画・制度設計を行う役割を意味します。

例えば、

・現場のスタッフの声を聴き、適切な評価・報酬制度を取り入れる
・各部門に必要な人材を考えたうえで、採用活動を策定する
・その他、各部門の人事に関する問題点をヒアリングし、解決するための計画を行う

というように、各部門の人事の問題点を改善するために人事部の専門知識を活かし、実際にどのような施策を行っていくのか策定していきます。

「各部門の人材コンサルティング」のようなイメージといえばわかりやすいかもしれません。

<オペレーション>
センターオブエクセレンスが立案した施策を実際に行っていくのがオペレーションの役割です。

例えば、

・計画に合わせた採用活動やアウトソーシングを行っていく
・評価・報酬制度を実際に取り入れ、運用していく
・そのほか給与計算や労務管理などを行う

こういった業務が挙げられますが、実際にはセンターオブエクセレンスが策定した計画を実際に運用していくようなイメージです。


戦略人事を導入するための3つのポイント


戦略人事の4つの役割を紹介してきました。

・ビジネスパートナー
・組織開発&人材開発
・センターオブエクセレンス
・オペレーション

しかし、いざ戦略人事の仕組みを導入しようと思っても、簡単に実現できるものではありません。

この章では戦略人事を導入するために大切な3つのポイントを紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください。

<①経営戦略を明確にする>
まずは経営戦略を明確にし、人事担当がそれをしっかり理解することが大切です。

というのも、戦略人事とは「企業理念や経営目標に沿った人的マネジメントを行う」ものなので、経営戦略や企業理念が曖昧であると、戦略人事のスタートラインにすら立てない状態です。

よって、まずは経営目標を以下のような形で明確化していきましょう。

・長期、中期、短期の経営目標を設定する
・数値的な目標と、「こうありたい」という企業のビジョン両方を明確にする

特に「こうありたい」というビジョンは重要で、以下のようなステークホルダーにとって「自社はどのような存在でありたいか」をそれぞれ描くことが大切です。

・顧客
・株主
・社員
・取引先

経営目標が具体的であればあるほど、戦略人事でやるべきことも明確になります。

経営目標や企業理念がわかりにくくないか、まず見直してみましょう。

<②人事部が経営戦略を理解する>
続いては、人事部が経営目標をしっかり理解しなければいけません。

ここで注意しておきたいのが、「ただ経営目標の意味を理解する」だけでなく、以下のように、総合的に企業の経営状態を理解しておく必要がある点です。

・各ステークホルダーとの関係性
・各部門の業務や改善すべき点
・経営計画と実際の業績

戦略人事で大切な役割に「ビジネスパートナー」というものがありましたが、まさにその言葉の通り、人事部は経営者の横に立ち、パートナーとして人事施策を立案していくことが求められるのです。

そう考えると、戦略人事を行うためには、人事としてプロフェッショナルであることに加え、経営者的な目線も持てるような人材が施策を主導していくのが理想でしょう。

<③経営戦略に基づいた従業員の採用・教育をする>
最後に、経営戦略に基づいて従業員の採用や教育を行っていきます。

経営戦略に基づいて、人事部は「経営戦略を実現するため」の従業員の雇用・教育を行うのです。

この際に重要になるのが、従業員や各部門の担当者からの理解を得ること。

というのも、戦略人事を行う上での異動や組織の変革は、人事部にとっては小さな施策の1つかもしれませんが、従業員にとっては人生を左右する大きな出来事です。

経営目標の実現ばかりに気を取られていると、従業員からの信頼を失ってしまう可能性もありますので、戦略人事の施策を実施していく際は、従業員への説明等はしっかり行いましょう。

そうすることで、企業全体で一丸となって、戦略人事を行っていくことが可能となります。


戦略人事の事例


最後に、戦略人事の成功事例を2個紹介していきます。

①日清食品
戦略人事の成功事例としてまず挙げられるのが、日清食品です。

日清食品では戦略人事の課題として以下3つを掲げ、「企業内に大学を設ける」という施策を行いました。

・企業が向かうべき方向性
・企業戦略に沿って必要な人材の定義づけ
・必要と考えられる人材の育成プログラム

企業内の大学である「グローバルSAMURAIアカデミー」では、若手社員や中堅社員ごとに以下5つのコースを用意しており、「グローバル経営人材を100人から200人にする」という目標も達成しています。

・若手向け「若武者編」
・係長から課長職向け「侍編」
・次長から部長職向け「骨太経営者編」
・役員向け「エグゼクティブ編」
・女性リーダー候補向け「カタリスト編」

経営目標に合わせた人材マネジメントを行っている代表例だといえるでしょう。


<②面白法人カヤック>
面白法人カヤックは「作る人を増やす」という経営理念を掲げており、社員一人一人が主体性をもって取り組めるような組織を目指しています。

そんなカヤックは、戦略人事として「ぜんいん人事部化計画」を実施しており、具体的には以下のような施策を行っています。

・全社員が「選考免除券」を持ち、一緒に働きたいと思った人を優先して案内できる
・「360度フィードバック」により、上司、後輩、同僚からコメントをもらう
・社長になったつもりで他社員の給与を相互投票で決定する「月給ランキング」
・社長になったつもりでブレストやプレゼンを行う「ぜんいん社長合宿」

この通り、カヤックは経営理念に沿った様々な施策を実施しており、名前の通り「面白法人」を実現しているといえるでしょう。

実際、これらの取り組みにより、

・採用コストが25パーセント下がった
・企業に合った人材が確保できるようになった

といった結果が出ているようです。


戦略人事まとめ


今回は戦略人事について考えてみました。

「戦略人事はどのように行えばいいのだろう?」と疑問に思う方もいるかもしれませんが、事例で示したように、戦略人事は企業ごとにやり方が大きく異なってくるものであり、一概に正解といえるような方法はありません。

自社の経営目標や企業理念をしっかりと理解し、それを実現するために人事の面からできることを行うのが戦略人事です。

よって、まずは自社に対する深い理解が大切。

自社の理想と現実を観察したうえで、経営者的な目線で人事課題をどのように解決していくべきか、ぜひ考えてみてください。


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