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工夫をすれば、猿にはならない

自粛生活に入って、正確にはコロナパニックが
起きて、わかったことがある。
わたしは生粋の神奈川っ子だ。
田舎もなく、曽祖母の代から湘南に暮らす。
祖父は、八王子という微妙な東京から大工
棟梁の娘であった祖母を娶り。
いや、正確にはおそらく娶らされ、その息子である父は
西湘から嫁を娶り、これまた微妙な県央の
市境に家を建てた。
七夕で有名なその街が、わたしは大嫌いだった。
早くここから出たいと、いつも思っていた。

20代の前半に同族会社家系に嫁に行き
湘南に舞い戻った。
そこで世間の厳しさを骨の髄まで叩き込まれ
夜逃げ同然に離婚して(だいぶ武勇伝)。
5年前、ふとしたきっかけで京都に呼ばれ
そのまま止まらぬ京都愛と、運命を信じ上洛。
移住3年目を迎えるが、コロナパニックが
起きるまで東西を毎月行き来していた。
湘南はとある炎上事件で殺害予告が出され
警察が二府県介入する騒ぎに発展したため
転居せざるを得なくなった。
と書くと炎上犯が喜びそうだが、現実は
老朽化した家屋取り壊しのための立退。
夜逃げの際、誰一人家を貸してくれず
途方に暮れたわたしたち家族を救ってくれた
大家のおばあちゃん。
せめてもの恩返しに、希望日時に家を
明け渡すことにしたのだ。
引き渡しの日に京都府が首都圏への移動
自粛宣言を出し、出した直後に新幹線に
乗ってから、目には見えないシャッターが
降りる隙間をすり抜けた感覚があった。

東西を行き来して暮らしていると、街や
人の動きの違いに驚くことが多い。

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日本に数えるほどしかいない故人の通訳。イタコでも口寄せでもなく三者面談風にお筆書きという自動書記を使い故人と遺された人をつなぎ明日を照らす活動をしています。サポートくださると嬉しいです。よろしくお願いいたします。