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全てのnoteユーザーにおすすめしたい「アート・イン・ビジネス」

株式会社秤の小川と申します。

私はセールスプロモーション業界で4年、電通グループなど広告会社の営業とプランナーとして10年、データ分析を軸にしたコンサルティング支援3年強。マーケティング戦略から戦術まで幅広く関わり、2018年11月に「Excelでできるデータドリブン・マーケティング」という書籍を出版しました。

宣伝会議のマーケティング分析講座の講師や企業向け研修を行い、マーケターがデータドリブンな意思決定を行うことができるよう、マーケティングを科学するためのノウハウを共有する活動をしています。

書籍や研修を売るためのコンテンツマーケティングとしてnoteを月3~4回の頻度で執筆しており、マーケティングのライターとしての側面もあります。

本noteではそんな私が発信し続ける原動力をもらった一冊を紹介します。

noteは(閲覧限定の人もいますが)原則、発信する人のコミュニケーションのためのプラットフォームなので、noteユーザーは発信者でありアーティストの側面を持つ方も多いと思います。

そんなnoteユーザーの皆さんにこの本をオススメしたいです。さらに、なんらかのビジネス上の目的があり、noteで発信されている方には特にオススメしたいです。


「アート・イン・ビジネス」とは

アートパワーを取り入れたビジネス創造を支援するプロジェクトチームである美術回路のメンバーによって執筆されたビジネス書で、「アートとビジネス」の融合がテーマとなっています。執筆のメンバーは電通のクリエーティブディレクター、プランナー、コピーライター、大学の経営学部の准教授、医師と多様です。


アートとビジネスってそもそも異質ではないか?

「アートとビジネス」の融合がテーマとなっている時点で違和感を覚えました。

16年以上マーケターとして活動してきました。子会社の営業やコンサルタントとして電通で働いいた時期もありました。そのときに広告効果を定量化する「データサイエンス」手法を知り、自らそれを習得するために勉強をはじめました。

「マーケティングをアートではなくサイエンスにしたい」という想いを原動力に、マーケティングに必用なデータサイエンスを学んできたわけです。サイエンスとビジネスならば腑に落ちますが、アートとビジネス!?んんんっ?という違和感でした。ただ、その違和感が書籍を読むきっかけになりました。

適度な「アウェー」を取り入れることを習慣にしているからです。数年前、福岡の先輩の会合に参加させて頂き、茂木健一郎さんにお会いしたことがあります。その時もひとりで福岡に行っていたので、ちょっとした「アウェー」の場に行っていました。氏は会合などもなるべく「アウェー」に行くことを推奨されていました。脳科学的に良いそうです。ビジネスマンで例えると「ホーム」の代表例が同僚と新橋のガード下で上司の愚痴でしょうか?

「アウェー」な環境に身を置くと、脳は活性化せざるを得ない状況になります。意識して「アウェー」を取り入れる癖がついてます。ここ数年の主戦場は「マーケティング」特に「デジタルマーケティング」や「データサイエンス」ですが、仮にホームの場であっても、ブっ飛んだ視座をもつ「アウェー」的な方とのお付き合いを大事にしています。


話を戻しますと、「アートとビジネス」を融合するという違和感が、今、自分に必用な「アウェー」である気がして読むことにしました。教養のなさを晒すようで恥ずかしいのですが、そもそも、私はアートにまともに向き合ったことがありません。アートの歴史もほとんど知りません。そんな縁遠かったアートがビジネスに役立つ?その接点に興味がわきました。

想像した内容は、デジタル×アート×ビジネスでイノベーティブな取り組みを行う「チームラボ」のようなプロジェクトのアウトプット法のHOW TOでしたが、本書ではそうしたイノベーティブな事例やデジタルアートの話題もありますが、幹となるのは、そうした表層的な方法論ではなく、アートの本質を捉え、それをビジネスに活かすための方法論でした。

チームラボとは
「最新のテクノロジーを活用したシステムやデジタルコンテンツの開発を行うチームラボは、アーティスト、プログラマ、エンジニア、CGアニメーター、数学者、建築家など、デジタル社会の様々な分野のスペシャリストから構成されているウルトラテクノロジスト集団。」※同社ホームページのdescription(ディスクリプション)テキストを参照

本書では「アートの内在化」という言葉が使われています。これは、個人がアートからじっくりと学びを得て「アートパワー」を内在化させることで、そうしたビジネスマンがアートから着想を得た洞察や思考を活かし、ブランディングやイノベーション、組織活性化やヴィジョン構想といった「アート効果」を生むとしています。

私にはこのアートパワーという考えに惹かれました。

アートパワーとは

本書ではアーティストが作品を続けていく源泉として4つのアートパワーを説明しています。

問題提起力(自己の欲求/批判的洞察)」「想像力(コンセプト表現)」「実践力(自律性/制約条件の突破」「共創力(相互作用/共感)」

要約しご紹介します。

問題提起力

ひとつめは問題提起力、「問う力」です。うちひとつは自己の探求で自分とは何なのか、何をしたいのか?内面に問いかける行為であり、優れたアーティストは自分自身と置かれている環境の間にあるなんらかの違和感に敏感であると同時に、負のエネルギーをポジティブに変換する力を持っています。ふたつめは批判的洞察であり、これまで当たり前と思われていたことに対して批判精神を持って挑み、ある事象やテーマの前提を疑い、問いを立て続けることです。

想像力

アートをアートたらしめる最も核となる力です。想像力とは、「一般的に「過去の経験を材料として、実在していないものをイメージとして作り出す能力」と定義されます。2種類あり、たんなる過去の体験を再生する場合と、ある特定の目的に沿って再構成される場合があり、後者を「創造的想像」と呼びます。

実践力

ビジネスパーソンは一般的になんらかの組織に属して仕事をしており、与えらえた課題を解決するために働くことが基本ですが、アーティストは違います。自分の意思に沿って創作します。しかし、創作活動は孤独であり、世の中で認められる保証はありません。したがってきわめて高い自律性が求められます。

共創力

アーティストの手を離れた作品はその時点で鑑賞者や批評家の目にさらされ、社会に開かれた作品となっていきますが、現代アートは既成概念に疑問を投げかけるものも多いため、批判も含めて多様な反応が生み出されることはむしろ必然であると言えます。アート史を振り返っても、はじめから評価され、そのあとも評価されつづけて名作になった例は稀だそうです。


アーティストは孤独でタフな存在

4つのアートパワーの説明を読んで、私はこんな風に考えました。

アーティストとはなんて孤独でタフな存在なんだと。。。


アーティストとは、
自己の探求や批判的洞察から問いを作る力(問題提起力)があり、実在していないものをイメージとして作り出す力(想像力)があり、創作活動は孤独であり、世の中で認められる保証のない中で実行し続ける力(実践力)があり、アーティストの手を離れた作品はその時点で鑑賞者や批評家の目にさらされ、社会に開かれた作品となっていきますが、批判も含めて多様な反応が生み出されることはむしろ必然であると言え、それを受容する力(共創力)がある人のことを示します。

これを見てグッと心が動かされました。なぜか?活動の動機について、少し私の話をさせてください。

私は電通グループで働いていた時、時系列データ解析による広告効果の定量化分析を知り、それを浸透させたいと考えました。数理モデルや因果推論といった手法がデファクトになっておらず、「曖昧な効果指標がデファクトになっているマーケティングの現状を打開し、変えてやる!」そんな活力にみなぎっていました。その活動の延長で1冊の書籍を出すことができました。50万部を超える大ヒットとなった「統計学が最強の学問である」

シリーズの西内啓氏からも推薦を頂きました。氏から頂いた推薦コメントは、

『これからのマーケターは、グラフの見た目よりも「因果推論」に注意すべきである』

マーケティングの現場では統計や因果推論の知識が浸透しておらず、誤った意思決定が多く行われていることを課題とし、それを解決する手段として数理モデルによる効果検証や、因果推論に振れ、実際に(Excelで)手を動かして学べるようにしたことにご賛同頂けました。

氏の推薦の効果もあり、販売開始から1年経過をしてなお、Amazonなどの通販では堅調に売れ続けています。

しかし、発売当初、知人やレビューなどでは難しいといったコメントも頂きました。マーケター向けに分かりやすく丁寧に解説していくうち、これもしっかり説明したいという内容を網羅していたためです。なんとかしたいという想いから10年放置していたツイッターを再開し、noteを書き始めました。

「書籍を売るために、分析を分かりやすく身近なものにする」「試験的に時事ネタなどからマーケティングの視点で考察する」

そうした執筆方針で、書籍や活動を紹介するフレームでnoteの執筆を続け、16カ月(48記事)で18.6万PV、3,600のスキを頂くことができました。

noteを書いてはツイートをして、時に広告も配信しすることで、さまざまな反応をいただき、それに一喜一憂する日々になりました。ただ、特に注力して書いたnoteが反応がないとものすごく凹むときもありました。

手段が目的化している

私の原点は「曖昧な効果指標がデファクトになっているマーケティングの現状を打開し、変えてやる!」という活力であり、目的は『これからのマーケターは、グラフの見た目よりも「因果推論」に注意すべきである』というコメントに対応する知識をマーケターに浸透させることです。

その為の手段としての書籍があり、その書籍を見てもらうために、SNSを活用していたつもりが、目的が「本を売る」「フォロワーを増やす」「スキをもらう」になってきていたのです。本来の原点と目的を見失い、迷走しつつありました。

アートパワーの4つの力の説明を読んで、アーティストの孤独でタフな存在と比べて、今の自分はなんだ。何をしているんだ。そんな気持ちになりました。そして、考えを整理できたところで、新たなエネルギーがわいてきました。

そうだ、私はアーティストだ。

そう考えることで、自分の中から、余計なもの、毒みたいなものが抜けて、ブレずに活動に向き合える気がしてきました。


「批判も含めて多様な反応が生み出されることはむしろ必然」であることを許容し(共創力)。「曖昧な効果指標がデファクトになっているマーケティングの現状を打開し、変えてやる!」という原点をブラさず、自己の探求や批判的洞察から問いを作り続け(問題提起力)、今、実在していないものをイメージとして作り出し、小難しい分析の知識を分かりやすく紹介するnoteを書き続け(想像力)その活動は孤独であり、世の中で認められる保証のないことを理解し、それでも実行し続ける(実践力)。

こういうスタンスで、余計な一喜一憂をせず、実直に地道にやっていくのみだ!そんな気持ちになれました。

最近、個人でも参加しやすい価格帯で講義をはじめました。数理モデルや因果推論のデザインをまず体験してもらい、より詳しくは私の書籍でと案内し、復習用に活用して頂いています。

そうです。私の目的は本を売ることでもフォロワーを増やすことでもなかったのです。目的は『これからのマーケターは、グラフの見た目よりも「因果推論」に注意すべきである』というコメントに対応する知識をマーケターに浸透させることでした。

難しいと言われていたことも多かった書籍でしたが、講義はわかりやすいと言って頂くことが多くて、日々活力を頂いています。

私はアーティストか?ビジネスマンか?そう問われたら、後者と回答しますが、「アーティストでもある。」と思っています。いや、そうありたいと思っています。(下記、再掲)

「批判も含めて多様な反応が生み出されることはむしろ必然」であることを許容し(共創力)。「曖昧な効果指標がデファクトになっているマーケティングの現状を打開し、変えてやる!」という原点をブラさず、自己の探求や批判的洞察から問いを作り続け(問題提起力)、今、実在していないものをイメージとして作り出し、小難しい分析の知識を分かりやすく紹介するnoteを書き続け(想像力)その活動は孤独であり、世の中で認められる保証のないことを理解し、それでも実行し続ける(実践力)。


本noteのキービジュアルとして使わせて頂いた「qnimaru」さんのイラストのように、アーティストのようにタフな存在でもありたい。そう思っています。

執筆


なんらかのビジネス上の目的があり、noteで発信されているみなさんへ

本書を推奨する理由についてこれまで書かせて頂きました。(noteユーザーの)皆さんも何かの想いがあってnoteというプラットフォームに向き合われていると思います。ビジネス上の目的で発信されている方もいると思います。

noteを活用することで、「書くこと自体の楽しさ」を知るきっかけとなった貴重なプラットフォームです。SNS上での対話により、noteやツイッターなどのユーザーの皆さんが何を求めているか?マーケティングドリブンのヒントが得られ、反応を得られること自体が楽しいです。

そうした反応を定量的に把握するためのツイッターの各種指標の反応率、noteごとのスキ率など全て把握しており、そうしたKPIを見ながら一喜一憂することもありましたが、そうした指標にとらわれ過ぎず、タフな存在たるアーティストのようにビジョンドリブンで突き進む強さも必用である。そんな風に考えることができました。

「アート・イン・ビジネス」を読むことで、アートパワーについて考え、自らが咀嚼しそのエッセンスを取り入れることで、noteユーザーが自分の道を突き進む活力となるのではないか?そんな風に考え、本書を推奨させて頂きます。

ほとんどが冒頭の「アートパワー」の話題に偏っていますが、自分はそこに心動かされたので、こうした書き方をさせて頂きました。アートでは、

「批判も含めて多様な反応が生み出されることはむしろ必然」

であるため、著者の皆さまもそれを許容頂けるのではないかと思っております。活力を頂いたことに感謝いたします。

最後に

本書は後半にかけて、このアートパワーを活かしてビジネスに活かした事例が紹介されます。アートパワーの効力検証する取り組みなど、ビジネスマンにとって興味深いエピソードも紹介されていく構成です。サクサク読み進めることができると思います。書籍全般のサマリーは電通報での紹介文が分かりやすいと思い、下記に参照させて頂きます。

「本書が提唱する「アート・イン・ビジネス」とは、「ビジネスにアートを取り入れること」を意味し、ビジネスパーソン一人一人が、ビジネスに「アートパワー」(問題提起力/想像力/実践力/共創力)を取り入れることで、ビジネスのあり方を問い、ビジネスに多元的な「アート効果」(ブランディング/イノベーション/組織活性化/ヴィジョン構想)をもたらし、ビジネスを通じて組織や社会を変革していくことと定義。

いま、ビジネスの現場でこれまでにない発想やアイデアの源泉として、そして何かを変える「きっかけ」として、アートが導入され結果を残していることから、本書ではビジネスにアートがもたらす変化を紹介。アート・イン・ビジネスに関する歴史から、最新事例紹介、定量調査による効果検証、現代アートに関する基礎知識、実践法に至るまで、「アート・イン・ビジネス」のエッセンスが凝縮され、アートとどう向き合い,どのように自分らしく実践していくのか,さまざまな指針や気づきをもたらすスタンダードブックとなる一冊。


以上となります。ここまでお読み頂きありがとうございました。

2023年4月14日更新

確率思考の戦略論で紹介されたプレファレンスを最適化するダッシュボードを紹介します。






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