あなたの声は、自分らしく生きるための武器になるーー「話すことの本当の価値」をつたえる本を書きました。【声の履歴書 Vol.88】
こんにちは。Voicy代表の緒方です。
この「声の履歴書」という連載は、Voicyがこれまで歩んできた道のりについて創業者の私があれこれ語っていこうというシリーズです。よかったらマガジンをフォローしてくれると嬉しいです。
実は、3年ほど書いてきた本がようやく出ることになりました。本日11月30日発売なので、今回はその話をさせてください。
タイトルは『新時代の話す力 君の声を自分らしく生きる武器にする』です。
きっかけはClubhouseブーム
はじまりはコロナのタイミングの少し前。ダイヤモンド社の編集者さんと会って、「話すというテーマはこれから面白くなりますね」なんて話をしていました。何か本で出せたらいいな、と考えていたら、あのClubhouseブームがやってきて、突然、みんなが喋る社会になりかけたんです。
そのときに「早くやりましょう!」という話になったものの、でも「話すことは本当にただのブームなのか」とか、「もっと大事な論点がいっぱいあるんじゃないか」とか思って、ずっとメモをまとめたりしていたら、いつの間にかClubhouseが落ち着いてしまった。
さらにそこから2年ほど、Voicyでいろいろな人が喋っているのを分析したり、自分もラジオ番組に出て喋るようになったり、声の力で活躍する人をたくさん見てきたことで、「こうまとめたらいいんだな」というものがやっと見えてきたんです。どこにもない「話す」ことに対する集大成みたいな本になったと思います。
この本のターゲットは、1つは人間関係を良好にしたい人。それから、仕事のパフォーマンスを上げたい人。あとは自分らしく生きたい人。この3つがあります。
内容としてはビジネス書と実践書の融合です。
いま売れている「話す」関連の本をよくよく見たら、ほとんどは実践書なんですね。つまり、「上手な話し方」みたいな本ばっかりになっているわけです。
その前段階の「そもそも話すって何なの?」とか、「話す力がある人というのはどういう存在なんだ?」ということを理解しないと、本当の実践に移れません。本書の前半にはそういった理論編を入れています。
そもそも世の中のスポーツ選手やアーティスト、タレントでも、話が上手い人のほうが人気ですよね。喋れない人のほうが人気になることってまずないです。特にここ数年で顕著になってきていますが、伝えるのが下手な人は出てこれないように思います。
自分らしく生きることは、自分らしく話すこと
最近はスポーツ選手やアーティストに限らず、みんな「自分らしさを出したい」とか、「自分らしく生きたい」と言ったりします。そこからお洒落をしたり、美容にこだわる人も多いです。でも自分のことを理解してもらう方法って、必ずしも良い服を着るとか、表情をつくることだけではありません。
それだけだと、自分のことをそんなに理解してもらえない。ハッキリ言うと、最後は話すしかないんです。話すことなしに「自分らしく生きる」というのはかなり難しいんです。
人と良い関係性をつくって自分のことを理解してもらうことは、自分らしく生きるための必須条件です。ただ、そのために「話す」ことについて考えない人がすごく多いのは不思議に思っています。一切の話をせずにお互いを理解できたことってありますか?
毎日鏡を見てお洒落はしているのに、自分の話し方はほとんどブラッシュアップしたことがないという人はとても多いし、それはとてももったいないことです。
むしろ、話が上手い人は「あの人は口が上手いよね」と言われたりして、あまり印象がよくなかったりもしますね。「はじめから話すことが上手い人は得しているよね」みたいな。
日本だと「だから、口下手でいいんだよ」という雰囲気にもなりますけど、決してそんなことはありません。どう考えても「話す」なんてやればやるほど上手くなるし、上手くなったほうがハッピーです。学ぶ機会がないから、できない人が多いだけなんです。
日本は話す文化自体が遅れている
Voicyでも、話すのがコンプレックスだと言っていた人ほど話すことに対して意識的に勉強して、その結果、多くの人を魅了するようになってきています。
やり方を学べば、学んだだけすごく得をする状態になっているんですが、意外とみなさん気づけていないようです。ファッション誌はあるから、洋服のことはわかるじゃないですか。でも話す意味や、話す方法は誰も教えてくれないですよね。
たとえば海外だったらどうか。留学して英語を勉強したらわかるんですが、学校ではスピーキングとリスニングから学びます。それで後からライティングをやって、リーディングをやるという順番ですが、日本の場合は、はじめに読み書きをおぼえて、次にそろばんです。いつまで経ってもスピーキングとリスニングの順番がやってこない。
国語の授業のときにも、「そのときゴンはぁー」とか、「ところがぁー」とか声に出して読みますけれども、みんなあえて嫌そうに棒読みしてましたよね。ですから、話す文化自体が相当遅れています。
きっと国民全体が話すのが上手くなるだけで、揉め事も相当減ると思うんです。みんなちゃんと自分のことを喋りで表現できていないから、仲の良い身内とは流暢に喋れるのに、外に出たら人と意思疎通ができない、という状況になっています。
「きれいに話す」がゴールではない
いま、まさにこれからの多様化する社会の中では、それぞれの価値観が違うわけです。昔の日本の場合は、みんなの価値観が一緒だったから、同じものを見ていればよかった。阿吽の呼吸とか、ツーカーとか、語らずとも目でわかることが素晴らしいとされていたわけです。でも、海外はもともと多様性の文化なので、まずは「私がどんな人なのか」を言わなければいけなかった。その違いは大きい。
そこが今の日本では、多様な生き方や働き方が出てきたり、もはや働かなくてもいいんじゃないか、とか、結婚しなくてもいいんじゃないか、ということも意見として出てきていますが、そんなふうに価値観が多様化してくる中でお互いを理解するには、やっぱり「あなたはどういう思考なんですか?」と語り合うことが、すごく大事になってきます。
そうなったときに「話す力」というものがどれくらいのパフォーマンスを生むのか。それから、それがないことでどれくらい致命的なダメージを負うのか。それから、その力はどうやったら向上するものなのか。そういうところをまず本の中で解説し、実践編に入っていく、という流れになっています。
そんな本たくさんあるんじゃないかと思われるでしょうが、たとえばアナウンサーさんたちの本では、ほとんど「きれいに話す」ことや表情など表現がメインで語られます。正直、人の心を魅了するのに、きれいに話す必要はないんです。なぜなら、アナウンサーよりも営業マンのほうが喋りで相手を魅了している場合も多いです。
「話す」ことの本質的な価値は、きれいに話す世界の人たちが説明するのではなくて、話すことで多くの人を動かしている人たちが語らないといけないと僕は思っています。
いまはまだ、そこがすごく不完全なマーケットだなと思います。みんなすごく必要としているのに、そして社会的重要度が高い項目なのに、多くの人のリテラシーが低くて、それに対して情報発信者も未熟という状態になっているのが現在です。
スピークでも、トークでもなく、コミュニケーション
この本の中では、「話す力=人に求められる力である」と最初に書いてありますが、そのまま序章を読み進めたら「え?」と思うでしょう。「“話すこと”と“喋ること”は違う」と書いてありますから。
つまり、話すことは、口から音を出すことではなく、相手に自分のことを理解してもらって、自分も相手のことを理解して、建設的な関係を築くこと。それが「話す」の本質です。
「話す」とは、スピークでも、トークでもなくて、コミュニケーションなんです。なので、「話す力」とは書いてあるけれど、実践編のところは大きく3つのパート、「話す場をつくる技術」と「聞く技術」と「伝わる技術」とに分かれています。
まず話す場をちゃんとつくらなかったらアイスブレイクができないですし、深い話もできません。それから、ちゃんと聞けない人は相手の事も理解できませんし、相手にも心を割ってもらえない。話すというのは、相手との人間関係をより良くするためのコミュニケーションのすべてなんですね。
それができると相手のことも尊重できるし、自分のこともわかってもらえる、という状態になってきます。その結果、「あの人ともう1回話したいな」とか、「あの人とまた会いたいな」とか、「あの人の話を聞きたいな」とか、要は「もっと関わりたい!」と思ってもらえる。
人から必要とされるには「話す力」をつけるしかないのです。
これからは声だけで伝える力が必要になってくる
この本の後半の実践編では、音声コンテンツのトレンドやVoicyという音声サービスの運営をもとにしたノウハウも盛り込んでいます。たとえば、最近の人は倍速で聞いていることも多いから、「1.2倍速くらいで喋っても問題ないよ」とか、「頷くときのワードをいろいろと変えるだけでも違うよ」とかですね。
そういう話をしている中で、「Voicyパーソナリティさんのこの人の放送が参考になりますよ」と、60チャンネル以上の放送をQRコード付きで紹介しています。QRコードをスマホで読み取るとそのままVoicyで聴けるのですぐに実感できますし、実践につながります。
Voicyのパーソナリティはみんな、普段はスマホアプリに向かって話しています。みなさんも仕事ではZoomなどのオンライン会議をする機会が増えていると思います。
リモート環境で話すときは、リアルの場ならできる身振りや手振りが一切通じません。よりストレートな伝え方が重要になってきます。これからどんどん話す場所がオンラインに移っていくと、自分の声以外の情報がほとんど介入しなくなりますから、シンプルに話す力が必要になります。
そういった直近の環境も踏まえて、あえて本のタイトルは『話す力』ではなくて、『新時代の話す力』としています。
あなたの声を、自分らしく生きるための武器にしましょう。
ーーみなさん、見かけたらお手に取ってみてください。最後まで読んでいただきありがとうございました。
声の編集後記
こちらの記事で書いた「なぜこの本を届けたいと思ったか」という内容を、Voicyの方でも著者からのメッセージという形で放送しています。感情や想いも伝わる放送になってると思いますので、よかったら聞いてみてください。
また、本の「はじめに・目次」を別の記事で全文公開しています。この記事をきっかけに内容気になってきたという方は、ぜひこちらから実際の本文も読んでみていただけると嬉しいです。
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