書籍【Invent & Wander──ジェフ・ベゾス】読了
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◎タイトル:Invent & Wander──ジェフ・ベゾス
◎著者: ジェフ・ベゾス、ウォルター・アイザックソン、関美和(訳)
◎出版社:ダイヤモンド社
Amazonの株主宛の手紙は有名であるが、毎年のものをまとめるとこうなるのか。まさに発展の歴史である。
改めて「この年に◆◆が開発されたのか」とか、「■■が発売されたんだなぁ」なんて思い出すと、その変化の足跡は、Amazonが普通の企業でないことを物語っている。
わずか数年で急拡大していく中で、変化に対応しているのがスゴイ。
普通は拡大していく中で無理が生じて、内部崩壊しないとも限らないが、組織として維持をしながら新しい取り組みを行っているのだから本当にスゴイことだと思う。
そんな中で、自らもっと先の未来を構想し、そこに向かって挑戦し続けるという精神。
急拡大するあらゆるベンチャー企業で語られることであるが、「ジェットエンジンで超高速で飛びながら、空中でエンジンごと入れ替える作業をしているようなもの」とはよく言ったものだ。
おそらく飛行機の専門家ですら「そんな馬鹿なこと、出来るはずがない」と一蹴してしまうことを、結局クレイジーな人々がやり遂げてしまう。
そうなのだ。世界を新しく創り変えてしまうのは、結局ほんの数少ないクレイジーな人たちなのだ。
ベゾス氏はもちろんそういう中の1人である。
一方で、ベゾス氏が株主宛に送った手紙を経年で並べてみると、極めて論理的でかつ情緒的。
そして常識的であるという点がよく分かる。
当然そういう部分を全面に押し出して手紙にしたためているはずだし、複数人の識者が内容を確認してGoサインを出している訳だから、変なことが書かれている訳がないのであるが、クレイジーさとしたたかさを兼ね備えた非凡な経営者であることは間違いない。
この株主宛の手紙を並べて読んでみると本当に面白い。
挑戦しては失敗しているし、その中でたまに大成功して、今のAmazonを支える柱になっていたりもする。
もちろん、自分自身がすべて深くまで関わった訳でもないだろうし、自分が反対した提案も、部下に任せて成功させた例だって沢山あるだろう。
これは別の書籍の方が専門的に書かれていたが、Amazonの人材開発・組織開発に関する考え方や具体的な施策は本当に参考になる。
全てを真似することは出来ないが、仕事の結果を最大化するためにどうするか、という方法を様々試行錯誤しながら実践している。
時には、倉庫勤務の人員を秒単位でロボットのように走らせ、大きな批判を浴びたこともあったが、そんなことも紆余曲折ありながら、今では本当にロボットが倉庫内を走り回るようになっている。
人間はよりクリエイティブな仕事をするべきとして、その面の仕事の結果についても最大化を求め続ける。
社内提案資料にパワポが使われないのは良し悪しだろうし、ピザ2枚ルールで、チーム内人員をそれ以上増やさない(人が増えた際はチームごと分割してしまう)というのも、一見矛盾してそうで、実はベゾス氏及びAmazon文化の、仕事の結果の最大化へのこだわりを感じる。
1997年の株主への手紙で書いた「顧客第一主義と長期視点」を、それ以後の年度でも必ず触れている。
そして「毎日が初日(Day1)」という考え方。
これらを何よりも重要視していることが分かる。
今の資本主義は、あまりにも株主志向が強く、短期業績を追い求め過ぎたことでの弊害が各所で指摘されている。
格差問題もそうだし、地球環境問題もそれらの結果が生んだ一端である。
ベゾス氏は、逆にそれを逆手に取って「何よりAmazonは長期視点を最重要視し、短期での利益を追い求めない」と宣言したことで、結果世界一の大金持ちという資本主義の最頂点に立ったということがそら恐ろしい。
ベゾス氏はそこまで資本主義のルールを逆読みしてのし上がったのか?
その悪魔的な頭脳明晰さが、次はどこに向かうのだろうか。
子供の頃に見た夢について、その純粋な心のままで宇宙開発を目指しているように振舞っているが、真の本当の目的は何だろうか?
資本主義のルールを逆手に取って、株主への配当をせず、徹底的な節税をしながら、自身資本主義の最頂点に到達した人物。
こういう経緯を見ると、宇宙開発が純粋な夢の実現とは、到底思えない。
株主宛のレターの後に、ベゾス氏自身のエッセイ的な話が収録されている。
これも深読みすると、善人の彼に対して、このレターに記載されない悪魔的な裏面の彼はどんなものかと想像してしまう。
しかし、レターだけ読めば、良い事が書かれていることは事実だ。
考え方としては参考に出来る所は見倣うべきだし、この書籍をそのまま鵜呑みにせずとも、自分なりの考え方を構築する手助けになると思えばいい。
例えば「後戻りできる意思決定と、後戻りできない意思決定は根本的に異なる」という言葉があった。
これは確かにそうだ。参考にできる。
「提案に対し、数字上のシミュレーションが上手くいかなくても、感覚を信じてGoサインを出すこともある」
これも分からないでもない。
そして「良い決断をするために、仕事に忙殺されないよう8時間睡眠を確保している」という。
この「意思決定」に対し、これだけのこだわりをもって臨んでいる経営者は他にいるだろうか。
色々な意味で本書は考えさせられたが、Amazonを知ることは、テクノロジーとビジネスが未来に向かってどう発展していくかを知る試金石になると思っている。
「自分たちの業界は守られている」と呑気に胡坐をかいていたら、本当に一瞬で破壊されてしまうかもしれない。
Amazonの動向を追いかけること。ベゾス氏の思考を常に意識すること。
生き残るためには本当に重要なことだと思っている。
(2023/10/2月)