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食材への「火入れ」への想い

食材との出会いから料理の発想が生まれ、それが形となってテーブルに運ばれる瞬間まで、料理すると言うことには多彩な一連の流れがある。それはデザイナーがデザインすることと似ていて、クリエイティブなことだと思う。その中でフランス料理では「火入れ」を重視する傾向にある。

たしかに火入れは、食材の持つポテンシャルを最大限に引き出す魔法のような瞬間だ。それぞれの食材が持つ、繊細な風味や食感、色や香りを知り尽くした上で、最も適切な温度や時間、方法を選び、食材と対話をするように調理を進めていく。

火の力を借りて食材を変化させること。それは食材をただ温めるということだけでも柔らかくするということだけもない。フレンチにおいて、火入れとは食材に新しい命を吹き込むこと、そして時には食材の生命を尊重しながら最後の美味しさを引き出す役目を果たすことでもある。
そして、火入を含めた調理というプロセスを通じて、料理人は食材に深い感謝と敬意を持つようになる。

火入れの技術は経験を積むことで磨かれるが、それだけでは不十分であり、料理に対する情熱や愛情、食材へのリスペクトがなければ、真に美味しい料理は生まれない。食材との対話を大切にし、その声を感じ取ること。それが私たち料理人の役目であり誇りだと思う。

最後に、食材に火を入れることは、料理人の想いをダイレクトに伝える手段でもある。お客様が一口食べた瞬間、その想いが伝わることを願って、僕たちは日々の調理に励んでいる。それが、僕たち料理人の「火入れ」に対する想いなのだ。

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