マガジンのカバー画像

短歌

19
運営しているクリエイター

#短歌連作

Neurotoxic Addiction

君にだけ見える花束を贈ればきっと燃やしてくれるから愛

甘味から順に消えて塩味へ 薄まってゆく、この霧の中では

水泳の息止める瞬間花水木ふやけるまでも永遠

蓮の泥濘にぬらりと帰って行く沼の子らのゆきてかへらぬ自尊心

息を吸いこんだ瞬間わかる毒毒の海で踊って見せるわ

曖昧な午後に曖昧なダンス憂鬱にかしずく人からこちらへ

だんだん黄色にみえるね視覚情報遮断の禁断の果実

このなかにお医者さん

もっとみる

寝・死刑・坊

おはようとこんばんはの境目はない、空腹だけが鋭利にある

「――あげようか」答えるまでに息を、吸う、それまでの時間が吹き溜まる

名水を詰めて動かして私の咥内、驚くほど冷たい

口も食道も腸も俺のものじゃなく、地球の、というあきらめ

取れるだろう球逃してしまったふりをするわたしの膜は怠慢である

どこまでが悲しみだろう、暴力におけるどこからが倒錯だろう

目が覚めてからワンピースを翻すまでの気怠

もっとみる

ラミネート

強くなって土にまみれた足で有限の道いつまでも歩こう

蛍光の贖罪が派手に浮いている みてよ、こっちが現代版なの

愛されてみたいと君が言い出したからだよ太陽落ちてくるのは

なんだって綺麗に加工されているその消化器をつくるものすら

だからさあ守れないなら持つなよって!煙草が雨に湿気っていく

ハリボテの街でデートを繰り返しちゃんと子供を産んだ両親

細胞膜を上手く隔てて同日に刺す方と刺される方と

もっとみる