社長と直接働くひとの苦戦ポイントと、その打破方法【声の履歴書 Vol.71】
こんにちは。Voicy代表の緒方です。
この「声の履歴書」という連載は、Voicyがこれまで歩んできた道のりについて創業者の私があれこれ語っていこうというシリーズです。よかったらマガジンをフォローしてくれると嬉しいです。
今日はスタートアップでよくある「社長と働くことのむずかしさ・たのしさ」について、思い切って社長サイドから書いてみます。
よく言われる「緒方と働きにくい」
Voicyにも中途採用で入ってくださる方がたくさんいますが、そういう方は往々にして苦戦するんです。それは、「緒方と働きにくい」ということです。
「社長が何を考えているかわからない」とか「社長とどういうふうに上手くやればいいかわからない」という意見が、いっぱい出てきます。これはもう、例年のごとく、毎回出てくるんです。
他の会社の社長に聞いても、だいたい同じようなことが起きています。社長仲間と集まった話をここで共有できればいいなと思います。
そもそも想像がつくと思うんですが、世の中の社長には、変わり者が多いです。変わり者だし、立場も全然違うので、考えていることも全然違います。
それに加えて社員の皆さんは、今まで社長直下で働いたことがない人や、社長と一緒に働いたことがないという人が、実は多いわけです。大企業から来たり、それなりに大きい会社から来ると、社長の話を直接受けながらすぐ動いて仕事をするなんて、あまりない経験ですよね。
でもVoicyという会社は、まだ40人しかいないので、僕から直接バンバン指示がおりてくるし、皆がコミュニケーションをしている中に僕もどんどん入っていきます。
「それはもうちょっとこういうふうにやってよ」とか、「それはもうちょっと考えられるんじゃない?」とか、「こういう方法もあるんじゃない?」とか、どんどん声を出していきます。
そういうときに、「そんなの言われても、まずそっちから優先するんですか?」とか、「社長の言ったことからやるのかな、でも計画がおかしいよな」とか、「社長ってどんどん話が変わるじゃん…」みたいな反応が出てきますよね。いろんなベンチャーの社員が「うちは代表が朝令暮改だらけで困ってます」ってよく苦笑いしてる顔を見ます。
ゴールが「社長からの評価」になってはいけない
ここで間違ってしまうと、だんだん社長の顔色を伺ってしまうようになったり、社長に認めてほしいとか、社長に何とかわかってもらわないといけない、というふうになってきてしまって、目指す方向性が「社長からの評価」になってしまったりするんです。
自分なりにのびのびと自分のアウトプットを生んでほしいのですが、どうしても社長のやり方に引っ張られたりしてしまうところも出てきます。
社長がしゃしゃり出てしまうから、だんだんと社員が委縮してしまうのでは? と考えて、「社長は出てきたら駄目です」と社長を抑え込んでしまうナンバー2がいたら、さらに良くなかったりします。こういう社長を抑えるナンバー2(自分は会社のためにいい事してると思ってる)がいるとよく会社が崩壊しています。
これはポジショントークに聞こえてしまうかもしれませんが、スタートアップは良くも悪くも、社長の示すビジョンが大事。そこが縮こまってしまうのは会社にとってあまり良くないんです。
僕自身は、Voicyという会社を運営する以外にも、いろいろな会社のメンターをやってきましたし、もともとベンチャー支援をずっとやっていました。それこそ1年間に何百もの会社を見ていたりもしました。もちろん大小ありますが、その中でも、同じような悩みというのは出てきました。
マインドセットの違いを理解すること
社長と働くということは、めちゃくちゃエキサイティングだし、面白いはずなんです。ただ、働き方が今までとは全然違うところもあります。
それはつまり、マインドセットが全然違うからです。簡単に言うと、まず社長というものは別人種で、評価される相手がいないんです。結果でしか評価されないので、誰の顔色も伺わないんです。むしろ社員や株主の顔色を伺ってる社長の会社はどんどん縮こまっていくことが多いです。
「いまの自分の1個1個のアウトプットを評価してほしい!」なんてことは1ミリも思っていないし、最終の結果しか見ていないわけです。
でも、会社の社員で働いているときは違いますよね。僕もサラリーマンのときは、一つひとつのアウトプットのやり方を評価されたり、作業自体を見られていました。部長が評価をして、部長自体も評価されて、その下に自分がいるわけです。
社長は、手段も、方法も、方向性も、いつでも全部変えられるし変えなければならない中で走っています。その人と一緒に走るときの働き方をするときは、考え方から変えないといけないんです。
ここが上手く噛み合って、社長にも遠慮せずどんどん前に進めるメンバーが出てくると、会社はものすごいスピードで走っていきます。
その走り方の一番綺麗なかたちは、結論からいうと、「最終の会社のゴールはどういうところを目指していて、何を達成するんだ、というところだけを共有して、各メンバーがそれに対して全力で登っていく」ことです。
そして、その登っていく中で、「社長を上手く使う」こと。
社長の言う通りにするのではなくて、社長の行きたい方向性に行く。そのときに社長の仕事をどれだけ奪えるか、なんです。
社長はみんな、「とにかく仕事を任せたい」と思っています。任せて、勝手に走ってくれて、自分ができる以上のアウトプットを生んでくれる、自分以上にできる人を求めています。
けれど実際は、社長の指示通りに動く人が出てきてしまうんです。指示通りに動いている状態では、社長はまだ不満なんです。
またカレー屋さんでたとえます
たとえば、「今からカレー屋さんをつくろう」と言ったとします。でも社長も初めてカレー屋さんをつくるわけです。だから、つくり方のいろはとか、フローなんかは全然わかっていないんです。
社長は何となく「ご飯とルーを用意して、ちゃんと温める火とかを用意しないといけないよね」と言っていますが、たぶん彼はどうせなら「美味しいカレー」をつくりたいはずです。
そのときにToDoだけを並べて、「社長の言われたことだけをやりました」という人がほしいのではなくて、「美味しいカレーを調べたら、ブイヨンとか、そういうものが必要だということがわかりましたよ」とか、「社長、美味しいカレーを目指すために、他のところも調べに行きましょう」とかそういった「追い越していく」動きを待っています。
それで社長が「調べて行ってきて」と言ったら、それに対して「やります。でも他に必要なこともあったら、そっちも考えますね」と、方向が決まったもの以上に視野を広げて、さらにできることを探してきてもらう、くらいを求めています。
なので、「ご飯をふっくら炊いてね」と言われたとして、そのままご飯をふっくらと炊くことは、本当に新人の1年生くらいにしか求めていないんです。言われた通りにやるだけの人だったら、正直いらんかな、くらいの感じなんです。困ったことにふっくら炊いた社員は100点だと大満足して高い評価を期待していて、その社員に全然足りないことを説明するのはこれまた社長の頭を悩ませます。
でも、長く大手企業にいたりすると、「言われたことをちゃんとやること」が一番評価されていたりします。そういう会社では「余計なことをするな」と言われているくらいです。
そうするとどうしても、「言われたことだけをやっていたら、社長がめっちゃ不満そう」みたいな感じでスランプに陥ります。
さらに「トッピングとかは考えた?」とか言われて、「じゃあトッピングも考えさせてもらいます」とか、「メニューは他にも準備したほうがいいんじゃないの?」と言われて、「メニューも考えさせてもらいます」というふうに、動き出しが後手後手になっていくわけです。
そうじゃなくて、「君に美味しいカレーをつくるのを任せるよ」と言われたら、「美味しいカレーをつくるにはどうしたらいいか、全体的に考えてきますね」という感じで、「こんなものも必要だと思いました」「それから、こんなものも必要だと思いました」と先手を取るのが大事です。
「やりたいことはこれだけあるけれど、優先順位としてはこれをやったほうがいいと思います。社長はどうですか?」と提案して、「それいいじゃん、じゃあそれからいこうか」みたいな感じで、そこで方針が決まっていくんです。
社長だって「方向」しか見えていない
なので、スタートアップ企業で道なき道を走っているときは、方針がすでにあって、社長の頭にもすべてあって、そこから出てくるものを1個ずつ刻んでクリアしていけばゴールに達成するんだ、と思っていたら大間違いなんです。
そもそも社長自体だって、細かいToDoは全然わかっていない状態で、「こっちに走りたい」「こっちがいい気がする」くらいしか言っていないんです。
そんなときには何をするかというと、めちゃめちゃ社長とぶつかればいいと思います。「どうしてそう思っているんですか?」「逆にこうだったらどうですか?」「僕だったらこうなると思っているんですけれど」と、自分の意見をしっかりと出していく。
そうすると、社長の頭の中もどんどんクリアになってきて、やることの優先順位がついてくる、みたいなことが起こります。
たとえば、ソフトバンクの孫さんとか、ユニクロの柳井さんのように、世の中の未来をクレイジーにつくっている社長と働いていると、それに食らいついてモンスターのように成長するか、途中で脱落してやめていって、「あんな暴君の下では働けないよね」と愚痴っているかの、どちらかにしかなりません。
そのときどっちになるか、どっちでいたいか、そんなお話でした。もしかしたら社長のポジショントークに見えるかもしれませんが、「なかなか言えないことを言ってくれてありがとう」ってものすごくいろんな社長からきたこの放送からのまとめでした。めちゃくちゃ頷いてる社長がたくさんいることは知っておいて損がないと思いますよ。
ちなみにVoicyは社長と一緒に働ける会社です。ぜひ楽しんでみませんか。
ーー興味がある方いましたら、よかったら応募してみてください。この話は次回も続きます。
編集後記
この記事の元になったのは、こちらのVoicyの放送でした。放送では想像以上に反響をいただいて、やはり悩まれている方も多いポイントだったようです。音声で聞くとより、言葉のニュアンスや感情も伝わるので、よかったらこちらも聞いてみてください。
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