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私が若い方に、マーケティング(戦略)の仕事を勧めなかった理由。

(株)秤の代表の小川と申します。意思決定に役立つマーケティングサイエンスなどの知識を個人や企業に共有するコンサルティング支援をしています。2018年にはマーケター向けに統計や因果推論の分析を共有する「Excelでできるデータドリブン・マーケティング」という書籍を出版しました。

先日、SNSで若い方から唐突にマーケティング職種へのキャリアチェンジの相談連絡を頂きました。

第一報、抽象度が高く、無料アドバイスを求める内容で、おそらく相談料という概念やコンサルタントのフィー体系のビジネスの存在をご存知ないと思われました。

ここは素直でまっすぐな無鉄砲さに向き合うべきかもしれない、そんな気がして無料面談のお申し入れをしてオンラインでお会いしました。

お聞きすると、マーケティングの戦略に関わりたいとのことでした。しかし、オンライン打ち合わせで話を聞いても抽象度は高いままで、想像以上に勉強不足でマーケティングの4Pすら、ご存知ないとのことでした。それで見ず知らずの私にマーケティングのキャリアの相談をするなんて!?と、認識の甘さから指摘する話から、ふと我に返り、まず建設的な話として尊敬するマーケターの書籍から読みやすいものをご紹介しました。

マーケティングの仕事は楽しいですが、大先輩の好奇心や学び、攻めのスタンスを側から見ていると、レベルの違いを感じる日々です。常に模索が必要です。逃げずにそれを乗り越えることで、楽しさが分かる仕事です。

その方には、マーケティングの仕事を勧めない方が良い気がしました。アツ過ぎる表現かもしれませんが、私が尊敬するマーケターは、みなさんマーケティング愛と好奇心に満ち溢れています。純粋な少年ぽさとか、人間味もある、それでいてクレバーな方ばかりです。

マーケターの素養として、マーケティング愛と好奇心は重要だと思います。

ただし、愛や好奇心がなくてもできる作業レベルの仕事があるのも事実です。デジタルマーケティングの新しい手法が増えたので、業務が細分化されているからです。しかし、今後は社会としてのデジタルトランスフォーメーションに向かいます。テクノロジーのさらなる進化によって、作業レベルの仕事は減っていくはずです。

過去書いたnoteですが、そんな視点をまとめました

だから、その方には今の認識のまま、なんとなくマーケティング職に就くのはお辞めになったほうが良いとアドバイスをしました。

若い方の芽を潰すようなお話をしてしまったのではないか?とよぎりましたが、耳障りの良い話してもその方の為になりませんし、私が知る事実なのでそのアドバイスに後悔はありません。ただ、4Pすら知らないと聞いた時は、あまりにびっくりして、少しきつい物言いもしてしまいました。打ち合わせのあと、フォローのご連絡をしましたが、ご返信がなくてもやむなしかと思いました。結果としては、大変丁寧な御礼ご連絡を頂くことができました。

一日を振り返り、心のパンツを脱いで、振り返ってみました。

SNSで私を見て、マーケティングのキャリアを相談すべき人と思って頂いたことに、どこかで私は喜んでおり、調子に乗っていたのかもしれません。若手の方のご相談を聞いて、いい気になりたかったのかもしれません。

私は今43歳です。昨年独立するまでは広告会社、PR会社、デジタルマーケティングコンサルティング会社に従事し、マーケティングに20年近く関わってきました。

しかし、私もまだ余裕がある立場じゃないと再認識しました。今は一人法人のコンサルタントとして、マーケティング戦略という解なきものを見いだす取り組みを整理して考える仕事でフィーを頂いています。

難しい課題を乗り越える技のレベルも上げてきたので、解を解いていくこと自体が楽しいとも思っていますが、とはいえ、迷路から抜け出せなくなったり、辛い時はとことん辛い仕事です。

ポジティブに転換して、そんな状況すら楽しむセンスもマーケターには必要です。

尊敬する先輩がたの知識や経験、今でも学ぶスタンス、攻めるスタンスを見ると、私なんて、まだまだ努力が足りないと思います。慢心せず、まだまだ必死に仕事をしないといけない立場にあることを自覚しました。個人の将来と向き合うご相談を安請け合いしたことも反省しました。

私は、マーケターになりたいという人を増やすことはスコープ外にしようと決めました。マーケティング愛や好奇心なく、なんとなくで務まる作業レベルのマーケティングの仕事が減ることを予測しているので、安易にマーケティングの仕事をオススメできません。

反面、私が注力するのはすでにマーケティングの実務や経営や組織マネジメントをガリガリとやっており、今も日々模索されている方が、より、適切な戦略意思決定ができるためのノウハウを共有して、マーケターのデータリテラシーを底上げする活動です。

マーケティング戦略をサイエンスから導く分析をExcelで学ぶことができる個人向け研修を開催しています。

マーケティング思考のセンスと仮説構築力を養うトレーニング法を共有するバックフローシンキングの講義も開催しています。


2030年くらいまでに社会実装される次世代のテクノロジー(自動運転、スマートシティ、情報銀行など)によって、社会は劇的に変化していきます。社会のデジタルトランスフォーメーションが進んだとき、顧客や市場の理解など、人間ならではのマーケティングのセンスを活かしつつ、経験と勘で意思決定するような業務はとことんなくなる世界になっていくと思います。その世界を作ることを目指すプロジェクトにも関わっています。

これからは、中途半端なスキルのマーケターは食べれなくなるはずです。そうした危機意識が向上心となり、自分で積極的に動くことで新しい仕事やスキル、仲間を増やして成長してきましたが、おそらく、それは誰しもができることではないと思っています。

だから、誰にでもマーケティングの仕事はオススメしません。

一方で、マーケティング愛と好奇心から、学びを楽しめるようになれると、最高に楽しい職業だと思います。

あとは、これからのマーケティングに必須となるデータ分析に対してのアレルギーがなく、それも楽しめる様になると、さらに活躍の場が広がるはずです。

マーケティング自体に興味を持ってもらう動機付けは、私のミッションとはしませんが、マーケティング業務を楽しむ方の、戦略を決める精度をあげるためのデータリテラシーの向上は、意義のある活動だと信じて続けてきました。今後も続けていきます!

コンサルティング支援先の企業や受講者との向き合いの中で得られる気づきが日々あります。私も初心を忘れずに学びを続けて参ります。

以上となります。ここまでお読み頂きありがとうございました!

追加情報(2023年12月18日更新)

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