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書籍【地球の未来のため僕が決断したこと】読了

https://booklog.jp/users/ogawakoichi/archives/1/B09CGQVJFH

◎タイトル:地球の未来のため僕が決断したこと
◎著者:ビル・ゲイツ、山田 文(訳)
◎出版社:早川書房


世界は今すぐ化石燃料を手放すことはできない。そういう前提で考えた時に、我々は一体何をすればよいのか。
今後の人口増加や、エネルギー事情を考えてみれば明らかだ。
今まで先進国は自分たちの利益のために、化石燃料を掘り出して利用してきた。
そして今「地球環境が危険だから、脱炭素しよう」と言い始めている。
これこそ先進国の勝手な都合であって、これから発展を目指している後進国からすれば、たまったものではない。
「先進国だけが化石燃料の恩恵に預かって豊かになった。我々には使わせず貧乏のままでいろと言うつもりか」という反論が出るのも当然である。
つまり、現実的に今すぐ化石燃料の採掘を減らすことはできない。
しかし、一方で地球環境が痛んでいることも間違いない。
このままでは、ほんの十数年以内でも地球の温度上昇によって、様々な影響が出てくるだろう。
台風などの災害も然りであるが、北極南極の氷が融けることは相当な影響が出るはずだ。
海面上昇による生態系の影響もある。
氷が融けることで、閉じ込められていた過去の休眠ウイルスが大気中に放出されることもある。
長い目で見れば、世界人口は西暦2100年頃100〜120億人くらいをピークに減少に転じるだろうと言われている。
これは国家が先進国化すると、出生率が大幅に下がるからだ。
単純に考えても、人口の半分を要する女性全員が、人生において子供を2人以上出産しないと、現在の人口は維持できない。
現在の人口を維持するためには、合計特殊出生率を2.07以上をキープする必要があるという。
しかし実際には、未婚となる人も多く、婚姻しても子を持てない人もいる。
それでは、婚姻しているが、子を2人だけと言わず、3人4人と産めるかと言えば、これまた現実的でないことは、今の日本の状況を見ていても明らかだ。
出生率は一度下がってしまうと、上げることは相当に難しくなる。
一方で個人の人生は国家のためにある訳ではないのだから、自分に合った様々な人生を選択できることは非常に重要だ。
逆に言えば、その選択ができるからこそ、自由で民主的な国家とも言える。
一方で、国家の力が人口に影響されることも現実だ。
今後急激な高齢化と人口減少に見舞われる日本は、経済的にも縮小に向かってしまうだろう。
逆に急激な人口増と経済発展が著しい、インド・東南アジア・アフリカ諸国などは、国際社会の中でも発言権が益々大きくなっていく。
日本の国際影響力が相対的に低くなってしまうのを避けることは、現実的に難しいと思う。
これら国際情勢が目まぐるしく変わっていく中で、単純に「脱炭素」だと唱えても、簡単にはいかないだろうと説いているのが著者である。
そもそも脱炭素には、先進国の思惑なども盛り込まれており、捻じ曲げられた情報が錯綜している。
著者はそこを整理して、「まずはここからじゃないか?」という現実解を提示してくれている。
正直、今まで読んだ脱炭素やSDGs関連の書籍の中では一番説得力があった。
西暦2100年頃で人口はピークとなり減少に転じる訳だから、温暖化についても、実は2200年くらいまでには自動的に解決する問題なのかもしれない。
そもそも地球はまだ氷河期で、これからも周期によって温度が下がることもある。
そう考えて見ると、実は地球温暖化、脱炭素の喫緊の課題は、ほんの数十年間の間の話であることが見えてくる。
しかし、仮に2100年までの約70〜80年間で、その時代に暮らす人々が苦労をするのは忍びない。
そういう観点で、今の時代に生きる我々は何を大切にして生きていくのか。
本書を読むことで、天才ビル・ゲイツの「物事の考え方・見方」を垣間見えた気がする。
なるほど、天才はこういう風に物事を見るのか、と。
証拠となるデータを様々集めて、そこから何が導き出せるのかと、あらゆる角度で検証する。
会社でも思い込みや個人の感想だけで物事を捉える人が多いが、そうではなくあくまでも客観的に捉えることが非常に重要だ。
そういうことが出来る人は稀なのかもしれないが、経験したことのない課題を解決するためには、大事な方法だ。
この思考回路を意識することは、今後を生きる上でも非常に役に立ちそうだと思った。
本書内のビル・ゲイツの結論は明瞭で分かりやすかった。
論理の展開も、人を説得しやすいように意識して組み立てられている。
脱炭素に話を戻すと、まず最初に「化石燃料の採掘をゼロにすることは出来ない」という前提に立って話を進めるところから始まっている。
現実を見て、今の段階では「どうやって、ゼロにするか」を考えない。
こういう潔さも、聞いている側からすると、納得感があるのだと思う。
現状、石油以上の高効率なエネルギー獲得手段が見つかっていない以上、今後の後進国の経済発展を考えると、化石燃料に頼らざるを得ない現実がある。
だからこそ、化石燃料を使い続ける前提で、どうやって温室効果ガス排出を減らすかを考えようという論理だ。
もし、化石燃料を使わずに、効率の悪いエネルギー獲得手段を利用していたら、後進国はいつまでたっても先進国化されない。
逆説的だが、つまりこれは益々脱炭素化に遅れてしまうことを意味する。
後進国の人たちが、いつまで経っても安心安全な生活環境を手に入れることができなくなってしまうということは、結果的に効率化から遠のくことになるからだ。
脱炭素にも遅れるし、これでは幸せになれる人が一握りの人たちだけで、世界が平和になることもなくなってしまう。
著者は「科学技術が人々の生活を豊かにする」という前提で論理展開している。
この論に、私は無条件で賛成派である。
科学技術の発展で、様々な問題があったことは事実である。
核を操れるようになって、戦争で不幸な使われ方をしたり、現在の地球環境の悪化も科学技術の進化のせいでもある。
AIの進化だって、人々を不幸にするかもしれないと説いている人がいることも知っている。
しかし、それらの問題すらも、人類は更なる科学技術の新発明によって乗り越えてきた。
私は科学技術の発展こそが、人々を幸せにすると思っている。
今現在は化石燃料のエネルギー獲得手段に頼るしかない。
しかし、将来はもっと高効率なものが見つけられるかもしれない。
それまでの期間に、どうやってこれ以上温室効果ガスを増やさずに(むしろ減らして)、経済発展を遂げられるのか、ということだ。
現在の温室効果ガスの影響が大きいものから、どういう対策を実行していくのかを考えていく必要がある。
著者は、大きく以下の5点について、減らす方法を具体的に提案している。
・電気を使うこと
・ものをつくること
・ものを育てること
・移動すること
・冷やしたり暖めたりすること
果たして、どんな手順で温室効果ガスの排出を減らして、エネルギーを別の方法で代替取得していくのか。
詳細は本書に譲るとして、まずは我々が「脱炭素」の本質を知ることであると感じる。
様々な情報が世の中に出ているが、ある国家の思惑であったり、金儲けの手段として唱えていることも少なからず存在している。
世界はどういう未来を描くのか。
それは我々次第であることは事実であるが、もっと大きな視点で考えていく必要があるだろう。
課題の本質を見極めれば、未来は正しい対処ができるはずなのだ。
そう信じて、行動をしていきたい。
(2024/1/11木)


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