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Voicyが自社のニュース番組でパーソナリティを公募する理由【声の履歴書 Vol.68】

こんにちは。Voicy代表の緒方です。

この「声の履歴書」という連載は、Voicyがこれまで歩んできた道のりについて創業者の私があれこれ語っていこうというシリーズです。よかったらマガジンをフォローしてくれると嬉しいです。

今日は「Voicy公式ニュース番組」について書きます。実はVoicyには5年前から、毎朝ニュースを声で届ける公式の番組があるのですが、面白いのは読み手を一般から公募しているところです。

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最初は友人に頼んで読み上げてもらった

Voicy公式ニュースは、僕が「これは絶対にやらなくちゃ」と思ってつくった番組ですが、そこから5年経って、目玉チャンネルの1つに成長しました。実はVoicyの中のイノベーションの1つじゃないかな、と思っています。

パーソナリティさんが毎日交代でニュースを読んでいくという仕組みなので最初は大変でした。当初は月曜日から金曜日まで友人に頼んで、1人ずつ交代してニュースを読んでもらっていましたね。

当時の音声のサービスって、Podcastはトーク番組が中心でしたし、ラジオはそもそもニュースの時間がすごく短くて、なかなかタイミングよく出会うこともできなかった。聞きたいときにパッと聞ける音声ニュースみたいなものは意外となかったんです。

その点、Voicyは毎日新聞さんやスポニチさんと提携して、収録アプリに各社のニュース記事を表示できるようにしてもらっていました。その記事をみんなで読みあげていけばかなりの速度で1つのニュース番組がつくれます。リスナーさんもちゃんと毎日のニュースを追いかけられるんじゃないかと思ったんです。

実際に番組を始めてみたら、やっぱり意外と習慣的にニュースを知りたいというニーズはあるんだな、ということがわかってきました。

ITビジネスニュースのヒットと、朝の失敗談

その中で次は、ある程度特化型のニュースを出してもいいんじゃないかと考えて、「Voicy公式 ITビジネスニュース」をつくりました。当時、業界特化型の音声ニュースは本当になかったんです。

そうしたら、もともとITベンチャー界隈にファンが多かったVoicyなので、ITビジネスニュースがかなりヒットしました。

いまでこそITビジネスニュースのパーソナリティはIT系の話題に詳しい人達がやってくれているんですけれど、当時はまだそんなに人が集まらなかったので、全然ITに特化していない人も読んでくれていたんです。

ですから、たとえば「スポティファイ」を「スポティフィ」って読んじゃっているのを、Twitter上ですごく笑われてしまうとか、「全然ITに詳しくないじゃん」みたいなことを言われたりもしていました。

面白い失敗談とかもあります。気づいたら寝坊していたとか、風邪をひいたとか、いろいろありました。突発的に、僕も代打で何回か読んだんじゃないかな(笑)

毎朝7時半には出るはずなのに、Twitterで「あれ? まだVoicy公式ニュースが更新されてない?」と言われたりすることもありました。8時や9時になってしまった、なんてことも、いっぱいあります。そんなことでへこんでいられないくらい、いっぱいあります。

とにかく、「この日は駄目です」とか「飲んじゃいました」とかがあっても、みんなでチームをつくって応援をしあう、という感じ。もちろんパーソナリティさんにお金を払えるわけじゃないし、みんな趣味の人の集まりなので、本当に助けてもらいました。

「やっぱりAIよりも人だな」

もう1つ、すごく難易度が高かったことは、文語体の記事を口語で読むにはどうするか、ということ。書いてある言葉をそのまま読み上げるって不自然なんですよね。

さらに記事を提供してもらっている新聞社さんからは、「間違えずに、ミスなく読むように」と言われていました。でも、そのまま読もうとしても、記事がすごく長いから難しい。

そういうこともあって、読みながら要約して、かつ、語尾を口語に変えて、かつ、間違えてはいけない、みたいなことをどうやって実現するか。一時期はCTOの窪田さんと、「文語を口語に戻せるツールをつくろうか」みたいな話もしていましたね。

でもそんなのは到底無理。どうする?って悩んでいたら、途中ですごいブレイクスルーがありました。

人ってだんだん慣れてくる、というブレイクスルーなんですけれど、文語の文章なのに、みんなだんだんと口語で喋れるようになるんです。すごいスピードで上達していきました。

人の力ってすごいな、と思いました。やっぱりAIよりも人だな、と思った瞬間です。

ニュースは常にプラットフォームの一大コンテンツ

ヤフーを見ても、LINEを見ても思いますが、やっぱりプラットフォームにおいてニュースというものは、いまだに欠かせないものなんですよね。

「毎日新しい情報を取得しておかないと怖い」という思いは誰しもきっとあるし、習慣になっている面もあるのかなと思います。だからVoicyが音声プラットフォームとして存在感を示すことができたのは、公式ニュースの貢献もあったはずです。

Voicyのリスナーは朝起きてすぐに、まずはVoicyアプリを開いて公式ニュースを流す、みたいな行動パターンの人がけっこう多いと思います。スピーカーで流しながら、朝ごはんを食べたりとかですね。

あらためてVoicyらしいなと我ながら思うのは、かなり重要視している公式のニュースコンテンツをVoicy社として運営するわけではなくて、リスナーさんから募集してお任せしてしまうところ。

これは当然、社内でやってもいいわけじゃないですか。確実に毎日事故なくやるなら、Voicy社員が朝交代で読み上げればいいんです。

でも僕は、すぐに人の力を借りたくなるんですよ。コストを下げたい、という理由だけではありません。結局プラットフォーム事業というのは、いろんな人を巻き込んだほうが上手くいきやすいのです。

PUGCという新しい考え方

スタートアップでプラットフォームと呼べるようなサービスをつくっている会社なんて、すごく少ないわけです。そういう会社って普通はコンテンツが自然増殖するための仕組み作りにフォーカスするはずなのに、僕らはすぐにメディア機能を持つわけです。

中国のシマラヤという会社の言葉を借りると、「UGC」(User Generated Contents)という誰でもやれるものと、PGCという「Professional Generated Contents」というものがあります。

SpotifyはPGCですね。プロのアーティストが曲を配信しています。そこに加えて、いまは「PUGC」というものも注目されています。これはProfessional User Generated Contentsというもので、ユーザーの中でも半分プロな人達がつくるコンテンツという意味です。

ユーザーの中でも上位0.1%くらいの層をそう位置づけているんですけれど、プラットフォームの中でプロに近い人を成長させていって、いろんなことに巻き込んでいく。UGCでも、PGCでもないのはVoicyも似ています。その点は近い発想がありますね。

やっぱり自社の中で何かをつくって提供していても、いまの時代にはやっぱり全然ワークしないと思っています。結局、誰かがつくったもののほうに、もっといいものがあるんです。だから、答えは僕もわからないし、社内の知見だけでできると信じていたら逆に危険だとも思っています。

Voicy公式ニュースがアナウンサーの登竜門に

では公式パーソナリティの皆さんはどういう気持ちで応募してくるのかとよく聞かれますが、やっぱり、自分の声を聴いてもらえることが嬉しいという人がいっぱいいます。最近はスマートスピーカーからも流れるし、多くの人に聞かれるから、箔がつくということもあるかもしれません。

ここ数年は毎年Voicyの公式パーソナリティの中からアナウンサーが出ています。2021年は3人も出ていました。実はアナウンサーを目指す学生さんの登竜門みたいになっているんですね。志望していなかった学生さんもアナウンサーになっていたりします(笑)

Voicyでは毎年冬に公式パーソナリティのオーディションを開催しています。今年も応募ページをオープンしたところです。

最近はもう5人の枠に本当に200~300人くらいの方が受けに来てくれます。ありがたいです。本当に、5年間かけて培ってきたものです。

とにかく、どれだけ声の良い人を集めても、ラジオ局には勝てないと思っていました。読む人らしさを出すことで、Voicyらしさが出ればいい。そう考えて、キャリアや生き方、考え方が面白い人を選ばせてもらっています。

だから、スポニチニュースには実際のスポーツ選手もいるし、毎日新聞ニュースは学生中心にしてみたり、ITビジネスニュースにはITのエンジニアの女性がいたりします。

そういう面白い人たちで運営しているので、パーソナリティ同士でも1期生、2期生みたいなチームができて、社会人の1つの部活みたいになっています。そこの交流もきっと楽しいと思います。

最後になりますが、興味がある方いましたら、よかったら応募してみてください。

編集後記

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