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"QFSブロックチェーン透かしの噂"から考える投票への有用性


昨年のアメリカ大統領選挙で"ブロックチェーン"の話題が再燃しました。私自身も当時から、色々と調べていましたが、様々な陰謀論なども多く、色々と巻き込まれて、大変そうだったので、少しほとぼりが冷めた(?)ころを見計らい、その内容を改めてまとめてみたいと思います。
結論としては、いまだ、分かっていない部分が多いようですが、ブロックチェーンをいかにして投票に利用するかを議論する上で、テーマとしてはとても面白いと思いのではないかと思います。

ブロックチェーン + 投票

ブロックチェーンの投票利用自体は、目新しい発想ではありません。平成28年に経産省が発表した資料(我が国経済社会の
情報化・サービス化に係る基盤整備(ブロックチェーン技術を利⽤したサービスに関する国内外動向調査)
)の中でも公共のカテゴリの中に、投票(Neutral Voting Bloc)として表現されていたり、様々な構想として、これまでにもたくさんの発表がされているなど、ブロックチェーンの活用法としては非常に期待されている領域でもあります。ブロックチェーンを使うことで改ざんされないことはもちろんのこと、ゼロ知識証明という暗号理論技術を使うことによって、誰が誰に投票を行ったかを隠しながら、結果データの正確さを担保できることなど、様々なメリットがあります。

QFSブロックチェーンと、ブロックチェーン透かし陰謀論


さて、QFSブロックチェーンが注目された事の発端は、Steve Pieczenick博士が、米大統領選で使われている投票用紙は国土安全保障省によって印刷され、さらに「QFSブロックチェーン」(Quantum FinancialSystem)の技術を使った透かしが用いられているという証言を行ったことに始まります。「おとり捜査」に関する陰謀論と合間って、QFSブロックチェーンについての憶測が巡りました。
赤外線や紫外線など人間の目には見えない光で見える特殊なインクでウォーターマークがついているという説でTwitterなどでは下記のような画像が出回っていましたが真意は確かではありません。

@RealJamesWoods This is where the QFS microdots appear on the ballot and when viewed at 640nm wavelength. The trap has been set! pic.twitter.com/ygCU07jJ2V
https://twitter.com/acetiCsmoG/status/1324481595714211851

USPSによるブロックチェーン投票に関する特許


アメリカ政府が提供している郵便サービスであるUSPSが郵送での投票をセキュアにするための技術を開発済みで、米国特許商標庁は、「安全な投票システム」と呼ばれるUSPSの公式特許出願を提出したということも、このQFSブロックチェーンの信ぴょう性を高めることになりました。

Forbes:米国郵政公社がブロックチェーン技術を使用して
選挙結果のセキュリティと透明性を向上させる「信頼性の高い投票システム」の特許を申請したhttps://www.forbes.com/sites/jasonbrett/2020/08/13/us-post-counters-trump-attacks-on-mail-in-voting-with-a-new-blockchain-patent/?sh=72cbb7f45b43


公開された特許申請書によると、この特許は、投票者に一意のコードをメールで送信し、それを使用して身元を確認してオンラインで投票し、その情報をブロックチェーンに保存して、投票が改ざんされないようにすることを提案しています。

https://pdfaiw.uspto.gov/.aiw?PageNum=0&docid=20200258338&IDKey=7A4F4EA40D1F&HomeUrl=http%3A%2F%2Fappft.uspto.gov%2Fnetacgi%2Fnph-Parser%3FSect1%3DPTO1%2526Sect2%3DHITOFF%2526d%3DPG01%2526p%3D1%2526u%3D%2Fnetahtml%2FPTO%2Fsrchnum.html%2526r%3D1%2526f%3DG%2526l%3D50%2526s1%3D20200258338.PGNR.%2526OS%3D%2526RS%3D

特許の内容はこちら
http://appft.uspto.gov/netacgi/nph-Parser?Sect1=PTO1&Sect2=HITOFF&d=PG01&p=1&u=/netahtml/PTO/srchnum.html&r=1&f=G&l=50&s1=20200258338.PGNR.&OS=&RS=

オンチェーンとオフチェーンのデータの整合性

ブロックチェーンを語る上で、欠かせないのが、オンチェーンとオフチェーンのデータの整合性についての話題です。例えば、土壌センサーを用いて、作物がどのように育ち、消費者の手元に渡っているかをブロックチェーンで追跡するなどのケースでは、一度チェーンに載せた後は改ざん不可能ですが、センサーデータをチェーンに載せる時点で改ざんが発生する可能性があります。投票においても有権者の投票結果をいかにチェーンに載せるかという部分が非常に重要となってきます。

the input comprising a computer readable code scanned from a physical ballot

有権者が受け取った郵送の投票用紙にあるQRコードなどを読み取って携帯のアプリで投票した場合、その結果がブロックチェーンに送られる仕組みがあるそうで、これらの仕組みをいかに正しく作るかが一つの難しさとも言えます。Pieczenick博士は、投票用紙がどこにあるか追跡可能とも証言していたため、GPSなどの端末が投票用紙に埋め込まれているのではなど技術的にも様々な憶測が飛び交っていました。この情報自体の正確性はいまだにわかりませんが、位置情報を埋め込むというアイデア自体は、オフチェーンのデータをオンチェーンに記録する上で、非常に有効ではないかと思います。先に述べたように、データの発生元をしっかりと追跡できることは非常に有効であるからです。

ジオフェンシングなどNFCやRFIDと連動する技術

フォードが開発しているプラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)の事例があります。これらは、グリーン対応推進活動のように人口の多い都心部に入ると車両の"電気駆動モード"が発動し都市の空気をきれいに保つことをコンセプトにしているのですが、その中で活用されているジオフェンシングは位置情報を用いた先進的な技術


この推進機構はで用いられているジオフェンシングという技術は。2004 年にミズーリ大学コロンビア校(米)で開発された技術で、地図上に特定のエリアを設定し、ユーザーがそのエリアに入ってくるとあらかじめ設定しておいたメッセージやクーポンが送れる技術ですが、これらとブロックチェーンを掛け合わせることによって、より正確性を担保することが可能となります。先の事例にあったような投票用紙の追跡などについてもこれらを用いることで技術的に不可能ではないのではないでしょうか。他にもGPS衛星との通信なしで、ジャイロや加速度センサーから推定現在位置の履歴を記録する小型チップであるとか、様々な技術要素によって、トレーサビリティを担保することは可能であると考えられています。


Conclusion

さて、今回はQFSブロックチェーンの話題から、投票全般におけるところまでを書きました。ブロックチェーン+投票のユースケースは非常に多く、アメリカでの「Voatz」というデジタル投票アプリや、日本でのつくばで実証実験がなど、様々な試みが展開されています。選挙からもう少し枠を広げると、地域通貨などのようにブロックチェーンを用いて、地域の課題解決のために使われる取り組みも様々な事例も多々ありますし、ブロックチェーン事例ではありませんが、英国のmySocietyが開発した「FixMyStreet」などのように、地域課題を発見するようなローカルコミュニティへの活用とマイクロトランザクションの掛け合わせのようなサービスにはブロックチェーンのもつ特性は非常に活かされるのではないかと思います。


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