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自分で「宇宙が作れる」冬季限定商品のくず湯と「葛」のお話

自分で宇宙が作れるシリーズのくず湯バージョン「冬宇宙(ふゆぞら)の星くず」

天文のまち浅口に関連した商品を色々と開発しておりますが、
器の中に自分で宇宙が作れる、そんな商品を考えていて
出来上がったのが今の寒い時期にぴったりな
くず湯で宇宙を作るキットです。

天文関連商品は岡山天文博物館や浅口をPRする催事等で主に販売(在庫があるときは店頭やネットショップでも販売)しておりますが、
琥珀糖の天上コハクは生菓子よりは持つとはいえ、だんだん結晶化してくる半生菓子のためそこまで長くは持ちません。

そしてその琥珀糖を作るときの端切れや、完全に結晶化してしまったものを何か使えないか、またある程度日持ちがして、作る楽しみのある
体験型キットみたいなものになればと思い開発しました。

缶の中身はこんな感じでキットと説明書が入っています

本葛が入っていますので、市販のものと違い熱湯だけではできないのですが(電子レンジか鍋で加熱が必要です)
琥珀糖のカケラを宇宙に漂う星に見立ててトッピングし、青色から紫の混じる宇宙に色が変わっていくのを自分で楽しみながら食べれるくず湯です。
インスタグラムに作り方や注意のショート動画を載せていますので参考になさってください。

味は甘さ控えめなので、お好みで砂糖を足したり、生姜などを入れても。
これからの寒くなる時期にやってみてはいかがでしょうか。

しかし、いざ販売してみると驚くべき現状が。

いざ催事で販売。すると店頭で聞かれたのは
「くず湯って何?どんなもの?」
今の若い子はもちろん、そのお母さん世代まで「くず湯」が何物か知らないという人が結構いることに驚きと若干ショックを受けつつ
確かに、おじいさんおばあさんと一緒に暮らして見たり食べたりする機会がなければ、スーパーで売っていても買わないし、食べることもないわな……と。

喉が痛い時などに飲む、というかスプーンですくって食べる、甘いとろみのある飲み物といったらいいでしょうか。スーパーの生姜湯などと一緒に置いてありますね。
ただし、お湯を注げばすぐできるタイプは「くず湯」とはいっても「本葛」が使われていることは少ないです(主に片栗粉のようなじゃがいもや甘藷でんぷんです)

青いダマを手作業ですりつぶしています

この写真は星くずの作業の1つ、宇宙のもとづくり。
青い色素がダマになりやすく、お客様が作る時に溶けにくくなってしまうので、出来るだけ塊が残らないようにこうして1つづつ手ですり潰しながら調合しています。
青色の色素はバタフライピーというマメ科の花の天然色素です。

そして上にも書きましたがこちらは本葛を使っています。
わざわざ加熱しないといけない面倒なものをなぜ使うのか。
それは「葛粉」も守らなければいけない材料の一つであり、
積極的に使う人を増やしたい、知ってもらいたい、からです

昔ながらの材料が消えていく

葛は日本古来からある原料で薬としても使われてきました。葛根湯という名
前は聞いたことがあると思います。

葛切りや葛餅(関西)も本物を食べたことがあればわかると思いますが、
熱を加えることによって透明になり、冷やすと強い弾力のあるつるつるした
食感になる特徴があります。
ただし、時間が経つと白濁してきて食感が悪くなってくるとか、熱を加えるときはかなり高い温度が必要という弱点もあります。
なので、(量にもよりますが)ポットのお湯を注いだ程度では糊状になってくれないのです。

葛についてはメーカーさんが色々と発信されているので興味がある方は一度調べてみてもらいたいですが、
葛の根を掘り出し、精製して葛粉にする作業はとても手間のかかる作業で、担い手がいなくなり高品質な国産の葛粉の生産量が減っているという話を聞きました。
同様の現象は伝統的な他の素材や技術でもあらゆるところで起こっています。

便利な新しい素材との付き合い方と、基本を知り、昔ながらの材料・製法を守るということ

今は通販などで簡単に手に入るようになった新しい素材やキットを使えば
誰でも、和菓子(洋菓子も同じですが)を学んだことのない素人でもそれなりのものができます。100均でもミックスや簡単にできるキットなどが置いてあったりしますね。

誰でも作れて菓子作りが身近になるのはいいことですが、菓子を作って売る側がそれと同じでいいのか、
誰でも作れるものと同じものを作って売ることに、職人の意味や価値はあるのか。そんなことをふと思います。

新素材は大量生産時のあつかいやすさや作業の簡易化、
製品の風味向上、日持ちのために開発されてきたものが多いと思いますが、
基本を知らずに、本来無かったその素材がないと作れないなんてことでは、伝統的な和菓子(和菓子には限りませんが)とはもういえない。

扱うのが慣れないと難しくても本来の材料や作り方で、美味しいと言えるものを作ることが和菓子の職人の技術と言えると思います。
アレンジや、古い価値観にとらわれずに新しいことに挑むのは、まず基本の理解あってこそ。これはすべてのことに通じると思います

基本の知識と技術を無くさずにいること、そして古来の日本産の原料を守ることにも注力しないといけないと思います。

代用品が出回ったことで使われなくなって、
生産量が減って、「仕事にならないから」といって廃れていく伝統的な技術や素材がたくさんあります。
今は使われなくなったから消えてもいいものなのか。
私はそうは思いません。
代用品では出せない特徴を持った素材はたくさんあります。
水ようかんでゲル化剤を使わずに寒天を使うことにしているのも、1つには同じ理由があります。

そういうものも守っていきたいと言う思いから微力ながら、消費者になるつもりで。変にこだわりを持って商品を作っています。


そして問題のもとは日常の中からじわじわと人を変えていく

メーカーは買ってもらえることを追求し続け、
日持ちをさせるには、風味を長くよく保つためには、
など様々な研究を重ねて商品を世に送り出してきました。
そのおかげで便利な新素材も生まれてきました。
包装資材や脱酸素剤も発達し、持たせることができるようにはなりました。

でも。

スーパーに並んでいて当たり前のように買っている、
異様に日持ちのするように工夫された、それっぽい顔をしたニセモノのお菓子たち。
(作りたてを数日内に食べるものを前提として、あえてニセモノと言います)

日持ちがするのが当たり前で、いつまでも柔らかくて。
「それこそが本物だ」と思い込んでいる今の時代。
そんなものしか食べたことのない人が下す評価は本当に正しいんでしょうか?(※うちが何かひどい評価をされたわけではございません。一般論です

例えば本来の材料で、柏餅を家で作って食べてみてください。
次の日に固くなってしまった。それは作り方が下手だったとか、そんな理由ではありません。
何かを評価するのには、比較するためのたくさんの経験値が必要です。
消費者の側も、「本物の味」、「本来のものの味、特徴」を知っておく必要があると思います。

この話はまた後日。
興味があればまたお付き合いくださいませ。
気になる方はスキ&フォローお待ちしてます。

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