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水の声 水泳部員をぶっち抜く帰宅部員の奇跡の物語

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皆さんには水の声は聞こえるだろうか? 水の声は私を遥かに速い泳ぎへと導いてくれました。 そして、その水の声が私の人生を大きく変えたこと。 不思議な体験をさせてもらった事。 今まで…
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#ノンフィクション

【連作短編】水の声(No,0)あらすじ

この物語は私の過去の経験をもとに書きました。 小説はいくつか書いているのですが、初めて書いた処女作品です。作成時は2008年でした。 水泳の事を題材とし、水の中で声が聞こえる不良少年の物語です、 主人公 小川純は、小学4年で水泳部でもないのに検定試験を受けることになります。 合格した彼は水泳部に入るのかと思われたが、そういう事には一切興味がなく、ただ単に水の中でゆっくりと声を聞きたいというたったそれだけの為でした。 時は流れ、中学1年になった時、彼は学校では有名な不良少年

【No.4】水の声 水泳部員をぶっち抜く帰宅部員の奇跡の物語

翌日、学校で授業が始まる前に俺は新木の席に向った。 新木は女子にも人気で、新木の席の周りには女友達が数名囲んで楽しく喋っていた。 そのうちの一人が俺を見るなり怖がり、次の瞬間、周りにいた女子はサーっとそこから立ち去って少し離れた場所から新木と俺を見ていた。 新木『おはよう、小川君』 笑顔の、そしていきなりの素晴らしい挨拶をされる事など俺にとっては経験のない事で、一瞬戸惑ってしまった。 コイツは本当に育ちのいいやつだ。 俺『…あ、あ、あ?』 俺『ああ、そうか。うん。おはよう』

【No.5】水の声 水泳部員をぶっち抜く帰宅部員の奇跡の物語

プールでは一気にこの勝負が広がる。 それはプールを越え校内にも広がった。 学校中のやつらが集まってくる。 俺はゼーゼー言ってるのを必死にこらえた。 少しずつ、肺が収まり、元の状態に戻ってくる。 プールサイドには部活などそっちのけで集まってきた野球部員やサッカー部員、挙句の果てには茂野や教師までもが見に来ている。 流石は有名人。全国4位になった男だ。 鈴木が泳ぐとなると皆見に来るんだろう。 しかし、今日は状況が少し違う。 そうだ。その違う状況とは鈴木の相手が俺だと言う事

【No.6】水の声 水泳部員をぶっち抜く帰宅部員の奇跡の物語

時間と空間を超えた世界 どのくらいの時間だっだろうか? 俺は意識の中で、まるで水の中にいるような感じだった。 静寂の中に、俺は女性の姿を見た。 白のワンピースのような服を着た女性が泳いでいる。 その脇には小さな子供が二人、楽しそうに泳いでいた。 女性はイルカのように自由自在に泳ぎ、手は使わず足のみで水の中をずっと泳いでいるのだ。 長い髪を水の中になびかせ、こっちを見ては、少しはにかんだ笑顔で俺を見ていた。 声を掛けても俺の口から言葉は出なかった。 彼女と子供達は

【No.7】水の声 水泳部員をぶっち抜く帰宅部員の奇跡の物語

ある日、俺はいきなりの親父の仕事の手伝いである場所に連れて行かれた。 その場所はある財閥のマンション兼事務所といったところか? 何か理解しがたい不思議な場所だった。 商品を大量に運び、疲れたところで秘書の方がお茶を出してくれた。 そして、その後に表れたこの財閥の社長が親父になにか話し始めた。 ビジネスの話であろう。個人的にはどうでも良い話は聞かなかった。 そしてしばらくした頃、親父が俺を手招きして信じられないことを言うのだ。 親父『純、お前水泳好きだったな』 俺『ん?

【No.8】水の声 水泳部員をぶっち抜く帰宅部員の奇跡の物語

別世界 大会前々日。 その日はプールの水を新しくする為に練習はなしだったらしい。 だが俺は、老人プールで練習をしていた。 いつも以上に疲れて、帰る時だった。 いつも通る道沿いに高級そうな服屋があった。 会津のド田舎には似合わない、それはそれは高価なつくりの服屋だった。 その窓ガラス越しに新木の姿を見つけた。 俺は自転車を止め、その姿に見とれてしまった。 凄く綺麗な女性に変身していたからだ。 服を試着していたのだろうかと思いながら。 女性店員が、俺の姿を見て、その後に新

【No.9】水の声 水泳部員をぶっち抜く帰宅部員の奇跡の物語

闘志 大会前日、翌日の予定表が全員に手渡される。 その予定の最後の方が俺は信じられないでいた。 いや、きっと誰もがそう思っていたであろう。 通常ならばクラス対抗リレーで終わるのだが、その後にもう一種目付け加えられていた。 女子100メートル自由形 決勝 男子100メートル自由形 決勝 何だこれは? 意味が分からない。 印刷ミスかと思っていた。 しかしそうではなかった。 担任の教師が言った。 教師『自由形は全員種目になっています。 その中でタイムが早かった上位7名を決

【No.10】水の声 水泳部員をぶっち抜く帰宅部員の奇跡の物語

夢の中 その夜俺は不思議な夢を見た。 それはとても悲しい夢だった。 小さな木造の家。表札には坂本とあった。 何処にでもあるかのような幸せそうな家族。 夫婦円満で、子供は二人。 一人目は男の子だ。ちょうど10歳くらいだろうか? 二人目は女の子。5、6歳くらいかな。 6畳一間の部屋で、ちょうど夕食を楽しんでいるところだった。 母親の背後にある棚の上には数多くのトロフィーやメダルが無造作に並んでいた。 場面が変わった。 室内プールだ。 ピッ、ピッと笛を吹く女性がいる。 先程の

【No.11】水の声 水泳部員をぶっち抜く帰宅部員の奇跡の物語

校内水泳大会(前編) 午前中の退屈な授業が終わり、昼食後。 もう少しで校内水泳大会。 しかし、俺は新木の席の前に行った。 そして、今朝見た夢の話を新木にした。 別に答えを求めていたわけじゃない。 新木に聞いて欲しかっただけだった。 しかし、その話を聞いた新木は信じられないことを話し始めた。 新木『もしかしたらそれって…』 俺『なんか知ってるのか?』 新木『10年位前だったかな、水泳でこの会津若松から全国大会に出た女性がいたの。オリンピック候補だったわ。半年くらい前、テレ

【No.12】水の声 水泳部員をぶっち抜く帰宅部員の奇跡の物語

スタート台に立った俺は周りのひそひそ話や茂野どもの嫌味な声援、競技の事などそっちのけで中田の姿を探した。 中田が来ているのかどうかわからないほどの人の数。 来ているのか? 来ているのなら手でも振ってくれ。 何処だ? 俺の泳ぎだけでも見たいって・・・中田、来てるよな? 『よ~い…』 ピストルを鳴らす教師が声を張り上げた。 他のやつらは前かがみになって飛び込む用意になったが、俺はその声が聞こえなかった。 それほど親友の中田を探していた。 『…小川?』 その教師が俺にいう。

【No.13】水の声 水泳部員をぶっち抜く帰宅部員の奇跡の物語

全員の泳ぎが終わり、それぞれの種目に入った。 リレーになるまでしばらく時間があった。 新木も泳ぎ終わり、彼女もその番ではトップだった。 流石は水泳を得意としていただけある。 しばらくして、だっこしていた近所の子供が帰って、俺はまた一人孤独になっていた。 別にいつものようになっただけ。 周りは声援で必死。俺はそこに打ち解けないだけ。 夏の日差しは容赦なく照りつけた。 暑さが突き刺さるような真っ青な空を見ては雲の大きさに思いをはせ、その先にあるものを探すような、そんな暇な時

【No.14】水の声 水泳部員をぶっち抜く帰宅部員の奇跡の物語

校内水泳大会 リレー編 第二次ベビーブームの俺達は7クラスにもなった。 今の少子化では考えられないほどのクラス数。 リレーの選手はそのほとんどが水泳部員。 水泳部員ではないのは俺を含めて5人しかいなかった。 でも、俺はこの場でもある意味で出る杭は打つ的な態度で皆から無視同然でいた。 違う意味では皆から恐れられた存在でもあった。 そして、鈴木の存在も同じようなものだった。 皆、鈴木に勝つことを考えていたのだろうか? 鈴木は軽い準備運動をしていた。 テントの中でリレーの

【No.15】水の声 水泳部員をぶっち抜く帰宅部員の奇跡の物語

校内水泳大会 (坂本久美子 後編) 俺は全力を尽くし、そしてゴールした。 その時の俺にとっては、順位など関係ない。 俺は、水の声が指示したように、すぐに水中に潜った。 次の瞬間だった。 時間はどれくらいだったのだろう…? 一瞬…いや、それ以上に長く感じた。 だが、それがどのくらいの時間だったかは定かではない。 さっき水に飛び込んだ時の彼女の幻覚のようなものが頭の中に入ってきた。 小学低学年位の少女がプールで泳いでいる。 しかし、その目線の先には高校生くらいの女の子が泳

【No.16】水の声 水泳部員をぶっち抜く帰宅部員の奇跡の物語

校内水泳大会 (決勝編) 俺は最後の7コース目だった。 この7人が選ばれたときの順位は秒数が早かった順位7人。 だからといって俺が7番目というわけではない。 くじ引きのような感じで7コース目で俺は泳ぐ事になった。 ある意味では最悪の場所である。 一番端なので、声援がうるさくて水の声が聞こえずらい場所だった。 しかも、隣の6コースは大嫌いな小松…。 全くもってついていない…。 不安になりながらも俺達7人はスタート台に立った。 最後の競技という事もあり、プールは大盛り上がりで