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#002 付加価値って何だろう?

割引あり

1. 「経済」と「仕事」の接点

経済統計のマクロ的なデータを扱っていると、ミクロ的な日々の仕事と無関係な単なる数値を見ている感覚に陥りがちです。

個々の企業のミクロな合理的活動の結果、マクロではむしろマイナスな変化が進むといった合成の誤謬という言葉もあります。
経済全体と日々の仕事とはどこで結び付くのでしょうか?
むしろ相反する関係にでもあるのでしょうか。

定義的に言える事は、マクロ的な経済指標の代表であるGDP(国内総生産)は、ミクロ的な経済活動の結果である付加価値の合計だという事実です。
個々の企業が付加価値を向上させていくと、マクロのGDPが増えていく事になります。

付加価値という指標によって、経済全体と個々の企業活動が結び付いている事になります。

2. 付加価値と賃金

更に、労働者の賃金は付加価値の分配という側面があります。
良く知られているように、GDPには生産面、支出面、分配面の3面があり、それぞれの合計は一致します。
この分配面に労働者への賃金(又は雇用者報酬)が含まれることになります。

現在日本企業の当期純利益は空前の水準に達していますが、労働者への分配である賃金はほとんど増えていません。
これに対してSNS等では、企業の利益が増えているのに、労働者への分配が増えていないのはおかしいといった指摘も散見されます。

前回ご紹介した日本企業の指標をもう一度見てみましょう。

日本 法人企業 労働者 1人あたり 各指標の増加度合(1980年基準)

日本の企業は当期純利益(緑)は増えているけど、付加価値(橙)が増えていないという状態です。
稼ぎ(付加価値)は増えていないけど、儲け(純利益)が増える主体へと変化しています。
そして、給与(青)も付加価値と同じように停滞が続いています。

付加価値が増えていなければ、その分配である給与が増えないのも道理です。むしろ、給与が増えないので付加価値が増えないという事でもあるのかもしれません。

逆に、企業の当期純利益が増えても、労働者の賃金が増えるわけではない事も読み取れます。

3. 付加価値って何だろう?

ここで疑問なのが、「付加価値」という言葉です。
マクロとミクロを繋ぐ大切な言葉であるのはわかりますが、そもそも付加価値とは企業活動においてどういったものを表すのでしょうか?

内閣府の用語の解説から引用してみましょう。

私たちの経済活動は、1年の周期で見てみ ると、前年の期末ストック(国民資産)で ある機械設備や土地などの実物資産や現金 などの金融資産からなる資本に労働といっ た生産要素を組み合わせ、原材料を投入し て財貨やサービスを生産することによって 営まれています。この財貨やサービスの産 出額から原材料などの中間投入を差し引い たものが付加価値となります。 この付加価値分は賃金や企業の利潤などとして分配され、消費されたり新たに投資 されたりします。

内閣府 国民経済計算の見方、使い方

上記からすると、経済統計上付加価値とは次のように計算されるようです。

付加価値 = 産出額 - 中間投入

これが、GDPの計算に用いられる付加価値の定義という事になります。
付加価値とは、産出した総額から、生産に使用した中間投入額を差し引いた金額です。

一方で、私たちの企業活動でも付加価値は計算されます。
中小企業方式と呼ばれる控除法では、次のように計算されるようです。

付加価値額 = 売上高 - 外部購入価値

これはまさに、GDP計算の際の計算式に対応していますね。
産出額=売上高で、中間投入=外部購入価額という事になります。
つまり、付加価値とは企業活動の中で売上高から仕入の金額を引いた粗利とか、売上総利益に近いものである事がわかります。

さらに、付加価値の計算には加算法という計算方法もあるようです。

財務省における計算方法は次の通りです。

付加価値額=営業純益(営業利益-支払利息等)+役員給与+従業員給与
       +福利厚生費+支払利息等+動産・不動産賃借料+租税公課

出典: 財務省 財務営業比率の計算

計算すれば控除法とほぼ同じになるはずですが、こちらは付加価値に何が含まれるのかが良くわかりますね。

大きくは、企業側の営業利益、人件費と利息や賃借料といった項目です。
GDPの分配面で、営業余剰、雇用者報酬、純間接税という項目がありますが、それぞれと対応していそうです。
付加価値には労働者への分配である人件費が含まれているという事も示していますね。

さらに、良く誤解されがちなのは、経営者(役員)も「労働者」であるという事です。企業経営という仕事をしている労働者ですね。

「仕事とは何か」については、次回詳しく考えてみたいと思います。

4. 企業活動の合理性

企業活動は外部環境に合わせて少しずつ合理化されていくはずです。
企業の合理的活動とは当期純利益と、付加価値のどちらを大きくしていく事でしょうか?

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