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シン・仮面ライダーを観て抱いたモヤモヤした感情を言語化する試み

※この記事は、この世に生を受けた一介のVtuberが好きなことを好きなように語ったエッセイっぽいものです。
※今回は新作映画「シン・仮面ライダー」のネタバレを含みます。未視聴の方は十分ご注意下さい。
※タイトルから察せるかもしれませんが、今回は普段と違ってどちらかというとマイナス・ネガティブな感想が多めの内容です。本作が好きな人はごめんなさい、読む上ではその点ご理解の上で画面スクロールをお願いします。

(以下、ネタバレ防止のために暫く改行有り)










というわけで観てきましたシン・仮面ライダー。
筆者はシン・ゴジラとシン・ウルトラマンどちらも好きで、特にシン・ゴジラは劇場で2回観た上でアマプラに来てからも視聴するくらいには好きな映画です。そんな筆者が「シン」シリーズの3つ目ということもあって観てきた上で…その…大変恐縮ながらタイトルの通りすっげぇもやっとする部分があったので、それを何とか言語化しようとして長文を書き連ねたのが今回の記事です。

なにぶん今日の午前に鑑賞した上で、己の思うままライブ感のままに書いているため、いささか読みづらい文章になっているかと思われるが、ご容赦いただけると幸いである。


庵野…もしかしてこれ、1クール作品として出したかったんとちゃうか…?

見終わったときに一番最初に思った感想がこれ。
1クール作品のアニメか実写特撮作品を2時間の総集編的に収めるためにすっげぇ削いで削いで削いじゃいけないところも削いじゃった感が…強かったなって…。

掴みはとても良かった、いきなりの脱走からのクモオーグとの戦闘、そこは「お、攻めてんねぇ庵野やってんねぇ!」と感じた。
緑川博士の用語解説は何となくアニメ1話or2話くらいにありそうな世界観解説パートを思わせたけど、それでも戦闘の殺伐さとかも相まって引き込まれるものがあった。

ただその…その後が…2話完結系のテレビシリーズエピソードを淡々と見せられているだけみたいに感じてしまって…しかもそれらが割と平等に感じるような尺感でお出しされるので…「テンポがいい」というより「淡々としている」になっちゃってて…。

その弊害を特に強く感じたのはハチオーグ戦とラスボス戦。

前者はもっとハチオーグとルリ子さんがかつてどれだけ仲が良かったが故にルリ子さんがなぜ殺すのを躊躇ってしまうのかって理由が伝わってこないんだよぉ! 全部セリフで淡々と話しちゃうから薄っぺらく見えちゃうんだよぉ! その結果何が起きるかってルリ子さんが「生態電算機として生みだされ徹底的な合理主義者かと思いきや人間らしい一面を持つ女性」じゃなくて「なんか軸がブレちゃってる人」になっちゃってるんだよぉ!! しかもそれは本郷との関係性でも言えて、特に着替えの下りでいきなりルリ子さんのキャラが変わったように見えてしまってて…他を削ってもいいからそういった心情の変化はしっかり描いたほうが…良かったんじゃないかな…。

あと、チョウオーグはラスボスなんだからもうちょっと尺を設けてしっかり戦闘してほしかったというか、なーんか急に眼が点滅して急にパワーダウンしてしまったように見えてしまって、映画の尺の都合感が強かったなって…。しかも人類全員を"救済"したい危険思想の持ち主が、なんかふわっとした感じのふわっとした説得ですげーインスタントに絆されてしまったんだけど…もうちょっとこう…悪の矜持とか…あるじゃん…ね…? これもまた、全13話感覚の脚本を均等な感じで圧縮したが故の弊害なのかもなぁ…。

その一方で途中のバイクシーンや戦闘シーンはしっかり過ぎるぐらいに描かれていたから、ここはもう「あぁ…庵野くんはそこが描きたかったんだね、わかる、わかるよ」って気持ちになるなどした。特撮ファンや庵野ファンからするとこの辺は堪らないポイントなのかもしれないし、ここが好き!という人の気持ちもよく分かる。

※ちなみに、「シン・ウルトラマンの脚本も似たような感じやんけ!」と思う人もいるかもしれないが、それに対する回答は次の項で述べる。

ショッカーのヤバさ、いまいちピンとこない問題

シン・ゴジラ、シン・ウルトラマンの二作と比較したときに明確に感じた違いはこれだった。
ゴジラは災害級の存在が日常を脅かす恐怖や、それに立ち向かう人々の尽力が在り在りと想像できた。ウルトラマンに関しても、「ん?」とひっかかる表現はあるものの、禍威獣や宇宙人が日本社会に与える影響が、SNSや日本政府の描写を通じて伝わってきた。

が、本作のショッカーは…語弊のある表現かもしれないが物凄く「閉じている」ように見えてしまって…。
その、コウモリオーグのところで色んな人が洗脳された上で溶かされたり、サソリオーグがやっべぇ猛毒を扱ってたり、ハチオーグやチョウオーグが目指した先がろくでもねぇ世界だというのは理解はできる。
ただ、ハチオーグ以外は人々の生活が脅かされている感が少なくて、ハチオーグも一つの街で閉じちゃっていて…しかもそれに対抗する本郷とルリ子さんも、日本政府の特務機関も、(そりゃ一般人には見えない場所で戦ってるから当然なんだけど)セーフハウスと敵の本拠地だけで戦っていて、全体的に舞台がものすごーくコンパクトになってしまっていた…。

ショッカーという組織の解釈や、それに紐づく個々のボスの理念も面白い設定と思っただけに、それが設定で終わっちゃっててヤバさが伝わってこないのが本当に勿体なくて…大体をセリフで片付けちゃうのが裏目に出ちゃってるのが本当に勿体なくて…。

脚本の構成が似ていたシン・ウルトラマンも、この点に関して物語の進行と共に敵側の脅威度が加速度的にデカくなっていくから、ウルトラマンや禍特隊はどう戦っていくのか?って部分に惹かれるものがあったし、個人的には総集編っぽさはあまり感じなかった。あとやっぱメフィラスの存在はデカかった。宇宙人としての実存感が半端なかった、つくづく山本耕史は偉大

尺の都合もあるんだろうけど、悪の組織としてのヤバさがピンとこないまま「死神派?のKKオーグ」とか言われましても、こっちとしては「あぁ、そういうのもあるんだね…」くらいにしか思えなくって…もうちょっとこう…描写をですね…説明じゃなくて描写をですね…欲しいんですね…。

いやホントに、これってやっぱ1クール実写作品の方がよかったんじゃないか?って程度にはショッカーという組織全体の描写が甘かったように思う。ここがしっかり描かれないと本郷と一文字とルリ子さんが犠牲を払いながら勝ち取った束の間の平和へのカタルシスが感じられないんよ。悪の秘密結社、頼むからもっと悪の秘密結社をしてくれ

あと、結局ケイに関するエピソードが描き切られないまま終わっちゃったんだけどアレは何だったん??? 俺は最後の最後に一文字が本郷の意思を引き継いであのヤバいAIをぶっ潰しにいくのかなと思ったんだけど、結局は「俺達の戦いはこれからだ!」エンドだったよね? 超やばいAIとそれが外界を観測するための端末っていう設定は嫌いじゃないのに彼らは結局何だったん???

と思って後から調べてみたら、別作品のオマージュみたいな感じだったらしいっすね…。でもね庵野くん、オマージュってのは「オマージュ元を知っていたらニヤリとできる」からいいのであって、「オマージュ元を知らないと今のは結局何だったの?」になるのは駄目だと思うんだ…。あれじゃただの英語の発音だけやたらと流暢なちょっとコメディリリーフになりかけのロボットやん…。

たぶん恐らくスタッフロールが全ての答えなんだと思う

今作、テレビ版の初代仮面ライダーで流れていた主題歌がスタッフロールでこれでもかと流れてくる。たぶん恐らくこれが庵野のやりたかったことなんだろう。もうとにかく俺が作りたい俺の見せたい俺の解釈の仮面ライダーを見せてやる!みたいな感じで。だからこそバイクや戦闘が物凄く濃厚に描かれていて、ストーリーはそれを見せるための場作りというか繋ぎというか、そんな感じなのかなぁとふんわり思った。

というのも、戦闘シーンのバリエーションがとても豊かで、

・最初の戦闘員:オーグの圧倒的な強さやヤバさを表現する殺戮描写 
・クモオーグ:いわゆるよくある特撮物の戦闘と山小屋爆破
・コウモリオーグ:バイクからの青空からのライダーキックドーン!
・サソリオーグ:ショートコント「サソリオーグ滅殺RTA
・ハチオーグ:常人には認識できない超高速戦闘
・洗脳2号:広いフィールドを縦横無尽に飛び回る戦闘
・KKオーグ:2号ライダーのお披露目
・量産型戦:めっちゃやりたい放題のバイク戦闘
・チョウオーグ:悪のカリスマたる戦闘スタイル+1,2号ライダーvs0号ライダーという構図

という風に、列挙してみるだけで本当にいろいろあるのだ。多分庵野くんはこういった特撮シーンが描きたかったんだねって…それが庵野くんにとっての仮面ライダーだったんだなって…。

(この点に関し、自分はシン・ウルトラマンの「M八七」での米津玄師による超高解像度ウルトラマン描写がとても良かったと感じていたので、そういうのが最後に無かったのは本作がnot for meだったんだろうな、とも思う)



その他、雑感を箇条書きで

浜辺美波マジで美人すぎる。どのカットもマジで美人。すげぇ。

・戦闘シーンBGMのアレンジ、めっちゃ大好き。

・マスク越しの声が途中本気で聞き取れない場面があって「え、今何て言った?」ってのが鑑賞中のノイズになってしまうことが少なからずあった。これもほんと勿体ないんよ…。

サソリオーグ滅殺RTAは思わず笑ってしまったし見せ方として嫌いじゃなかった。でもその分の尺をもっと他に使えなかったんだろうか。

・前述の通り戦闘パートやバイクパートに関しては、CGのクオリティについて賛否はあるだろうが自分は「庵野くん、のびのびとやってていいね!」という気持ちになれた。

・一文字の登場はもうちょっと早くてもよかったんじゃ…? 終盤かなり駆け足になって、一文字側の掘り下げがもう少し欲しかったように思う。本郷とルリ子さん以上に、本郷と一文字がめっちゃ爆速で相棒感出してきたなぁって。

・チョウオーグの戦闘スタイルと圧倒的強さはめっちゃ好き。それだけにもっとクライマックスの戦いを見ていたかった感も強くてつくづく惜しいなと思った。

・役者陣の演技は全体的に良かったと思う。特に一文字は何とも言えない不思議な魅力や味があるように感じた。

・同様に、オーグのデザインも好き。ハチオーグの和風×サイバーっぽさとかチョウオーグの0号感とかとても良いと思った。だからこそ本当に描写不足が…尺のバランスが…。

・ただ、暗いトンネルでいきなりめっちゃ眩しい閃光が画面を覆うのは勘弁してほしかった。そもそも暗くて何してるかちょっと分かりづらかったし。

・ルリ子さん、コウモリオーグは片翼撃ち抜くだけで逃しちゃうし、ハチオーグは一般人が操られていることを知りながら即支配用サーバーの破壊じゃなくて一時撤退するし、兄さん相手には最初本郷のことを巻き込みたくないと言いつつ普通にパワー負けするし、その…あんまりこういうこと言いたくないんですが、遺言が一番用意周到だった説、ないですか…?

・本郷が死んでも一文字にその遺志は継承されるって終わり方、人によって思うところは多々あるだろうし好き嫌いも分かれるだろうなぁと思うんだけど、自分にとってはここまでの描写が淡々としてたから正直あぁそうなんだ…と淡々と受け入れてしまうものだったなと…。




と言った感じで、総評すると「要素要素でカッコいいシーン、カッコいいビジュアル、よい演技等々はあるが、全体を通した時に13話構成を無理やり2時間に収めた感が否めず、見せたいシーンを優先したが故に大事なところが削がれてしまっていて、結果淡々とした総集編感が残る」という、とても勿体ない作品だなぁと思ってしまった…。いや、色々マイナスの要素を多めに書いちゃったんだけど、いい部分もあるだけに惜しいとか勿体ないとかそういう印象なんです…。

それでも途中で書いた通り、これが庵野くんが金かけて開き直って描きたかった仮面ライダーならそれはもう止めはしないぜ…っていう。自分がシン・ゴジラとシン・ウルトラマンは好きだったけれどもシン・仮面ライダーはちょっとしっくりこないな、と感じたのもあくまでもNot for meだっただけで、面白いと思える要素もたくさんあったので…。


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