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書籍【Makuake式 「売れる」の新法則】読了

https://booklog.jp/users/ogawakoichi/archives/1/4532324017

◎タイトル:Makuake式 「売れる」の新法則
◎著者:坊垣佳奈
◎出版社:日本経済新聞出版


「売れる」の法則が大変化している。今までの成功法則は成り立たない。新しい売り方に対応が必要なのだ。
それをどれだけ意識できるかが、これから未来のビジネスをしていく上で、特に重要なのではないだろうか。
昔ながらの対面販売は、確かに商売の基本である。
それは間違いない。
顧客と面と向き合うからこそ、顧客の欲する情報を直接得られる。
取り扱う商品について、「売れる・売れない」の感覚が磨かれていくのも確かだ。
顧客との信頼関係構築においても、対面だからこそ育むことができる。
一方で、これだけテクノロジーが大きく進化して、我々の社会は現在も激変している最中だ。
商売の基本は残りつつも、これらクラウドファンディングなどの仕組みを実際に体験してみると、ビジネスそのものも大きく変化しているのを実感してしまう。
その商品が必要だから買う。
その商品が欲しいから買う。
もはやそんな単純な話ではないということを突いたところが、クラウドファンディングの本質だろうと思う。
著者は、Makuakeのビジネスを「応援購入サービス」だと説いている。
結果的に購入するものは、何らかの製品かもしれないが、本質的に顧客が購入しているものは、「応援する権利」なのだ。
これは実に奥深い。
今までの商習慣、ビジネスの歴史の中で、これ単体でビジネスを構築しようとは、なかなか考えられなかったことだ。
もちろん「アイドルを推し活する」などのファンビジネスは、まさに応援ビジネスとしては長い歴史を持つが、それを民主化したというところが大きな転換点か。
すでに「大量生産・大量消費」の世界観は限界に来ていると言われながら、このゲームチェンジに至るまでに実は相当な時間を要している。
テクノロジーの進化がこうして小売業に影響を与えるところまで、ようやく来たという感じだ。
消費者側の買い物に対する意識が、体験を通じて大きく変化しているのは間違いない。
●生産者の顔を見て、その思いに共感して購入する
●その製品を購入するのは、背景にあるストーリーに納得したからだ
●価値があることよりも、意味があることが大事だ
●マーケティングでは見つけられない、現状を批判するビジネスからイノベーションが生まれている
上記のことは、様々なビジネス書で語られている内容だ。
似ている文脈もあるかもしれないが、いずれにしても、製品が高機能化して、そこに価値を感じて商品を購入する(買い替える)という時代ではないということだけは間違いない。
そのことを本質的に、商品を提供する側の我々が認識出来ているのだろうか。
顧客側の感覚は日々進化をしている。
買い物という行為に対する、顧客との向き合い方そのものを変化させる必要がある。
「顧客の立場になって考えろ」という言葉は、確かに商売の基本中の基本ではあるが、実は顧客の視点だけでは、今現在起きている買い物に対する変化の本質を捕らえることはできないのではないだろうか。
メルカリだって、Uber EATSだって、今では普通に使っているものだが、冷静になって考えてみると気付くことがある。
顧客がその商品を欲していたから、メルカリやUber EATSというビジネスが、自然発生的に誕生した訳ではない。
そもそも顧客には課題が存在し、その課題を解決しようとした結果、これらのサービスを思いついたということではないか。
実際にそこで売買されているモノが問題ではないということだ。
もちろん、テクノロジーの進化で実現したサービスなのは間違いないが、この文脈で考えると、当然クラウドファンディングだって、同じことではないだろうか。
何かを実現したい人がいて、その夢を応援したいと思う人がいる。
それを寄付という形なのか、予約購入という形式なのか、方法論は複数あるとして、結果的にお金が動いての経済活動がされて、商品が手元に届く。(当然、応援として寄付するだけで、見返りがない案件もある)
我々は売買という行為自体を、改めて考え直した方がよいのかもしれない。
生活で必要な商品がある。それを店舗で購入する。
生活で必要な商品がある。それをポチって購入する。
生活で必要な商品がある。販売履歴から自動で家に届くように設定する。
決して生活で必要ではないが、欲しい商品がある。それを店舗で購入する。
決して生活で必要ではないが、欲しい商品がある。それをポチって購入する。
誰かが薦める商品がある。見ていたら良さそうなので、ポチって購入してしまう。
誰かが薦める商品がある。その人を応援するために、ポチって購入してしまう。
その商品の背景が好き。考え方に共感してポチって購入してしまう。
おそらく購入に至る経路をブレストのように発散してみたら、もっともっと多数の法則が見えてくるだろう。
これらを一歩引いて見た時に、何か特別なものが見えてくるのではないだろうか。
マーケティング?ブランディング?横文字で踊らされてしまうが、売買の本質とは何か。
本書では様々な成功した出品者の事例が紹介されている。
「FEDECA」という、「革断ちナイフ」の開発については、ありそうでなかった製品を顧客に提案し成功した。
goyemon「unda~雲駄」は、雪駄にスニーカーのエアソールを採用し、文化と技術を掛け合わせることで、ユニークな商品を作った。
「Renacnatta」は、「着られなくなった・使われなくなった」という課題を解決するために、その再利用を徹底的に考えた。
キングジム社「カクミル」は、社内の製品企画の選出からは漏れたが、試作品をスモールスタートで試してみた結果成功した。大企業でも「作ってみたから売ってみる」という実験ができることを示した。
そもそも「Makuake」だって、サイバーエージェントからスピンアウトしてスモールスタートした企業だ。
クラウドファンディングサイトは多数あるが、サイトによって、得意ジャンルなどの特長がある。
成長市場ではあるだろうが、競合ひしめく中で今後どうなっていくのかは気になるところだ。
益々テクノロジーの進化とともに、買い物という行為が変化していく。
日々自分でも買い物をしているが、自分が顧客側になってしまうと、ついついその変化に対して鈍感になってしまう。
過去のやり方に固執し過ぎていないだろうか。
意識して、学んでいくしかない。
そんなことを自分に問いながら、買い物の未来を夢想していきたいと思う。
(2024/6/15土)


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