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Voicyの“あのBGM”は偶然から生まれたファインプレーだった 【声の履歴書Vol.43】
こんにちは。Voicy代表の緒方です。
この「声の履歴書」という連載は、Voicyがこれまで歩んできた道のりについて創業者の私があれこれ語っていこうというシリーズです。よかったらマガジンをフォローしてくれると嬉しいです。
今回はVoicyユーザーなら誰もが知っている“あのBGM”が生まれた背景と、思わぬメリットについて書こうと思います。
声の後ろで救急車が走ったときに閃いた
聴いたことがあるという人も多いかもしれません。VoicyのBGMの話です。
Voicyのアプリをリリースしたときから、「やっぱり録音環境によってノイズは入るなー」と思っていたんです。静かな部屋にいてもエアコンのノイズが入ったり、ちょっとした物音が入るんですけど、反面、臨場感も意外と出るんじゃないかと思って様子見をしていました。
当時、パーソナリティの皆藤愛子さんの声の後ろで救急車が走ったとき、みんなすごくテンションが上がったりしていたんです。ラジオだとあり得ないですから。
ただやっぱりいらない音は何とか消せないかなと考えました。当時エンジニアが共同創業者の窪田さんだけしかいない状況。もちろんそんなところまでできるはずもなくて…。
そしたら窪田さんが唐突に「BGMをつければいいじゃないですか」みたいなことを言ってきたんです。
![画像1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/45715293/picture_pc_3c81cfdbb2a84305e97cd7c7bdc5b9c6.jpg?width=800)
そう言われても、こっちは技術がわからないから、「そんなに簡単につけられるの?」と聞いたら、「たぶんできる」みたいな感じで返ってきました。
それから、じゃあどうやってBGMを流すかという話をしていたんです。BGMを後ろで流すのを実験的にやってみたら、「いいじゃん、何かかっこよくなったじゃん」みたいな感じになりました。
もともと僕たちは音声の制作現場から出てきていないので、「BGMは制作側があらかじめ入れるもの」という当たり前の概念がないんです。
だから、ユーザーが聴くときにアプリ側から入れたら楽じゃん、みたいな感じで、聞くほうのアプリから再生するときに別途BGMも流すという仕様にしたんです。
リスナーがBGMを選ぶという発想の転換
録音するときとかに収録アプリが音を出しているんじゃなくて、聞くときにかぶせているという感じなんです。
要はリスナーが自分で自分のBGMを決めて、そのBGMがずっと流れているところに、パーソナリティが交代でしゃべりにやって来るという体験です。
そもそもBGMって「聴く人」のためにあるじゃないですか。ということは、聴く人が好きなBGMを選んでもいいわけですよね。発信する人が自己表現のためにBGMを考える必要はないし、選ぶ時間もいらなくなる。
これがすごくいい結果を生むんです。放送と放送の間の隙間でもBGMが流れるんですけど、これが意外と気持ちいい体験になりました。放送の最後にフェードを入れて、次に始まるときにもう1回フェードから始まっていく中で、BGMだけは流れている。
その状態が意外なほど心地良いというのも、すごく新しい発見でした。
BGMと声が分かれてるから倍速のニーズに対応できた
あと、これは狙っていたようで狙っていなかったような、結果論なんですけど、Voicyにはいつか倍速機能が必要だと思っていました。
アプリのリリース直後は倍速機能がなかったんです。でも、将来は倍速機能を入れたかった。そしてあとで機能を追加したとき、Voicyの場合は音声とBGMでファイルを分けているから、人の声の部分だけを倍速にすることができたんです。
Voicyは「BGMは等速、声だけ倍速」という状態で聴くことができるので、圧倒的に聴きやすい。雰囲気はせかせかしないで、喋る人だけがてきぱき喋っているように聴こえる。
ながら聞きをしたい人とか、隙間時間に聞きたい人たちにぶっ刺さりました。倍速なのに聞きやすいというのは、世界でもうちのサービスくらいなんじゃないかと思います。
たとえば今、Apple PodcastとかSpotifyって倍速再生ができるじゃないですか。でもああいうときって、声はもちろん倍速になりますけど、当然BGMも倍速になっちゃうわけです。だから聞きにくいんですよね。
だからいま世界中で「BGMをやめよう」みたいな流れができています。世の中が倍速になったときの音声体験を考えてきた人って、ほとんどいなかったと思うんです。でも、今後は間違いなくその方向に進んでいく。
たとえば音楽だったら、サビから始まる曲がすでに主流になってきています。そういうことが音声コンテンツでも起こるでしょうね。
これからさらに加速するであろう「倍速文化」
そもそも最初から倍速のトークでリリースする番組なんかがあってもいいわけですよ。
僕は人前でプレゼンをしたり、イベント登壇をしたりするときは、基本は肌感で1.2倍速から1.5倍速の中間くらいのスピードでしゃべっています。みんな倍速に聞き慣れているので、最近のウェビナーとかはゆっくりに感じちゃう。
だから、「あとでこの録画をYouTubeにアップしてくれますか?」みたいな質問がけっこう出るんですよ。
これはつまり、「YouTubeにアップされたものを倍速で見たい」と言ってるんです。しゃべる側もある程度、早回しを意識して話すということがスキルとして求められるんでしょうね。
そんなふうにYouTubeとかも含めて、世の中ではどんどん倍速で見るようになっていく中で、最近、YouTubeのBGMやSEがどんどん小さくなっています。
そういうところが面白いですよね。偶然の産物というか、狙ったようで狙っていなかったというか、BGMを分けたというのは実はVoicyにとってはすごく大きかったです。
ただ、本当にこれがスタンダードになるかはちょっとわからないです。発想の転換というか、苦肉の策でやったらそっちのほうが良かった、という感じです。
「ノイズが多いな、ちょっとだけ消すのはどうしよう」→「よく考えたらラジオのトーク番組ってBGMがあるじゃん、BGM入れよう」→「発信者が選ぶよりも聴く側が入れたほうが楽だな」みたいな発想でしたね。
窪田の隠れたファインプレー
Voicyでほとんどの人が使ってる「コーヒータイム」というBGM、あれは窪田チョイスなんです。でも窪田さんって別に音楽が大好きというわけではなく、ひたすらももクロが好きなんです。
これだけヒットしたコーヒータイムをなぜ窪田が選んだのかを聞いてみたいですけど、すごくマイペースな人なのでたぶん何もないと思います。「なんとなくいいと思って」みたいなことを言いそうですね。
でもこれは隠れたファインプレーです。
「なんとなく、これじゃないですか」で当ててくる窪田はやっぱりすごいんですよ。
音声にまつわる体験を良くしていきたいと考えてコンセプトをつくって、アプリをつくって、簡単に発信できる仕組みと簡単に聞けるUI……みたいなことを考えていたら、やっぱり音声体験全体をもっと作り込みたくなってきます。
そうしたときに、今度は聴いてるチャンネルの「切り替え音」とかにもこだわりたいと思い始めました。
ーー次回はこの続きで「Voicyのサウンドエフェクト(SE)」について書きます。よかったらまた読みにきてください。
声の編集後記
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