xRなどミラーワールドにおけるリアルな体験と融合するブロックチェーン技術
コロナ禍におけるバーチャルツアーの需要の高まり
JTBが製作しているヴァーチャル旅行システムが話題になっていますが、現実の空間をヴァーチャルの空間に置き換える試みは今、様々なところで行われています。
旅行やエンタメだけではなく、不動産のVR内見のような仕組みもあります。
これらの事例にも用いられてますが、VR/AR/MR/SRのようなxRという技術を用いることで、仮想世界と現実世界を重ね合わせ、融合させることが可能となります。仮装空間を現実世界に置き換えるような試みをミラーワールドや、デジタルツインという言葉で表現することがありますが、ユーザーは、元の現実世界さえも超える、未知なる現実体験が可能となります。これらの仮想世界のことをメタバースという言葉で表現することもあり、メタバース構想といった名前でも語られることもあります。さらにリアルさは、こういった視覚情報だけではなく、様々な情報を補完することによって、現実の再現を手助けすることが可能となりますが、ブロックチェーン技術の利用が非常に有効です。
NASAに始まるミラーワールドやデジタルツインのコンセプト
NASAのエンジニアたちは、ミラーワールドというコンセプトを早い段階から持っていたと言われています。私が大好きな宇宙兄弟という漫画の中でも、月に取り残されたムッタを助けるために地球上で月同様の装置を作成して、はるかかなたで起きた機材のトラブルなどを、目の前でトラブルシュートするシーンなどがありますが、まさにこれがミラーワールドと言われるものの原型と言われています。その後、危険を伴う工場や、人の命を預かる飛行機のメンテナンスなど、非常に重要な分野でこれらのコンセプトは用いられてきました。
フィジカル空間(現実世界)に存在する製品などの情報やオペレーションデータなどをリアルタイムに収集し仮想世界に送り、その空間を現実世界と全く同じ状態にし、その仮想モデルを用いた高度なシミュレーションなどを行うことが可能となります。
xRの活用で広がるミラーワールドの世界
過去には同じような設備を物理的に作り出すことが必要でしたが、非常にコストがかかりましたが、ARやVRを利用することでこれまで以上に手軽に構築が可能となりました。例えば、MagicReapなどのデバイスを装着し、目の前にの空間に写すことで、危険を排除した状態で、全く同じ体験ができ、それに関わる人のトレーニングなどに用いることができます。時を重ね、それらは工場や産業などを助け、今は、エンターテイメント業界にもこのコンセプトは広がりを見せています。
Decentralandにおけるブロックチェーンと仮想現実の取り組み事例
Decentralandは2015年に始まり、VRとブロックチェーン技術を組み合わせて、オープンな3D仮想世界(メタバース)を作るプロジェクトです。(ブラウザ版が公開されており、以下のURLからアクセス可能です。
Decentralandには、MANA(お金)、WEAR(ウェアラブル)、およびLAND(土地)という3種類のトークンが存在しています。MANAという通貨でLANDと呼ばれる仮想土地の区画を購入することが可能となっており、LANDには3Dオブジェクト、テクスチャ、オーディオコンテンツなどを配置することが可能で、自分だけのLANDを構築できます。LAND上で、VRアートの展示会が開催されたり、誕生日会が開催されたり様々なイベントが行われていますが、このような自由度によってLANDを求めるモチベーションが高まっているわけです。
マーケットプレイスなどが用意されているため、これらの作品をマーケットプレイス経由で売買することなどが可能となっています。(ブラウザに対応しており、こちら のリンクから辿ることで、隕石が掘れるエリアにジャンプすることが可能です。)
既存のゲーム上で行われるメタバースの取り組み
Decentralandのような仕組みは、特別なアプリケーションを利用せずとも、既存のサービスにおいても実現されています。任天堂のどうぶつの森シリーズでは、QRコードを用いて、家具や洋服のデザインなどを共有する機能がありますが、Ikea Taiwanではこの機能を用いて、ゲーム内のIkeaをテーマとした家具カタログを設置するなどの企画を実現しました。
また、同様の機能を用いて、フィリピンのKFCは公式の島を訪れ、カーネルサンダースを発見することのリワードとして、実際のチキンが提供される取り組みも行っています。
このようにリアルとバーチャルが絡み合い、アイテムや報酬を相互に利用できる仕組みは、ファッションやホームブランドなどが気軽に参加することができるようになっています。
Appleも注目するMRではさらに現実が入り混じった世界へ
これまで見てきたように、リアルなものとヴァーチャルなものの境が薄くなった場合、それらを相互に作用しあう扉(Gateway)が必要になります。仮想世界から、現実世界に引っ張り出すためには、3Dプリンターが有効かもしれません。逆に現実世界から仮想世界にオブジェクトを移動させるためは3Dスキャナやセンサー技術の進化があります。iPhone 12 ProやiPhone 12 Pro Max、iPad Proの機種からLiDARスキャナが掲載されました。「LiDAR」という言葉は、「Light Detection and Ranging」(光検出と測距)を略したもので、レーザー光を利用して離れた物体の距離を測るセンサー技術のことです。
「Xperia 1 II」や「Galaxy S20 Ultra 5G」でもLiDAR自体は搭載していたのですが、これまでの「ダイレクトToF(Time of Flight)」と呼ばれる測定に対して、iPhoneに掲載されているものは、「インダイレクトToF(iToF)」を採用しており、光が反射して戻ってくるまでの時間を計測し、物体との距離を計算するdToFから、反射した光の位相差から距離を求めるiToFであることなど若干の違いがあります。Appleがこれらのセンサーを掲載した理由としては、ミラーワールドやバーチャルツインといった構想があるのかもしれません。
Conclusion
コロナの時代において、もともと工場などで行われていたミラーワールドの概念は音楽ライブや、スポーツ観戦、カンファレンスといった人が集まる空間演出などによって急速に発展をとげようとしています。リアルさとは何かと再び考えた時、冒頭でも述べたとおりですが、4Kや8Kといった視覚情報の充実だけではありません。五感と言われる人間の感覚器から受ける情報であったり、全く同じものであったとしても、それを所有する人の違いによる概念的な違いなど複合的な要素によって現実世界のリアルさは担保されています。以前にも書きましたが、DegitalTrueOwnershipと言われるデジタル上での真の保有権のように、
所有感を満たすことができたり、陶芸作品のように、二度と再現することのできない唯一無二の作品を作ることによって、デジタルの世界はよりリアルに近づいていけるのではないかと思います。
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